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初めての恋  作者: 神寺雅文
第五章--告白の先に見えたあの日の約束
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告白の先に見えたあの日の約束16

「そ、そんな……、なんでそんなこと言うの! ママのこと、奈緒まで忘れちゃったの? そんなの……ひどい……ママは二人のこと我が子の様に愛してたのに……。奈緒のバカ! もうしらない――」


 とうとう泣き出してしまった春香が教室を飛び出した。当然、それを奈緒は追いかけるものだと思っていたけども、奈緒は動かなかった。自分は何も悪いことを言っていない、そんな態度を取っている。


「奈緒、なんであんなこといったんだよ。はるちゃんが保育園の先生目指してるの知ってるだろ? 言い過ぎだ、謝るべき」


 僕が春香の肩を持つのは当たり前だ。好きな子のことを第一に考えるのは当然で、僕が春香を好きな事を知っている奈緒なら忠告を聞き入れてくれるとも思った。


「何よ! みやびにあたしたちの気持ちなんて分からないわよ! 一人だけ全部忘れちゃって、陰でどれだけたくさんの涙が流れたのか、知りもしないで他人事のようにあたしに説教しないでよ! あたしだって悪いとは思ってるけど、保育園の先生だけは、ダメなんだから……」


 奈緒はそう言うと席に突っ伏してしまった。そのまま授業が始まるまで一切誰とも口を利かず、その日の午後、HRにて福田先生が正式に職場体験の話しを出すまで、誰とも会話をせず、勝手に希望の職業体験を演劇俳優にしてしまった。


「どうしちゃったんだよ、一体。雅、正直オレにはどうしていいかわからない。でも、お前もついに奈緒ちゃん離れする時が来たんじゃないのか? 好きな子は、春香ちゃんなんだろ?」


 春香も春香で奈緒には一切話しかけずに挙手をして福田先生に僕らが卒園した桜ノ宮第一保育園の先生を体験することを希望したのだ。


拓哉に言われなくても、僕は春香と一緒に母校ならぬ母園に行くつもりだ。きっと奈緒だって胸の内では、それを望んでいるはず。応援してくれると言っていたのだから、僕は迷うことなく挙手して春香の隣に名前を書く選択をした。


 その日の放課後、奈緒は何も言わず教室から荷物を持って出て行ってしまった。誰にも別れを告げず、一人で下校する生徒でごった返す廊下へ消えていく。


「次は奈緒ちゃん問題か。どうしてこうも立て続けに問題が起きるかね。オレ、正直どっちを応援していいのかわからん。雅のことも大好きだし奈緒ちゃんのことも大好きだ。だから、今回オレは何もできないと思う。ごめんな」

「拓哉が謝ることはないよ。僕だってどうしてこうなったか分からない。でも、いつかはこうなる日が来ると思ってた。奈緒には悪いけど、今回は春香の傍に居ようと思う。春香がそれを望むならね。それに、奈緒は強い子だから」

「そっか、分かった」


 春香も春香でそそくさと下校してしまい野郎だけで黄昏色にくれる教室でため息を吐く。


2/27より更新時間を19時に変更します。

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