解き明かされる過去50
「どういうこと奈緒? 何かあったのか?」
「みやび、あんたの御仕置きはまた今度ね。校長先生、事情を早く話してください」
「いいのう、ごほうび――」――、残念だが、僕には奈緒に殴り飛ばされるシーンしか思い浮かばない。
「いい加減にしてください」――、奈緒かと思いきや一喝したのは春香である。当然だけど、怒っている理由は僕の満身創痍が冗談で笑い飛ばされることが気に障ったからだろう。
「それがの、道明学園からこんな写真と書類が届いたのじゃわしあてに」
春香の指すような冷たい視線に悶えた校長であるが、懐から数枚の写真と茶封筒を取り出した。
「おいおい、なんだよこれ! 寺坊! 悪いが一回殴らせろ!」
「まてまて、それはあとで必ず償う! それより、なんだよこれ……誰がこんな写真撮ったんだよ」
複数枚ある写真の内、一番上にあった写真は蹲る僕のわき腹にまさに今ボールが直撃した瞬間を映したものだった。顔が歪み雄たけびでも上げているじゃないだろうか。
それを信じられないモノを見るように一枚一枚捲って確かめた拓哉が、寺嶋に殴りかかろうとしたから全員で止めに入った。
「撮影者は大方めぼしはついておるわい。な、雅君?」
「ええ、まあ、ぼちぼち」
前振りもあっただけに、奈緒以外のここにいる全員が一人の少女の名前を思い浮かべた。
「え、あたしだけ知らないの?」
「奈緒は知らなくても無理ないよ、今朝分かったことだし」
「でも、春香も拓哉君も知ってるんでしょ?」
内緒にしていたなんて言えないし、言葉を詰まらせていると校長が僕の服をなんの脈絡もなしに脱がせた。
「きゃっ」――、春香と優香さんがとても女の子らしい声を漏らして目を手で覆う。が、奈緒はそんな女子力を持っていない。むしろ、僕の裸体なんて見飽きたとでも言いたげに痣らだけの貧相な肉体を見て言葉を漏らした。
「こんなのみたことない。背中にこんなの無かったよね? ここのおへその下のも? まって、こっちだって前にはなかった」
「ぬほほほほほ、ほうほう、二人はお互いの体のことならなんでも知っている間柄ってことかの?」
校長が言わなくてもいいようなことを言いやがったので場の空気が凍り付く。何もわかっていない奈緒だけが僕の全身をくまなく見ては青ざめた顔をしている。春香や優香さんなんて耳まで赤くしているぞ。
「雅、お前やっぱり奈緒ちゃんのこと抱いてたんじゃないか!」
「ち、違う!」
「なんてことだ、俺達の知らないあんなことやこんなことをこんな可愛い子と……」
いい加減にしろこのバカ野郎ども! 勝手なことを言うんじゃない! 女子がいる前、しかも僕の好きな子のいる前で破廉恥な発言をするなんてありえない。全員そこに正座しろ! って気分だ。




