第一話はプロローグで出会いから
「何してんだ?」
そう言うために、どれほど逡巡したことか。彼を知るものがその場にいたなら、雄叫びと共にガッツポーズ走り寄って抱き締めて健闘を称えただろう。
生来、引っ込み思案で、たくさんの兄姉たちの後ろに隠れていることが多い。そういう環境が彼を作ったのか、そういう性格が環境で強化されたのか。とにかく、初対面、話したこともない、もちろん名前を知らない。そんな三重苦とも言える相手に声をかけるというのは、この金髪碧眼、華奢な骨格、白い肌、どこかおどおどとしたオーラをまとった、ガーリッシュボーイを絵に書いたようなミゲルにとって一大決心だった。
「…」
「あ…あの…!」
しかし。
対する少女は強敵だった。
ちらり、視線をやっただけで、後は無視。
黒髪黒目、よく日焼けした肌は健康的でミゲルとは対象的であるが、愛想が無い。冷たい、というよりは無関心な無表情。
ミゲル、よくがんばった。見違えたよ、素晴らしい。ただ相手が悪かったようだ。全大陸無言選手権のランク保持者だったようだな。気にすることはないさ。また明日からがんばろう。おつかれさま!彼を知る者なら、こう声をかけて肩をたたきタオルとドリンクを渡すところだ。
だが、彼はここから驚異の粘りを見せる!
「ねぇ、何してるの?何か探してるならてちゅ、て、て、てつだおうか?」
彼を知るものなら、タオルとドリンクを取り落とし、驚愕に目を見開き、だらしなく口を開けて茫然とするだろう。
さすがの少女も心動かされたのか、単に気が向いたのか、
「違う。」
言葉を発した。
「何でもない…………ありがとう。」
「そ、そうなんだ」
このレディは特にお困りでなかったようだ。
がっかりしたような、ほっとしたような気持ちになった少年が、そっと離れようとしたとき。
「ね、何をするの?」
「え?」
「いっしょに遊んでくれるんでしょ?」
そう、そうだった。確かに少年はそう言った。
「あ、じゃ、じゃあ…」
大きな栗の木の下で。小さな友情が始まった。
彼を知るものなら、タオルとドリンクを取り落とし、驚愕に目を見開き、だらしなく口を開けて茫然とするだろう。
さすがの少女も心動かされたのか、単に気が向いたのか、
「違う。」
言葉を発した。
「何でもない…………ありがとう。」
「そ、そうなんだ」
このレディは特にお困りでなかったようだ。
がっかりしたような、ほっとしたような気持ちになった少年が、そっと離れようとしたとき。
「ね、何をするの?」
「え?」
「いっしょに遊んでくれるんでしょ?」
そう、そうだった。確かに少年はそう言った。
「あ、じゃ、じゃあ…」
大きな栗の木の下で。小さな友情が始まった。