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初めての恋  作者: 神寺雅文
第四章--解き明かされる過去
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解き明かされる過去55

 校長先生曰く、道明学園の創立者である道明源三は、日本が世界に誇る企業に“なっても”おかしくないほどの大企業の社長でもあるらしい。医療器具において業界シェア二番手であり、他の業界合わせても起業より経済成長を続けている会社としての経済力も二番手、地域貢献度も二番手、国家公認の優良企業になったのも二番手、社員になってよかったと言われる社員満足度も二番手、それゆえ国民からの知名度も二番手、あらゆる優良項目の二番手を網羅するくらいすごい企業なのだとか。


 で、どうして二人が犬猿の仲かと言うと、二人は家が隣同士の幼馴染でやることなすこと考えることがどうしてかいつも同じで、競うことが多かったのだと。でも、いつも要領がいいのは我が校長先生の方で、道明源三は負けっぱなしだったんだと。


 そう言えばと、隣で春香と奈緒が「でも確かそのすべての一位って木村コーポレーションだよね」って小声で話していた。それを知らないから道明源三は鼻を高くして誇らしげにしているのだ。


「ま、そんなことはこの辺に置いておいて、本題にはいろうかの?」

「そうじゃったそうじゃった。え~い、喜一郎! 今日こそはお前の泣きっ面を拝んでやるぞ」


 勝ち誇った顔ってのは普段勝敗を気にすることの無い人間にとっては馴染がない。僕も正直その表現だとどんな顔か想像つかないが、なるほどこの鼻を膨らませ目を半開きにする顔がその顔なのか。


 あえて言うが、カッコいいモノではない。自分は今後こんな顔はしない様に肝に銘じることにした。こんな小物感を出すくらいなら優越感になんて浸りたくない。


「相変わらず気色の悪い顔をするの。で、何が望みじゃ?」

「何をいまさら、そこの少年たちを連れてきたと言うことはわしに頭を下げに来たんじゃろ?」


 初めてこちらを向いた道明源三から視線に乗せて悪意が送り込まれてきた。つるっぱげのお地蔵さんは見方によっては好々爺っぽいのであるが、この人は自分のプライドの方が僕ら子供達より遥かに大事なのだろう。


「ほら、仲間を裏切ったエースと、校内暴力をするエース代行とその仲間たちよ、分かっているよの? 自分が今何をすればいいのか? 何を言えばいいのか?」


 その言葉と懐から取り出したあの写真を僕らの足元にぶちまけた。やはりと言えばいいのか、写真は複数枚用意されている様だ。それはいわば、こちらが悪の根源を奪っても意味がないことを暗に示しており、それらの活用方法もまた無限にあると言っているようなものだ。


 根源を根絶やしにできないのであれば、やはり写真自身の意味を無効にするしか僕らの助かる道はないのである。そう、この体に刻まれた痣をどうにかしない限りは、僕らはこうして脅されるしかない。


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