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初めての恋  作者: 神寺雅文
第五章--告白の先に見えたあの日の約束
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告白の先に見えたあの日の約束66

でも、母さんが拓哉達にあからさまな嫌悪感を示す理由が分からない。だって初対面なのだから。むしろ、僕が毎日の様に拓哉のことを自慢げに語っているのだから歓迎することはあっても門前払いしそうな態度を取る理由がない。


 ここは様子見と言うことでドアを開けて拓哉たちを誘う。


「……」


「は、初めまして! 本日は急な“ご”来訪にも関わらず、“お”快く迎え入れてくれまして誠に感謝感激であります!」


 親友の母親に会うことがここまで人を狂わせるとは思いもしなかった。チャラ男が一生懸命に敬語を駆使して母さんのご機嫌取りをしている姿は滑稽であった。


 優香さんが隣で申し訳なさそうにしているのは、拓哉の学の無さが露見してしまったことによる一瞬の恥じらいだろうか。愛息子の失態を恥じらう母親の様な、溺愛する孫を憐れむ祖母の様な、そんな表情をしている。


「ふん……快くなんて思ってないわ」


 普段と違うことをするから裏目にでるのだ。ヘンテコな言葉遣いに母さんは鼻を鳴らし、言わなくても良いことを発言して拓哉と優香さんを凍りつかせた。


「そもそも、どの面下げてここに来ているのかってこと。これから助け合い支え合って行こうと決めた矢先だったのに。奈緒ちゃんの影に隠れてないで出てきなさいよ」


 この母さんの発言には僕も奈緒も顔を見合わせてしまう。頭の回転の速さに定評のある奈緒ですら、優香さんに対する母さんの発言の意味が理解できないようだ。米噛みを抑え必死に難問を解いている様に見える。


 その脇で急に矢面に立たされた優香さんも困惑を通り越し顔面蒼白だ。


「えっ! えっと、ご挨拶が遅れまして誠に申し訳ありません――」 


 暴走自動車の如く勢いで拓哉の隣――母さんからは死角だった奈緒の脇から一歩前に前進して母さんと対面した。まさか、初対面にも関わらず深々と頭を下げることになるとは思いもしなかっただろう。


「ん? 随分見ないうちに顔が変わったわね? あれ? もしかして……私勘違いしてる?」


 優香さんの誠心誠意、気持ちのこもった謝罪が功を奏した。今度は母さんの顔色が反転していく。

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