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初めての恋  作者: 神寺雅文
第五章--告白の先に見えたあの日の約束
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告白の先に見えたあの日の約束09

「……や……となら別に」

「ん? でもの後なんていった?」

「あ、いや、ごめん! なんでもない!」


 絶対になんでもなくないと思うけど、全力で否定する奈緒に追撃を行うとろくなことにならないので閉口することに。


「で、みやびはそれもってるってことは買ったの?」

「まさか、もらったんだよ拓哉から」

「へ、そうなんだ。もしかして昨日?」

「そう、千鶴姉が用意したプレゼントってこれだったんだってさ。まあ、あのあと二人がこれをどうしたのか、聞くのもばからしいけどね」


 ここにきて、奈緒の顔が急激に赤くなったのは、もちろん僕の発言のせいだ。奈緒が持つ教科書はちょうどその行為を事細かに記載しているページだ。視線が一度そこに落ちてから赤面したから間違いないだろう。


「み、みやびもそれ誰かと使いたいの? 捨てずに持ってるってことは?」

「そうだな、まあ、持っていて困るものではないしな~。チャンスがあれば追々って感じ?」

「や、やややややっぱりさ、は、……春香と使いたいって思ってる?」


 藪から棒になんてことを言うんだ。そんなこと聞くことじゃない。昨晩、これを貰ったせいで妄想がはかどり、快適にコトを成し遂げたんだぞ。結果はイエスだ。


「そうだよね……。羨ましいな……」

「う、羨ましいって?」

「好きな子がいて、素直に沢山の未来を想像出来る二人が羨ましいの。あたしだけが、なんだか取り残されちゃった」


 普段から何かと人生経験で僕の前を走る奈緒がそんなことをか細い声で漏らした。


「何言ってんだよ。奈緒の方が僕なんかより、恋愛経験豊富だろ? そうだ、奈緒にだって好きな男いるんだろ?」


 拓哉を振る口実でそういったのは奈緒自身だ。そこの真意をいつか聞こうと思っていたので好都合だった。


「あれは言葉の綾っていうか、場の雰囲気でって言うか。確かに、いないって言えば嘘になるけど」

「いるんだろ? 僕も応援するから、取り残されたなんて寂しいこと言うなって。僕らは幼馴染なんだから、みんなで幸せになろうぜ?」


 楽天的なのが僕である。奈緒が抱える気持ちを少しでも知ろうとしたことがあれば、こんな無責任なことは言わないに違いない。


 だからだろうか、奈緒の表情が険しくなった。


「幸せになる。一緒に? 無理よそんなの。みやびは何も知らないからそんなこと言えるのよ」

「なんだよ、何も知らないって?」

「春香のこと、今の今まで忘れてたくせに。そうよ、今日はそのことで確かめたいことがあるからきたの。あたしの恋愛話しにも深く関係あるから、応援してくれるなら、質問に素直に答えなさい」


 春香のことを持ち出されては反論のしようがない。過去の記憶がゴッソリと欠落していることが判明したばかりだ。ここで黙って奈緒の指示に従えば、春香との思い出話が聞けるかも知れないと思うと固唾を呑んでしまう。


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