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初めての恋  作者: 神寺雅文
第四章--解き明かされる過去
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解き明かされる過去60

「そんな……、バカな! じゃあ、明日香が見てきたものは全部お前たちの演技だったと言うのか?」

「演技っていうか、ガチンコ勝負? 青春の一ページ的な生活を送っていたらその子が勝手に妄想しただけっしょ」


 拓哉がすげー軽い口調で言うもんだから道明源三が狼狽する。


「じゃ、じゃあ、拓哉君、君の退部はどうなんだね! ケガしたって聞いたが? 本当はエースを狙う寺嶋君がケガさせたんじゃないのか?」

「はあ? 今日試合でますけど? 何を言ってるんすか? オーダー表まだ見てないんですか? フルで出場してハットトリック決めちゃいま~す」

「ぐぬぬぬ!」


 初めて人が「ぐぬぬぬ!」って唇をかんで悔しそうにするのを見た。道明源三の思惑はここに潰えたのである。


「おっとそうじゃ、言わんでもいいと思うが選手権は辞退せんからの? さて、どうなるかな今日、テレビも入ってるし本番さながらの試合になるの」

「くそ! こんなのどうせ茶番じゃ! 本当は試合でお前らをけっちょんけっちょうにしてやる秘策があるんじゃよ!」

「わたくしの純情を弄んだんですのね! 最低!」


 道明源三は最後まで小物感たっぷりの醜態を曝し尻尾を巻いて逃げ出して、その愛娘は一番の情報提供者であった草野に強烈なビンタをかまして半べそをかいている。


「男なんて皆、明日香に媚びを売るだけの存在でいいのですわ! 男なんてただの財布! こんな屈辱初めてです……」


 三つ編みが取れた。なんだ、カツラだったのか。


 地毛である栗色のロングヘアは艶々しており、良く手入れがされている。こちらも見方によればどこぞの社長令嬢に見える。が、あいにくうちの品行方正の春香お嬢様の足元にも及ばない。春香のエンジェルスマイルを見せてやりたいくらいだ。


「その顔、絶対に忘れませんわよ」


 すがすがしいほどの捨て台詞。僕らの顔を一人一人睨み付けて道明明日香は退室した。


「いつつ、嘘じゃなかったんだけどな。あれ、これってSDカードじゃんよ」

「もう意味ないし、プライド高そうな女だから負けた証拠なんて手元に残したくないんじゃね」


 草野の頬に張り付いていたのは彼女の手形だけではなく、4ギガのSDカードも張り付いていた。向こうから証拠を隠滅する機会をくれた。これで完全勝利と言えよう。


「いや、これからが本番だぜ雅。見ててくれ、俺達の姿を」

「そうだな、期待してるよみんな」

「「おう」」


 後顧の憂いは断った。悲劇から立ち直った常勝軍団・桜ノ宮学園サッカー部の負けられない戦いが今始まる。


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