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初めての恋  作者: 神寺雅文
第五章--告白の先に見えたあの日の約束
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告白の先に見えたあの日の約束18

「関係ないとは断言できない。だって、春香ちゃんは泣き止んだんだろ? 雅が自分を思い出してくれた日から?」

「うん、でも、夢だぜ?」


 胡散臭いだろそんなの。もし、春香にこのことを確認できるのならしてみたいけど、気持ち悪いだろ夢で君が泣いているんだ。なんで? なんて聞いたら。


「千鶴姉さんから聞いたけど、夢ってのは記憶を整理したり仕分ける為に見るらしい。それに、脳が疲れていたりストレスを溜めていると見るんだとか」

「記憶の整理、それにストレスか」


 あの夢の登場人物は大体、春香と遊んだ記憶がない頃の年齢だ。それってのは、つまりその頃の僕の記憶――体験したことを脳が仕分ける為に現在の僕に見せていると言うのか? 保存しますか? 消去しますか?って。


「そいうことじゃないか? どう思う雅、お前にその経験は必要か?」

「もし、夢が本当のことなら、絶対にいる」

「なんで?」


 奈緒が泣いているんだ。泣き止まらせなくてはいけない。


「そんな理由で?」

「当たり前だろ。奈緒が泣いてるんだぞ、僕が助けないで誰が助ける? 奈緒は泣き顔なんかより笑顔の方が百倍可愛い子なんだ」

「だははははは! お前ってやつはどんだけ奈緒ちゃんが好きなんだよ」


 父親譲りの豪快な笑い声を響かせ拓哉が机を叩く。そんなに笑わなくてもいいじゃないか。それに僕が好きなのは――。


「分かってるってみなまでいうな。人間として、幼馴染として奈緒ちゃんが好きなんだろ。でも、雅はどうなんだ?」

「僕が泣く理由か。さあ、見当もつかない」


 この世界に生を受けてから早十五年。これと言ってつらい経験をした“記憶”がない。それこそ、夢で見るほどのトラウマを植え付けられた事件もない。だから、僕が泣きじゃくる意味が見当もつかないのだ。


「これは俺の想像だ。独り言だと思って聞いてくれ」


 改まって拓哉が言った。


「奈緒ちゃん、きっとこのままお前から離れていくと思う。そりゃさ、雅が春香ちゃんと付き合ったら今まで通りには接することは出来ないと思うけど、それ以上に距離を取るだろう」

「なんでよ? 別に、僕ら三人は幼馴染なんだ普段通りでいいだろ」

「バカだな雅は、だから童貞なんだぞ。いいか、奈緒ちゃんだって女の子だ。傷つくし嫉妬することもある。悔しくて涙で枕を濡らす夜だってあるはず。なんせ、お前の事を誰よりも気にかけているのは奈緒ちゃんなんだから」


 遠い目をして奈緒の席を見つめる拓哉。言いたいことは何となく分かる。きっと僕も春香が例の男と付き合ったら泣くと思う。嫉妬して頭がおかしくなるだろう。だって春香のことを心の底から好きなのだから。


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