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初めての恋  作者: 神寺雅文
第五章--告白の先に見えたあの日の約束
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告白の先に見えたあの日の約束58

 しかも、梅先生を始めとした大人たちの擦れた感性にまで二人の姿は影響を与え、見事なまでのコールアンドレスポンスを完成させている。これがバンドマンしいていえば音楽の力か。


「はあ、そうだよな……これが才能か」


 凡人でなんの特技も無い僕ではとても太刀打ちできない巨大な壁。


 生まれながらに備わった唯一無二の自分らしさ――アイデンティティ。それだけあれば他には何もいらないと言っても過言ではない、その人の最強の強み。それが朋希の音楽――ギターの才能であり、それに幼少期のころから気が付き磨き上げてきた寺嶋朋希は最高に格好いい人間であり、恵まれた境遇に生きる男なのだ。


 最強の矛と最強の盾を持った毘沙門天。僕からしてみれば朋希と言う男はそう見えてしまう。要は勝ち目のない相手ってことだ。ましてや、春香も音楽の才があり、片方は伴奏のプロで片方は歌唱のプロ、相性が悪いわけがないんだ。


 惨めではあるが正直に言う。諦めようかと思う。春香のことを……。目で合図を取り合い転調のタイミングを計り、成功すれば満面の笑みで見つめ合う二人を目の当たりにしたらさ、心臓が張り裂けそうになってしまった。


 こんなにも辛いのか“片思い”って言うのは。


 本人にもまだ確かめていないのに、そう悟るほどに二人はお似合いなんだ。僕が恋の神様だったら間違いなく二人をくっつける、恋に正解があるのなら、間違いなく朋希=春香が成り立ち、雅=春香は成り立たない。


 ああ、奈緒になんて報告しようかな。いや、今は奈緒も大事な時期だ。僕のしょうもない片思いに付き合わせる訳にはいかない。


 ダメだ、こんなところで……。


 無意識のうちに涙が出てきた。目の前で夢を叶えようとする春香と実質人の心をその音楽で虜にするミュージシャンと称せる朋希、そんな二人に遅れてやっと夢を追いかける機会を得た奈緒の姿を思い返したら、とてつもない喪失感と劣等感に襲われ目じりに熱いものがこみ上げてきた。


 拓哉だってサッカーと言う誰にも負けない特技と誰に紹介しても恥ずかしくない彼女――優香さんを得て順風満帆な学園ライフを送っている。今も二人で楽しく役者を演じているに違いない。奈緒が一緒なのだ楽しいに決まっている。


 ああ、こんなことになるなら奈緒と一緒に行けば良かった――、そう思ったからなのか。タイミグ良く携帯が鳴った。

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