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初めての恋  作者: 神寺雅文
第五章--告白の先に見えたあの日の約束
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告白の先に見えたあの日の約束28

「ぼ、僕は春香のことがす、す、す、す、す、すきまがないくらい大切って思ってる。あはははは――」

「どういう意味?」

「ほら、この本棚で例えると、春香のことを大切に思う分厚い本が隙間なくここに収まってるってこと!」


 なんてつまらない男だ僕は! 意味が分からない言い訳をして場を取り繕うとしている。才女の春香もさすがに僕の発言が理解できないのか素っ頓狂な顔をしているではないか。


「ふふ、変なみやちゃん。でも、奈緒のことも大切にしてあげてね今まで通りに。私と奈緒の問題にはみやちゃん関係ないから、お昼も奈緒と食べていいからね?」

「奈緒のことまだ許せない? 奈緒だってきっと悪気があっていったんじゃないと思うよ」

「私もそうだと思ってる。でもね、奈緒は越えてはいけない一線を越えちゃったの。これだけは、私は許せない。だから、今回ばかりは奈緒にみやちゃんを奪われたくなかったの」

「越えちゃいけない一線って?」


 確かに奈緒は“男が保育士をやること”と“保育士という職種“事態を非難しているとも取れる発言をした。それが春香にとって越えてはならない一線だったのだろうか?


「確かにそれにもカチンと来たけど違うの。私が言われて嫌だったのは、保育園の先生がまだ物心つく前の右も左も分からない子供たちの為に毎日悩んでああでもないこうでもないって必死に保育しているのに、子供達はそれをいつかは忘れてしまう。そんなひどい事を奈緒がハルコ先生に言うのが許せなかったの」

「言葉の綾だと思うよ。ただ、咄嗟にだとしても奈緒があんなことを言う意味が分からない。僕みたいに保育園の記憶があまり残っていない人間がいうならともかく、奈緒のことだから、お世話になった先生を全員覚えていてもおかしくない」


 まるで実体験を語るかのように奈緒は当たり前の様に保育園の先生はいつかは子供の記憶から消えると発言した。その発言に至った経緯にどうしても疑問を抱いてしまう。


「奈緒はきっと覚えているよ。絶対に忘れる訳ないもん。そこにみやちゃんがいる限り奈緒はあの頃の思い出を忘れるわけがない。あの約束だってきっとまだ叶うことを願っているはず」

「僕がいる限り? あの約束ってなに?」

「思い出せない? 絶対に思い出さないといけない約束があるんだよ」


 いつもとは違う声色でまっすぐに僕の目を見て話す春香。その真剣な表情を見るからに、相当大事な約束なんだと思う。が、生憎だがそんな約束をした覚えがない。意地悪しない、自分だけ先に帰らない、女の子には優しくするとか。幼少期に日常的に周囲の人間と交わした約束ならたくさんあるけど、春香が関係している様な約束を交わした覚えがない。


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