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初めての恋  作者: 神寺雅文
第五章--告白の先に見えたあの日の約束
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告白の先に見えたあの日の約束07

 奈緒が渾身の一撃を我が愚息に食らわした。それも、殴るのではなく掴んでへし折るんだもの、布一枚越しで掴まれた時は快感でもゲームの十字キーよろしく真横に倒されてはひとたまりもない。


 起きることなくして僕は再びベッドに沈む。奈緒の荒い息だけが部屋に染み渡る。顔面がとんでもなく赤いのは自分がナニを見て、ナニを触って、ナニをしたのか理解できたからに違いない。

 

 ああ、こんなことになるなら、もっと奈緒の体触っておけばよかった。


 たっぷり三十分。痛みと奈緒の怒りが消滅するのを待った。先に言葉を発したのは奈緒だった。


「ごめん……、痛かったよね? 大丈夫?」


 僕の脇で女の子座りしている奈緒がチラリと横目でパンツ越しの我が愚息を見る。まだ頬が赤いのは余韻というやつだろう。僕も悪ふざけが過ぎたのでそそくさとズボンを履きなおす。


「嫌なもんみせ僕も悪かった。手、洗ってこいよ」

「別にみやびのなら嫌じゃないし汚くも……ない。ただ、驚いただけ。昔と違っておっきかったから」


 おいおい、そんなことを言うなよ。またテント張ることになるじゃないか。君は可愛いんだから、そういうことは彼氏にだけ言いなさい。きっとそいつもこうなるから。


「奈緒、いくら僕らが幼馴染だからって、無防備過ぎだぞ。普通ならあのまま押し倒して――」


 チラッと机の上に視線が向かってしまった。やばい、昨日拓哉から渡された愛のゴールキーパーが置かれたままだ。いらぬ誤解を招いてまたノックアウトされる前に片付けなければ。


「なに、どうしたの?」


 奈緒も机の方へ振り返ろうとした。


「な、なんでもないぞ! なんでもない」


 軽やかな身のこなしでベッドから跳ね上がり、それをズボンのポケットへ突っ込む。


「何か隠したでしょ? 見せなさいよ」


 あちゃーやっぱりそうなるよな。変に意識しなければこんなことにならなかったに違いない。僕は完全に後悔した。


 ジリジリと近づいてくる奈緒に、どうやって言葉を返そうか思案。いや、まてよ、知らないってこともあるんじゃないのか? もしかしたら、別に隠す必要もないのでは?


 そう答えを導き出し、このままではJK特有の素晴らしい肉付きの体に愚息が押しつぶされてしまうので観念する。


「……? これがどうしたの?」


 おお、どうやら奈緒知らない様だこれがなんなのか。助かった。って思った矢先、魔が差した。ホント、僕って人間はどうして余計なことをしてしまうのか。


 奈緒の照れる表情を見て見たくなったのだ。


「じゃあ、今後のために教えてあげるよ。奈緒が他の子にバカにされたら大変だ」

「そ、そんなに有名なのこれ? 何かしら? ナニに使う物なの?」

「じゃあ、まずはこの付箋の貼ってあるページを読んでみて」


 殴られることを承知して勉強机に出されたままの保健体育の教科書を開いて奈緒に音読させる。


なぜ、教科書が出しっぱなしかだって? そんなの簡単だ。男子高校生の性欲は教材にだって向けられるからさ。そんなことよりは、奈緒の音読を聞いてほしい。


「えっと、男と女ではまず身体の大きさが違う。これは誰でも認識していると思うが、一般に男性の平均身長より女性の平均身長は約10%ほど低い。体重ですがこちらも――」


 素直に教科書を音読する奈緒。保健体育のトミタ先生もこんな気持ちで教鞭を振るっていたのか。ど変態め。女子がどんな顔をするのか、どんな反応をするのか。ドキドキワクワクしていたに違いない。絶対に、そうだ。なぜなら僕がドキドキワクワクルンルンしている最中なのだから。


「次ここね」

「なによ、男女の体の違いがどうしたのよ」

「まあまあ、復習と予習を兼ねてさ。期末試験もあと一カ月過ぎたらあるわけだし」

「そうだけど。次ってここね。こほん、第2次性徴が始まると次のような身体的変化が見られるようになります。男性はい、い、いんのう――」


 おお、明らかに声色が変わった。


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