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第一話 平凡

気に入って下さったら幸いです。

 どこにでもいる普通の高校生。大抵の場合そんな事言われる奴ってのはどこか他人とは比較できないモノを持ち合わせているものだ。


 見た目や学力は大したことないのに謎にサバイバルとか料理とか護身術とかやたらと変な知識を身に付けていたり、幼馴染とか後輩とか先輩の()()! とやたらと知り合ってたりと何が平凡で何処に居るのか小一時間問い詰めたい。


 真の平凡ってのは俺みたいに名前も普通、テストは平均点と少し赤点を取り、運動も普通、バスケやサッカーでたまにパスが来るくらいでシュートも少ししか打ったことしかない。


 交友関係も至って普通。程よく話すし、冗談も言い合ったりする。女子には好かれても無ければ嫌われても無い。席も窓側ではなく廊下側から二列目の後ろから三番目。アニメや漫画で窓の外から主人公を映した時に描写されるか怪しい位置だ。


 これがどこにでもいる平凡な高校生だ、わかったか! 馬鹿主人公共!!



 ・・・



 僕の名前は佐藤雅之(さとうまさゆき)どこにでもいる普通の高校生だ。ルックスや学力、運動は別に特筆するような物は無い、ただ密かに自慢に思っているのは俺がオタクだからってのもあるけど、後ろの窓際の所謂主人公席に座れていることだ!


 ここから外を一人眺めるだけで…… イヤイヤ。流石に中二病過ぎるって、高2にもなって流石にそんな。



「おはよう」


「あ! お、おはよう」


 彼女は今井小春(いまいこはる)幼稚園からの幼馴染だ、当時はよく一緒に遊んだりお風呂にも一緒に入ったりしていた仲だが、小中高と上がるにつれ、僕と違ってルックスも抜群に良く人当たりのいい性格から男子だけでなく女子にも人気で先生からの信頼も厚く、まさに高嶺の花となり僕が無暗に話しかけてはいけない存在になってしまった。


 幸いなのは向こうが気兼ねなくこうして挨拶してくれることだ。



「おいおい、佐藤君。ちょっと面貸してくんない?」


 ハァ、またか。


 彼らを刺激しないように僕は内心ため息を吐く。もし表で吐いて、彼らの気でも悪くしようものなら、この後がさらに厄介になるため決して表にはこの気持ちを出さない。



「あ、ああ。今行くよ」


 声をかけてきたのは真田というクラスのやんちゃグループ、所謂不良のリーダー格だ。クラス内でボッチで腕っぷしが特に強くないナヨナヨした僕に目を付け、こうして人目のつかない男子トイレで、ハァ 俺を虐めて楽しんでるってわけだ。


 僕の家は母子家庭で母さんは夜遅くまで働いて僕を養っている。そんな母さんを心配させたくなく虐められてることを言えずにいると、それをいいことに真田の僕に対する虐めは続き、気づけば一年以上ずっと虐められている。


 ここまで耐えた僕を褒めてほしいが、生憎そんな人はいない。



「おうらよ!!」


「グッ……!」


「ハハハ、耐えてる耐えてる」


「いいね、もっと頑張んなよ」


 取り巻き二人に両腕を抑えられ、がら空きの腹めがけて真田の拳が飛んでくる。ここ最近とりわけ小春に挨拶された日はいつもこうだ、どうやら真田の奴は僕が小春に挨拶されるのが気に入らないらしい。


 完全に嫉妬だ。自分が挨拶してもらえないのは、そうやって変にイキがってるからなのにコイツはそれを認めずに僕で憂さ晴らしをしてるんだ。



「調子乗りやがって。もう一発お見舞いするか?」


「いーねー、次は俺にも…… おい、誰か来た」


「チッ! 行くぞ」


 そそくさとトイレから出ていく三人、今日はこれくらいで済んで良かったと、負け犬根性甚だしいが仕方ない。変にやり返しても奴らの親はそれなりの金持ち、どうせ碌なことにはならない。母さんが汗水垂らして僕を高校に通わせてくれてるんだ、無駄にするわけにはいかない。



「あ! ごめん」


 僕がトイレから出た瞬間、丁度さっきトイレにやってきたクラスメイトとぶつかってしまう。


「いや、別に」


「と、とにかくごめん!」


 相手も別に気にしてる感じではなかったがボッチ故のコミュ障でとにかく謝ってすぐにその場を離れる。


 教室に着いて席に向かう途中、小春と目が合う。


 僕はその目をすぐに逸らしてしまった。こうなった原因…… とまで言う訳じゃないがいらん恨みをこれ以上買いたくなかった僕は少しでも原因を減らそうと心に決めた。


 しばらくしてチャイムが鳴り先生が教室に入り朝のホームルームが始まる。



 その時だった。



 真っ白の眩しい光が床を覆いつくし始めた! 突然の事にクラス中で騒ぎになり男子の怒号と女子の悲鳴が重なり混乱に拍車をかける。


 外を見るとどうやら学校全体がこの謎の光に包まれているみたいで、喧騒の中からよく聞くと隣のクラスでも騒ぎになっている。


 廊下は焦って教室を飛び出した生徒が何人か走り、すでに校庭に飛び出した生徒たちもいた。


 先生が落ち着くよう声を上げるも誰も聞く耳を持たない。


 徐々に光は強まっていき、もう目を開けてられないくらいの眩しさだ。すると次の瞬間、足元が消え急に落下し始める。



「うあああああ!!!」


 思わず声を上げてしまうが僕だけでは無いらしい、目が開けられないのでどうなっているのかさっぱりだが結構落下している気がする。


 死ぬ。このままだと死んで――



「え?」


 さっきまでの落下が嘘かのように地面に何事もなく着地していた。というより既にそこに立っていた、そんな感じだ。


 まだ浮遊感でクラクラしていたからか、力が抜けるように地面に腰を下ろしていた。


 息がまだ荒い。


 頭がさっき起きたことを処理するのに時間がかかってるみたいだ。僕はグルッと周囲を見回して少しでも情報を頭に送ってこの状況を整理しようとした。


 僕がいる広間は屋内の様だ。天井が物凄く高く体育館なんて目じゃない、それに天井にあしらわれた豪華な装飾は思わず息を呑む程だ。


 地面に手をつくとひんやりとした感触とスベスベの肌触りのいい固い感触でよく見ると床は大理石でできていた。


 この空間を取り囲むように建てられた柱も一本一本が高名な彫刻や建築士が手掛けているのが素人でも分かる丁寧な作りで、ここが学校でない事をようやく理解した。


 というか、()()()


 やっぱり学校全体があの光に包まれていたらしい。見慣れたクラスメイトだけじゃなく、他のクラスや違う学年教員に至るまでその日学校に居た人たちみんながこの空間にいるみたいだ。



「ようこそ、異界の勇者様」


 高く透き通る声が広間に響く。ここは何処だと、何があったんだと騒ぎ立ててた人たち、何が何やらで泣き崩れる人たち、未だ混乱するすべての人がその声のする方を見た。まるで魔法にでも掛かったみたいに。



「こちらに来てまだ混乱しているかもしれません。ですが、どうか私共の願いを聞いてください」


 まるで女神にでも話しかけられているのか、その声に皆が思わず耳を傾けてしまう。



「どうか、どうか!」


 僕の脳内にとある単語が頭に過る。これは昨今のアニメ、マンガ、小説でもお馴染みの…… ()()()



「この世界をお救い下さい!」


 僕はどうやら異世界転移してしまったらしい。

読んでくれてありがとうございます! 何か気になることがあれば気軽にどうぞ! 更新はちょっと遅いと思います。

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