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初めての恋  作者: 神寺雅文
第五章--告白の先に見えたあの日の約束
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告白の先に見えたあの日の約束46

 じゃあ、あいつはどうだ? と、朋希に視線を向けると何やらギターを取り出し始めていた。こんな静寂と喧騒が紙一重のところで均衡を保っている状況で、朋希は手慣れた様にチューニングを耳だけで行い誰もが聞き惚れる旋律を奏で始めた。


 決して耳障りにならない音量でなおかつ心地良いメロディー。指だけでコードを弾き、最初は何を弾いているのか分からなかったが次第に誰もが知る童謡のAメロを弾き始めて寝れなくてぐずっていた園児が一人、また一人と朋希のアコスティックギターの旋律に瞼を重くしていく。


「かっこいいな~やっぱり朋希のギター。ずっと聴いていたい……」


 不甲斐ない僕の代わりに園児を寝かしつけた春香がそう呟き座った状態のまま目を瞑った。全身の神経を耳に集中させてまで聞きたいのか。こんな方法を通用するのか甚だ疑問であったが自分も眠気に船を漕ぎそうになっていることに気が付き太ももを抓る。


 日本のアニメと言えばまさにこれ! と言われる映画の主題歌にメロディーは移り変わり、飽きることなく園児たちも大人しく耳を傾け気が付いたら眠りの世界へ。音楽の力とは末恐ろしい。春香の心まで一瞬にしてかっさらっていくほどの威力。やはりあの男は侮れない。


 園児全員がスヤスヤと寝息を立て眠りにつくと朋希はその手を止めやり切った様に深く息を吐き相棒のギターをケースにしまってこちらに歩いてきた。


「確かに、お前に敵わないところは沢山ある。春香と出会った時期もそっちの方が早いし大切な思い出もたくさんあるだろう。でも、俺だって春香の幼馴染だ。絶対に負けないからな」


 唐突に何を言い出すのか。周囲にいた先生達から黄色い歓声と言うのか「あらあれ、なに? 春ちゃんの取り合い?」「罪だね~まったくハルコちゃんの愛娘は」などなど、完全に冷やかしと取れる発言が沸き上がる。


「の、望むところだ!」

「し! 起きちゃうよ二人とも? なんの話か分からないけど、今は静かにしてね」


 二人の男から好意を抱かれてるとはつゆ知らず。てか、春香もなかなか鈍感なところがあるようで、今にでも殴り合いの喧嘩でもしそうな僕らの間に割って入ってきて「め!」って言って喧嘩両成敗の拳骨を発動した。


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