父の会社と現状1
私の父は60代前半。
現在の会社を60歳で一度定年退職を向かえ、現在は再雇用制度で同じ会社に勤務している。
土木関係の仕事をしており、私が幼い頃に発生した鉄砲水の際も、高校生の頃に経験した豪雨災害のときも、すぐに仕事へ向かっていた。
そんな父の勤務先が、土石流の被害にあった。
20日当日、父は指定休という会社が定めた休みをとっていた。
そのため、会社には足を運んでいない。
私の実家も安佐北区内だが、区内の端と端にあたるため、移動には車で30分ほどかかる。
父の勤務先は、今回の集中豪雨で被害の大きかった八木地区から可部方面へ向かう地域にある。
20日当日も、休みだった父の携帯電話には、会社からの連絡が絶えなかったそうだ。
家庭での所用を済ませ、15時頃に父は会社へ向かおうとしたそうだ。
が、母が止めた。
「今行こうとしても道も通行止めになっとるけん。無理よ。」
「そうか・・・・・・。」
それ以上の言葉はなく、翌朝を迎える。
21日、出勤した父がみた風景は、これまでに見たこともないような景色だそうだ。
土石流で、仕事で使っていた車も事務所も流されていると。
テレビでは報道されていない地域だが、確かに鉄砲水が出てもおかしくない地理なのは私も知っている。
まず、事務所があった場所まで車でいけない。
道がないそうだ。
道だった場所は土石流に埋もれているため、車を会社から離れた場所へ駐車する。
そして歩いて登るそうだ。
60代前半の体には、多少こたえると話している。
朝3時30分に起床。4時には自宅を出て職場へ向かう。
被災前は車で15分から20分程度の職場も、今は30分から渋滞している時には1時間程度かかるそうだ。
これも、今まで利用していた道路が土砂災害で通行止めとなっているため、迂回路を利用するためである。
会社に着くと、太陽が昇り始める前から作業。
事務所が流されているため、体を休める場所もない。
以前の事務所にはクーラーがあり、会社員全員が休憩をとるスペースもあった。
今は休憩時間になると車まで戻り体を休めるために山を下り、そしてまた山を登る。
土砂をかきわけても、復旧がいつになるのか先が見えない状態だと父は言った。
「何回も仕事で災害現場を見てきたけど、今回みたいな事はない。」
長年土木作業に従事してきた父の言葉が、私にはとても重く感じた。