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初めての恋  作者: 神寺雅文
第五章--告白の先に見えたあの日の約束
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告白の先に見えたあの日の約束12

「だけど、これは女の勘よ。初恋は初恋よただの。あたしだって初恋の男の子はいるけど、今はそうかと言われたら正直、即答は出来ない。なぜなら、桜ノ宮市には大勢の人間が住んでいるもの」


 そうだ。人口が東京都のそれを猛追するほど増えてきているこの街には、たくさんの人間がいる。僕だって生まれてからたくさんの友人と出会い別れを繰り返した。親友と呼べる友達を何回も失ってきた。卒業や引っ越し、同じ空間を過ごした仲間たちは、出会った分、失ってきたんだ。だから、なんとなく春香とそいとの出会いも関係も想像付いた。


「引っ越した先で、そいつと出会い、好きになった。あり得ない事じゃないよなぁ」

「そう、だから幼馴染だからって安心しちゃいけないわ。ここは、全力で今のポジションを生かしてアタックするべき。みやびにだってチャンスはあるわ」

「奈緒がそう言うんだからそうだよな」


 熱の籠る後押しに背中を押され、負けそうになる気持ちを震え立たせる。


 まだ見ぬ恋敵よ、僕は負けんぞ。春香を渡すものか。


「いつでも、協力するわ。みやびが幸せになってくれないと、あたしも幸せになれないから」

「どういうことだよ」

「ふがいない弟が気になっておちおち恋も出来ないってこと。あたしだって“新しい”恋したいのよ」


 引っかかる言い方であるが、奈緒の表情は清々しい。同性愛者説が囁かれる我が幼馴染も少しは女の子らしくなってきた。奈緒が誰かを好きになる。にわかに信じがたい心理現象だけど、僕が春香と付き合い、奈緒も誰かと付き合い、ダブルデートが出来たらきっと楽しいと思う。


 だから、僕もとっびきりの笑顔を咲かせ奈緒にこう言った。


「奈緒なら大丈夫だ。僕が見込んだ女の子だ、絶対素敵な恋愛できるよ」


 奈緒からそれへの返事がなかった。その代わりに赤面されたのはなぜだろうか。昔の僕が言いそうなことを言ったに過ぎないのに、奈緒はなんだか嬉しそうに僕から目を反らし写真へと視線を落とし小さな声で呟いた。


「あたしたち、幸せになってもいいかな? せんせー――」


 そんな日曜日の朝を迎え、僕は改めて春香への気持ちを再認識して、奈緒は奈緒で新しい恋をする準備を始める。それが、まさか僕らの関係を壊すことになるとも知らず、それが悪夢の再来を意味することを知らず、僕らは高校生だからこそ自由気ままに恋をすることを選んだのである――。


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