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初めての恋  作者: 神寺雅文
第五章--告白の先に見えたあの日の約束
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告白の先に見えたあの日の約束57

「へ~はあ~、なるほどなるほど。なにカッコつけてんだか。周囲から春香にそれとなく伝えさせて意識させようとするなんて女々しいやつがすることだ。男なら正々堂々と告白するべき。まあ、出来ないから子供をダシに使ってるのか」

「なんだと! ならお前は出来るのかよ! この関係が壊れても良いって言うのかよ!」

「おお! 出来るとも! そのためにいまこうして一緒にいる時間を作って距離を縮めてるんだ。ギターや歌の趣味が合うからって、お互いを好きになるって保証はないからな!」

「一度できた距離はそう簡単には埋められないし、たかだか数年しか一緒に居なかったお前よりもオレは小学二年から今日まで春香と同じ場所にいたんだ。告白とかどうこうじゃない、春香がどう思っているかが大事なんだ。そりゃ、付き合えたらそれにこしたことはないが……」


 水掛け論。好意を寄せる相手が同じ者同士が繰り広げる「自分がいかにお前より優位にいるか」を懸命にアピールするが、どちらも決定打を持っていない。春香に対する想いはどちらも語るに十分な質はあるけど、実績がないので説き伏せることが出来ないのだ。


「は~い、じゃあ今日はお歌の練習しようか~」


 男達がそんなやり取りをしているとも知らず、梅先生と打ち合わせを終えた春香が元気よく声を出しピアノの前に座る。それに習って園児たちもピアノの周りに集合する。


「お、ふん、どうやら今日は俺が主役の様だな。指を咥えて見てるんだな」


 これ見よがしにギターを担いで朋希が園児たちの輪に入ってお得意のギターの準備を始める。このままでは朝の二の舞になると察し、カエルの歌の大合唱に誰よりも大きな声で参加するものの、朋希のギターと春香のピアノが織りなす新生「カエルの歌」に敵う訳もなかった。


 しかも朋希はピアノまでそこらの保育士では太刀打ちできない程の腕前を持っており、春香が持ち前の美声で森のくまさんを歌う頃には、まるで二人のコンサートを観に来た熱烈なファンとでも言うような盛り上がり様で園児達も踊り狂いながら熱唱を始めた。


 多少ロック調にアレンジされた伴奏に合わせ春香が表現豊かに熊さんと女の子の歌詞を紡ぐものだから、一種の劇を観ているようで悔しいが僕も体を上下に揺らした。


 歌詞の展開に合わせてどんどん伴奏が変調しアグレッシブな演奏となり、それに合わせ春香も声を低くしたり高くしたりはたまた早口に歌詞を紡いだり、今まで聞いたこともない森のくまさんにみんなが期待するのは当たり前であった。


 これが朋希&春香のコンビネーション。相性の良さを物語っている。


 園児達の心を鷲掴みにして離さない。どうしても長時間は集中力が続かない落ち着きのない子ですら、今は大人しくと言うか素直に合唱している。誠に楽しそうな光景である。


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