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初めての恋  作者: 神寺雅文
第四章--解き明かされる過去
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解き明かされる過去62

 二度目のフォイッスルが鳴る。鉄壁の三羽ガラスが地を駆けた。自軍へと襲い掛かる敵からボールをかっさらうとすかさず残った二人で前後左右にパスを回して敵のフォーメーションをかく乱させる。で、仕上げは前線で暇そうにしている拓哉へパスを繋げる。

 

 拓哉ははなから自軍の心配などしていない。全幅の信頼を寄せるディフェンスが三人もいるのだ。昔から一緒に同じボールを追いかけた友がしっかりボールを自分のところまで届けてくれると信じて疑わないから生まれる余裕だ。


 全員が全員、自分の役割を分かっているし、全員の特性を理解しているから出来るチームプレイ。中高一貫だからこそできる連携に道明学園は翻弄されてっぱなしである。


「ここからの拓哉はもっとすごいぞ」


 寺嶋が感嘆のため息を吐いた。ケガをしているくせにどうしてここまで出来るんだと言いたげな表情だ。ベンチにいるほかのチームメイトからも「おお! いけー!」と声援が沸き上がった。


「拓哉のやつ……、踊ってやがる……」

「まるでタップダンスを踊ってるみたいだわ」

「ほんとだね、拓哉君、すごいよホントに」


 そうなのだ。拓哉のやつ、まるでタップダンスを踊るがごとく足さばきで相手選手をフェイントの嵐で惑わしている。傍から見たら拓哉の魅力的なタップダンスに四人の男が足を止めて魅了されている風景に見えてしまうほどだ。


 サッカーに関してずぶの素人である僕ら三人も拓哉のその華麗なる足さばきとボールさばきに見惚れてしまっているくらいだから、その身のこなしはもやは芸術の域だ。歓声に一層熱が籠るのも無理はない。得点圏に拓哉が切り込んだ。


 次の瞬間、拓哉が四人を交わすとそのまま強烈な一撃が道明学園のゴールネットを揺らした。正面から見ていなくても分かる不安定な軌道に僕が唖然としていると寺嶋が説明してくれた。


「拓哉お得意の無回転シュートだ。あれほどのシュートが出たってことはあいつホントに今日ハットトリックを優香のために決めるぞ」

「みてみて、優香ちゃんの顔、ありゃ、ますます惚れたわね」


 長年連れ添った幼馴染だ。あのシュートの意味を理解したのか、顔が恋する乙女のそれである。奈緒が冷やかすのも無理はないか。春香だってなんだから照れくさそうに微笑んでいる。


 なんだろか、凄く拓哉に負けた気がする。


「みやっち、君にも素晴らしいもんがある。二人もそれを知ってるからここまで付いてきてくれたんだ。変な話だけど、俺らがそれは保証するぜ」

「あ、寺坊どういう意味だって?」


 チームメイトに歓喜のフルボッコを受ける拓哉の姿を見てか、闘志に火が付いた寺嶋がそう言い残しウォーミングアップを始める為にベンチを後にした


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