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初めての恋  作者: 神寺雅文
第四章--解き明かされる過去
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解き明かされる過去68

  恥ずかしがっても駄目だ。あんたのことを誰よりも愛する男は、こういう男なんだ。これからもたくさんのサプライズを用意するに違いないぞ。こんなところで羞恥心に負けていては、今後拓哉の伴侶になったら身が持たないぞ。


「お、小畑優香さん!」

「は、はいい!」


 声が裏返る優香さん。拓哉がそれを見て噴出した。


「あははははは、ユー緊張し過ぎっしょ? ああ~もうだめ抑えきれない!」


 緊張と恥じらいで赤面する優香さんをガバっと抱き寄せた拓哉。彼女の耳元で何か囁いている。あいつ、何を言っているんだ。さらに優香さんの耳が赤くなったぞ。


「出会ったときから、いや、生まれる前からずっと好きでした! いやいや、もう愛してる! だから! 俺と付き合ってください! こんな俺だけど、絶対にユーのこと世界で一番幸せにするから!」


 深々と頭を下げて手を差し出す拓哉の姿に、歓声が上がる。報道陣から大量のフラッシュが放たれ優香さんの目元がひと際輝く。


「うん、私もずっとたーくんのこと好きでした。サッカーやってるところも、だらしない姿も、口開けて気持ちよさそうに寝ているところとか、ぜんぶぜ~んぶ大好き。ずっと、ず~と一緒にいたいです」


 ぎこちなく手を差し出し返すも、顔を上げた拓哉のニヤケ面に気が抜けたのか本来の笑顔に戻った優香さん。会場全体から拍手と祝福の声が降り注ぐ。


 これでよかったんだ。万事解決。一人で胸を撫でおろす。


「頑張ったねみやび。お疲れ様」

「ああ、奈緒、これでよかったんだよね」


 背伸びして僕の頭を撫でている奈緒が少し赤い目を細めて微笑む。


「羨ましいな~」

「え、羨ましいって?」

「あ、な、なんでもない! 何も言ってない!」


 奈緒ですら感化されてしまうほどの幸せムードってことか。思わず口に出た言葉をその場にほっぽりだし奈緒は拓哉と優香さんの元へと脱兎のごとく勢いで走っていく。


 幼馴染から恋人同士になった二人が、確かに僕にとっても眩しく見えるしなんと言っても“恋する人間”からしてみれば羨ましい限りだ。分かっていた結果なのに、独り身が多いチームメイトが「この裏切者!」って罵る気持ちも分かる。むろん、その言葉に悪意はないがね。僕もあとで言いまくることだろう。それに、聞きたいこともあるし。


 あれ? 待てよ。僕も羨ましいって思うのは当然だけど、奈緒がどうしてそう思うんだ? 


 奈緒は天真爛漫で自由な子だ。活発で誰にでも分け隔てなく接すことが出来る女の子で、知っての通りファンクラブがあるくらいモテる。でも、今まで誰かと付き合ったことがないんだ。


 そんな子が僕と同じように幼馴染同士で“カップルになった”拓哉と優香さんを見て羨ましく思った。それはつまり、奈緒の中にも一種の恋愛への憧れが芽生えたことを意味しているんだと思う。


「どうしたの雅くん? 私たちも行こうよ?」

「あ、うん、そうだね」


 奈緒が恋に目覚めた。そう思ったら胸が苦しくなっていつの間にか隣に立っていた春香に気が付くのが遅れた。今は、素直に二人を祝福するのが先だろう。春香を連なり、僕も祝福の輪に加わって、勝利と拓哉達の門出を祝うことにしたのであった。


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