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初めての恋  作者: 神寺雅文
第五章--告白の先に見えたあの日の約束
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告白の先に見えたあの日の約束65

 片頬を膨らませわざとらしく「嫉妬してますプンプン」って怒っている優香さん。それを見て拓哉が慌てて「一番はユーに決まってる!」って絶叫し最愛の彼女を抱きしめ出して甘い言葉をわめき出したので、それらを半ば無視して玄関を開けて中に入った。


「おかえり」


「おお、なに? 今日もお出迎え? 僕も出世したものだ」


「減らず口は本当に立派になったら言うんだね」


 門前で拓哉がまだ何かを喚いているのを感じつつ玄関ドアを開けると、いつもよりも更に険が篭もる出迎えの声が、それに不意を突かれた僕を驚かせた。


 お玉片手に仁王立ちする母さんと対立。僕に一歩遅れて奈緒が入ってきてこちらは何時もと変わらない声色で挨拶をする。


「ん〜今日もいい匂い! やっぱり弟子にしてもらおうかな!」


「良いわよ? 奈緒ちゃんの料理の腕前は致命的だもんね〜、雅にしか受け入れて貰えない自体は今後のためにも避けた方がいいわ。時間あるときに遊びにおいで」


「ひど〜い! これからメキメキ上達して追い抜くもん! おじさんみたいに素敵な旦那さんの胃袋掴んでみせるんだから」


「ふふ、追い抜けるものなら追い抜いて見なさい、弟子よ。でも、なかなかいないわよああも素敵な男はね」


 どこから突っ込めば良いのかわからないが、相変わらず仲が良い二人だ。昔からこの二人の関係は独特なモノを感じる。どことなく実の親子の様な、そんな特別な絆で結ばれている気がしてならない。


「ほんと、ベタ惚れなんだね〜。みやびもなれるのかな?」


「本人には絶対言えないけどね。ん〜、どうだろ? 今のところ無理じゃない?」


「贔屓目で見てもまだまだって感じ?」


 二人して僕を品定めするように見下すんじゃない。何様なんだ。大体、僕と親父を比べるな。あのうだつの上がらない親父より、僕の方が劣っているなんて信じられない。母さんの尻に敷かれヘコヘコしている様な男になって欲しいなんてどうかしている。


 内心でそう思ったがこの二人に口で敵う訳がないので言葉を飲み込んだ。


 そんな僕の心境を察したのか、それともただ単に僕を弄るのが飽きたのか、いや、玄関先で愛の言葉を囁く男の声が徐々に近づいて来たことに気がついたからなのか定かではないが、母さんが場を仕切り直した。


「さて、そんなことよりいつまでも軒先で青臭いことを喚かれちゃ近所迷惑。もう二人いるんでしょ、さっさと呼びなさい」


 何時にも増して毒舌なのは、まだ見ぬ来訪者が原因だった様だ。

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