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初めての恋  作者: 神寺雅文
第五章--告白の先に見えたあの日の約束
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告白の先に見えたあの日の約束13

 週が明け、拓哉とサッカー部の問題を解決してから初めて、四人全員が揃い教室でいつもの様に他愛もない会話で盛り上がっている。


 些細なことでも、当たり前な日常でも、それが幸せなんだと気が付けたのは運がよかったんだと思う。僕はそれをしみじみと感じている。ただ、拓哉の明らかに何かを成し遂げたから感じる“垢ぬけた表情と仕草”を見て、悔しい思いで胸が一杯になっている事を除けば、僕らはまたいつもの日常に戻っていた。


「いや~またこうして奈緒ちゃんや春香ちゃんと話せるなんて幸せだよ。ユーもそばにいるしもしかしたら今が幸せの絶頂かも!」

「いいね~、お似合いの二人だと思うわ。拓哉君はやっぱり笑顔が一番ね」

「も~照れるな~。でも、俺はユーのモノだからホレたらダメだよ~」

「うわ~いうね~これだから恋人持ちは余裕でいいな~」


 なるほど、これが恋人をゲットした人間の余裕なのか。優香さんという彼女がいるからこそ、奈緒に対してストレートな表現の冗談が言えるのか。なんだか、拓哉が遠い存在になってしまった気がする。


「っておい! 俺の大親友雅! ナニしょげた顔してんだよ! 春香ちゃんと幼馴染って分かったんだから、お前ももっと春香ちゃんになれなれしくしろって」

「な、なんだよ~、急にそんなこと言われても困るだろ。ね、“はるちゃん”?」


 浮かれポンチの拓哉に冷やかされる僕。ただ、そう反論しつつも春香の反応を伺う僕に、春香はパーッと花が咲いたような笑顔を向ける。


「みやちゃんにそう呼ばれるだけで私は十分だよ。私もいま、すっごく幸せだよ?」

「く~なんだこれ! 眩しい! はるちゃんスマイルの威力が格段に上がったぞ! 雅お前の幼馴染は、二人とも最強だな」


 もちろん否定などできない。春香にあだ名で呼ばれただけでも、この心臓は天にも昇りそうな勢いで高鳴ってしまうんだ。今ならどんなライバルにも負ける気がしない。


「あ、たーくんいたいた! はい、頼まれてたもの持ってきたよ」


 拓哉の学園復帰の影響で騒がしい教室に、また一つ元気な声が加わる。皆の視線がにわかに話題になっていた拓哉の彼女さんに向けられる。


「おお、ユー! いいところに来た! 今みんなに話してたところなんだよ」

「え、なになに? 怖いよ、何する気?」


 サプライズを警戒してか強張った表情をする。彼氏が彼氏だけに、優香さんも大変だと半ば他人事の様に教卓前でイチャイチャする二人を残された僕らは傍観する。


「え~皆様、この度は私たちの結婚披露宴にお集まりいただき誠にありがとうございます。俺がこの世界でもっとも愛する嫁の優香です!」

「あ、えっと、皆さんよろしくおねがいします。たーくんこんなんだけど、とても素敵な人なので仲良くしてください」


 バカがバカなことを言うだけならまだしも、出来た嫁がよくできた対応をするもんだから教室中から祝福の言葉と拍手の雨あられが吹き荒れる。会長がお祭り騒ぎには欠かせないアイテムとなったギターで結婚式では定番の曲を弾き語る。


 まったく、幸せそうな二人だ。僕も春香とこんな風にみんなからお祝いされたらどんなに嬉しいか。可能であれば、奈緒と一緒に優香さんへ声を掛ける春香も僕と同じことを思っていてくれればいいんだけど。


「ありがとございます。ありがとうございます」


 一通り祝福された二人が僕らの前に歩んでくる。


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