表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
初めての恋  作者: 神寺雅文
第五章--告白の先に見えたあの日の約束
144/236

告白の先に見えたあの日の約束10

「一つ、今現在で春香に関わることで思い出したこと全部教えなさい。出会いから別れまで。その間に誰に会ったのかも。深く関わった大人もよ」

「急にいろいろ聞くなって、僕だってまだ整理しきれていないんだから」

「ゆっくりでいい。みやびのタイミングでいいから、できる限りしっかりと思い出して。知りたいことがあるならあたしが出来る限り答えるから」


 なぜそこまで聞き出したいのか理解しがたいけど、奈緒が協力してくれるならこのチャンスを逃すわけにはいかない。寝起きで鈍る海馬をフル活動させ、記憶の奥底に眠る春香との思い出を蘇らせる。


「あの樹から一番近い部屋が春香の部屋で、春香も僕らが通っていた保育園の園児だった。確か、誰かから春香のことを連れ出してほしいって頼まれた気がする。それが誰だったのか分からない。奈緒は知ってるか?」

「当時、あたしたちが通っていた保育園の先生よ。みやびも大好きだった人。思い出せない?」

「ああ、無理だ。何も思い出せない」


 絶対誰かに言われたんだ。「玄関開いてるから」って。でも、誰に言われたのか、その人がどんな先生でどんな顔をしてるのか。全然、まったくと言っていいほど記憶にない。


「あ、そういえば、春香のお母さんって保育士なんだよね? 僕らの先生だったって春香から聞いたけど?」

「そうよ。素敵な保育士さんだったわ」

「そうなんだ……、ダメだまったく思い出せない」


 春香の思い出話と僕が見た夢、そして奈緒が教えてくれた真実。どれもが全部ホントの事だと思うんだけど、僕の頭の中に春香のお母さんの痕跡がまったくない。春香のことも忘れたほどだ、春香ママのことも忘れてしまうのは無理ないが、これほどまでに何も思い出せないとは、自分のことなのに信じられない。


「春香から聞いてたわ、みやびが春香ママを忘れてしまっていること。まあ、無理もないわよ、春香のことも忘れるくらいだからね。少しずつ思い出せばいいんじゃない? 春香だって思い出してもらって嬉しかったって言ってたし」

「でもさ、おかしいじゃんか。全然覚えてないんだぜ? こう、何か意図的なものを感じるくらい、記憶の一部が欠落してる。奈緒とのことなら思い出せるのに」

「春香が引っ越した時の事はどう?」

「う~ん、さっぱり。いついなくなったのかもわからない」


 ベッドに腰を下ろし頭を搔きむしる。奈緒は勉強机の椅子を引っ張り出してそれに腰を下ろす。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ