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初めての恋  作者: 神寺雅文
第五章--告白の先に見えたあの日の約束
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告白の先に見えたあの日の約束11

「これ、見てもダメ?」

「……マジか。小学二年生まで一緒だったのか?」

「この年の冬かな。あたしも何も知らなかったけど、親の都合って話よ」

「そっか」


 奈緒から手渡されたのは一枚の写真だった。


 運動会だろうか、一等賞のメダルを誇らしげに掲げる僕と、二等賞のメダルを悔しそうに見つめる奈緒、敢闘賞という名の最下位のメダルを持つ春香が三人で肩を並べて写っている。背後にいるのはうちの両親と奈緒の両親、たぶん春香のお父さんであろう男性が立っている。みんな幸せそうに微笑んでいるのが印象的だ。


「なんで、思い出せないんだろ。春香のこと、絶対好きだったはずなのに」

「……」


 思わず口に出てしまった恥ずかしい言葉に、奈緒が反応することはなかった。


「大体わかった。結局、ほとんど思い出せていないのね?」

「まあ、そうなるよな。でも、はるちゃんって呼んでいたのは確かだ」

「そうね。ずっと愛おしそうにそう呼んでいたわ春香のこと」


 僕の春香への想いが重すぎたのか、熱すぎたのか。奈緒が呆れた様にため息を吐いた。


「でもまあ、また三人がこうして再会できたことは奇跡なんだからね。春香のこと、大事にしなさいよね」

「当たり前だろ。はるちゃんへの気持ちは一層強くなったくらいだ」


 初恋の子が実は幼馴染だなんて素敵過ぎる。それだけでも、僕の恋心はさらに燃え上がるってもんだ。今にでも春香に会ってこの気持ちを伝えたいものだ。


「バカね、まだ早いわよ。あんた、忘れてると思うけど、春香の心の中にはあたしでも知らない男の影があるんだから」


 ドキッとしたね。そうだ、忘れていたが春香に歌を教えたと言う人物がいるのだ。しかも予想ではあるが男だ。穏やかではいられない。


「奈緒も知らないのか?」

「さっぱり。何歳なのかも、どこに住んでいるのかも知らないわ。知っているのは、春香ですら、今はまともに話すことが出来ない存在らしいわ」


 いつぞやも話題になったが、春香とそいつは僕らの関係とは違うらしい。喧嘩でもしたのか、今は交流がないに等しい。さぞ、春香は寂しい想いをしていることだろう。


「もしかして、そいつのこと好きなのかはるちゃん?」

「ん~どうだろ。少なくとも、嫌いではないでしょうね」


 そうだろうな。カラオケの時にも感じたけど、相当な思いを抱いているのは僕でも分かる。それが恋愛感情なのかはさておきだが。


 だが、僕にだって春香から言われた気になる一言がある。


「僕のこと、初恋の子に似てるってはるちゃん言ってたんだけど、どう思う?」

「ああ、それはみやびのことかもね。この頃の春香、隠していたけどみやびのこと好きだったもん」


 おお! これは朗報だ! 春香の初恋が僕かも知れない。これを朗報と言わず何を朗報というか。天にも昇りそうな気分だ。


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