告白の先に見えたあの日の約束21
「だから、雅も幼馴染って関係に胡坐かかないで、この機会にグッと距離縮めるんだぞ。奈緒ちゃんのことは俺らがちゃんと竜人って男から守るからさ」
「春香とのことは重々承知だよ。学園じゃ見れない顔、普段できない話をするつもりだ。ただ、奈緒を狙う男がいるなら、それをどうするのかは奈緒の勝手だ。でも、あいつは正直仲良くなれる気がしないタイプの男なのは間違いない。住む世界が違うからかも知れないけど」
木村竜人という男からは得体の知れない何かを感じてならない。ただ、感じの悪い男なだけならいいのだが、あの取り巻き達もなんだか変だし初対面の僕に対するあの高圧的な態度は、根本的な部分――人間としての性質が僕と決定的に異なるんだと思う。
「何事もないといいんだけどな~、早く二人が仲直りできるといいんだけど」
拓哉の意見はごもっともである。明らかに距離を取る二人を見比べ、僕は深く息を吐き出すのであった。
その日の昼、奈緒は教室からそそくさと出ていってしまった。当然と言えば当然かも知れない。なんせ、いつもは四人で仲良く教室や食堂で肩を並べ弁当をつついているのだから、こんな気まずい空気のままではどちらかが教室から無言で出ていくことは必然とも言えた。
「春香、どうする? 二人だけになっちゃったけど? 僕は今日、購買で買うつもりだから、他の子と食べる?」
拓哉は拓哉で優香さんの元へ行ってしまい残されたのは僕と春香である。ムード―メーカを二人も欠いてしまっては、明かりの無い中で食事を採るのと同じこと。春香に気を使い遠回しに今日は別々に食べる方向へと話を進めた。
「ちょうどよかった! お弁当作ってきたんだ。中庭で二人で食べようよ?」
「へ、ホントに? 春香の手料理?」
「もちろん! 水族館に行った日はちゃんとしたの食べてもらえなかったから、あの日の分も含めて食べてくれると嬉しいな~?」
食べる? 当たり前だ。完食するに決まっている。なんだったら、その可愛らしい弁当箱ごと食らってもいい。
「ふふ、お弁当箱ごとって、昔のみやちゃんみたいだね。じゃあ、行こう」
こうなることを予想でもしていたのか、いつもの弁当箱と男物の弁当箱を鞄から取り出し、ご満悦な表情で春香は僕の手を引き教室へと出ていく。
一体昔の自分は春香にはどう見えていたのだろうか。弁当箱をそのまま食べそうって。まあ、でも、小さい頃の僕も春香のことを好きだったんだろうな。
「あ、みやび……」
「奈緒? どうした?」
「えっと、今日、お弁当作ってないっておばさんから聞いてて……」
「それがさ、春香の手料理食べれることになってさ!」
教室のドアを出て中庭に向かう途中、購買部がある方面の廊下と交わる渡り廊下で奈緒とばったり鉢合わせした。




