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初めての恋  作者: 神寺雅文
第五章--告白の先に見えたあの日の約束
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告白の先に見えたあの日の約束17

「あのさ、拓哉お願いしていいか?」

「なんだ? 改まって?」


 僕がどんな顔していたのか分からないけど、拓哉が背筋を伸ばして顔を強張らせた。


「奈緒について行ってもらえないか? あいつ、普段は強いけどさ、はじめてな事には奥手なんだ。きっと不安だと思うんだ一人で」


 勝手な事を言っているとは分かっている。拓哉だって職業体験を市内にあるスポーツ団体を希望していた。きっと優香さんだって同じところを希望しているはずで、僕なんかがこんなことを言うのはダメだと分かっている。でも、どうしても奈緒を一人にしたくなかった。強い子って言ったけど、幼少期のイメージが脳裏にこびり付いて離れない。春香の事を思い出したことによる副作用とでも言いうべきか。


「まったく、お互い過保護すぎだろ。いいぜ、俺もなんだかそうしたほうがいい気がする」

「なんで?」

「いや、大したことないけどさ、いやな噂を聞いたんだユーから」


 拓哉が周囲を気にしてか小さな声で言う。


「あの竜人って男が奈緒ちゃんを狙ってるらしいんだ。確か、奈緒ちゃん何度か演劇部に誘われてるって聞いたけど」

「ホントかその話は?」

「知らなかったのか?」


 初耳だ。興味があるとは聞いていたけど、部活に誘われているなんて聞いていない。入部しようか躊躇っていたんだから、誘われたのならそのまま入ってしまえばいいものを。


「たぶん、奈緒ちゃんも雅から離れるの嫌だったんだろうな。せっかくまた三人が再会して楽しくなるのに、部活で時間なくなるの気にしてたもん」

「拓哉には何でも話してるんだな」


 正直ショックだ。奈緒が僕に隠しごとしていることが。


「まさか、雅が知っていることの半分も知らないよ。ただ、俺は部外者だからな、三人の抱える問題に。もしかしたら、今回の二人のいざこざにも関係あるのかも」

「部外者ってなんだよ、別に僕らには何もないさ」


 下校する級友たちに声を掛けつつ拓哉は終始笑顔で話していたが、最後の級友が教室から出ると途端に笑みを消した。


「変だと思わないか? 雅だけが春香ちゃんを忘れちまっていたこと。いくらなんでも、特定の人間だけの記憶だけを抹消できるなんてことは普通無理だろ」

「まあ、そうだけど。もしかして、あの夢にも意味があるのかな?」


 あの夢とはもちろん、いつも見る三人の子供が泣いている夢のことだ。


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