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初めての恋  作者: 神寺雅文
第五章--告白の先に見えたあの日の約束
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告白の先に見えたあの日の約束39

「あの、もしかして春香さんと雅さんですか? ってもしかしないか。二人はうちの組では有名ですし」


 ほら見ろ、大人しくしているのは僕らだけだ。席を立ち出歩く女子がいると思ったらそのまま迷うことなく、僕と春香の前で立ち止まった。


 小柄でどこか犬っぽい。人のことが好きで構わずにはいられない。そんな印象を彼女から抱いたのは、彼女が保育士志望だと知っているからだと思う。


「そうだけど、どうかしました?」

「よかった、寺嶋君と同じ班に男の子がいて。まさか彼が保育士になりたいとは思ってなかったので立候補した時はどうしようかと悩んでいたのです」


 そっと胸を撫でおろすところを見ると相当悩んでいたようだ。肩の荷が下りたのか深呼吸して頭を下げてきた。


「彼のことよろしくお願いします。無口でギターのことしか頭にない様な人ですけど、悪い人ではないです」

「え、まあ、僕も男一人よりは二人の方がいいから任せてください。ね、春香?」

「……、キウチさんがそう言うなら分かりました。私も保育士志望のはしくれ、世話を焼かせて頂きます」


 頭を下げられた以上はこちらもそれなりの誠意をもって返答するまでだ。どこか浮かない表情をする春香も口ではそう言うモノのキウチさんと言う女子に微笑みを返した。


 世話を焼くって……、春香にはキウチさんのお願いがどう聞こえたのだろうか。保育士を志すだけあって母性本能が強いと言う事なのだろうか?


「そう言ってもらえると助かります。では、また明日、お互い頑張りましょうね!」


 将来の夢が叶う。一時的ではあるがここにいる女子は全員そう思っているのだろう。全員が全員、瞳を爛々と輝かせ意気込んでいる。春香だって見た目は変わらないが声色にいつもはない力強さを感じる。


 一体、寺嶋朋希とはどんな男なのか。会長が言っていたギターの申子で間違いはないと思うし、きっと春香は彼の事を知っているに違いない。それも、何かを僕に隠すほどの関係。春香に男の影がちらつくことは珍しくないが、動揺させるほどの影響力を持つ男は初めてであった。


 これは明日から大変になりそうだ。奈緒はいないし拓哉だっていない。何か起きれば自分だけで対処しなければならない。その何かとは何なのか。多少の胸騒ぎが起きているのは、やっぱり僕が春香を好きであり、春香を動揺させたのが男だからだろう。


 右から菅野雅、小鳥遊春香、寺嶋朋希と記された我らがチームF。男女男。まるで一人の女の子を二人の男が取り合う。そんな図式が脳裏を過ったのは、あながちそれが間違いではなかったからであり、結果そうなったのは言うまでもないことだ。


 そうなることをまだ知らない僕は呑気にあくびをして、春香はどこか不安げに一週間の予定を発表する女性教諭を見つめていたのであった。


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