Merry Christmas☆
「ぽ、ぽ、ぽ、チーン! 12月24日午後11時。あと一時間でクリスマスをお知らせしまーす」
だれもいない道路の真ん中で懐中時計を見て私は言った。
今日はクリスマスイブ。聖なる夜。
好きな人と一緒に街を歩き、七面鳥を食べ、子供は前日の寝る前に靴下を枕元に置いて寝る日。
街中はイルミネーションに彩られ、幻想的になる。渋滞が至るところで起こるがその車のライトも幻想的な雰囲気に一役買っている……はず。
雪が降ればホワイトクリスマス。この上なくロマンチック。
そんな日。
私は一本のモミの木を見つめた。
大通りの真ん中にある一本の針葉樹の木。電飾やくす玉に飾られ、てっぺんにはお星様がキラリ。
電飾に飾られているが灯りは通りの街灯や電飾と同様に点いておらず、物悲しい。
通りに人影は無く、通りの店はどこもかしこも閉まっている。道路を突き破って出来た草も枯れている。
吐く息が白い。
コートのポケットから手袋を取り出すと付けた。
かじかんだ手に付けるのはちょっと大変だった。
手袋をしてもまだ寒い。
「詩織さんとしてはマフラーしてくればよかったかな~と思います!」
一人で勝手に言って手を挙げる。ツッコミがないと悲しいね。
仕方ないよね。みんな消えちゃったんだから。
私が消えるのは明日かもしれない。三秒後かもしれない。
消えるならせめてあと、一時間待って欲しい。
ううん、一時間なんて言わない。あと少しけでいい。あと少ししたら……。
懐中時計で時間を確認する。
わ! 一分前!
慌ててスイッチを持つと針葉樹の前に立った。途中スイッチから伸びるコードに引っ掛ったけど転ばない。
空が綺麗。
万点の星空。冬の大三角形にオリオン座。ほかの様々な星座。全部見える。
時計を見る。
あと十秒
とても綺麗な星空だけど一旦、退場してもおう。
この日のために準備したんだから。
あと五秒
行くよ!
「――3! ――2!――1!」
スイッチを押した。
一斉に通りの木に灯りが着き、クリスマスソングが流れ始める!
「12月25日午前零時!」
Merry Christmas!
本日の人間の数:2103人
メリークリスマス!