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初めての恋  作者: 神寺雅文
第五章--告白の先に見えたあの日の約束
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告白の先に見えたあの日の約束27

「てっきり奈緒を選ぶもんだと思ってた。みやちゃん、奈緒のこと大好きだから」

「そんなことない! そりゃ奈緒のことは幼馴染として好きだしできれば体験学習も同じところだったらよかったといまでも思う。でも、僕にとって春香だって大切な存在だ」

「大切な存在?」

「そう、大切な存在だ」


 しっかりと春香に向き直ってそう断言した。


「奈緒よりも大切ってこと……?」


 頬を赤くして上目使いでそう言われて思わず抱きしめたくなった。でも、そんなことは出来ない。物事には段取りや手順というものがある。この場の正しい行動というはつまり、僕にとって春香はどんな存在かを明言することだ。


 あれ、それってつまり? こ、告白するってことだよな? え、どうする、このタイミングで言うか? 言っていいのか? 初めての告白は百万ドルの夜景を見ながらって決めてたんだけど――。


 部屋に置かれた家財ですら僕の返答を固唾を呑んで待っているかのように、時計の秒針が時を刻む音だけが静寂にひっそりと現実味を添える。


 どうやら、この状況は夢ではない様だ。心臓が鼓動を早めて今にも爆発しそうだ。むしろ、苦しいくらいだ。いや、痛い。春香の瞳を見れば見るほど、体の内からどんどん熱いものがこみ上げてきて、この小さな心臓では耐えきれそうにない。


「そう。僕にとって春香は奈緒よりも大切だ。なぜなら、僕は春香のことがす、す、す――」


 言葉があと少しのところで詰まる。「好き」って一言囁けば良いだけなのに、その“き”って一文字が唇が震えてしまい出てきやしない。


「す?」


「す、す、すす!」


 こんなことあるのかって思うほど、漫画の主人公の様に告白が出来ない。妄想の中ではもう百回は成功していると言うのに、現実ではそう簡単にはいかないのだ。


 なぜなら、失敗は許されないからだ。この生々しいほどの静寂が一歩間違えれば僕らの関係を無へと飲み込んでしまう。無かったことになるならまだしも、心に深い傷を残して今後の学園生活に支障をきたすだろう。


 春香も春香で僕が何を言いたのか分かっていないようで、小首を傾いでシマリスの様にしていて可愛くて仕方がない。このまま抱きしめて夜のとばりに姿をくらまし二人だけの楽園を作りたい。だから、意を決して言うんだ――。


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