表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】『異世界に転生しすぎた』と言われましても。〜ようこそ、転生者対策室へ。帰らないなら住民として扱います〜  作者: 木風


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/4

第三話 ナロウダロウ王国 転生者迷惑防止条例 案

第一条。

マヨネーズその他の転生者知識に基づく新規発明品は、発明開始前に転生者対策室への登録を義務付ける。同一品の重複登録は認めない。


第二条。

断罪イベントの開催は、対策室への事前届出を必要とする。無断開催および公共の場での無許可開催は禁止する。


第三条。

「この世界は乙女ゲームの世界です」という発言は、公共の場では禁止する。ただし、同意した成人転生者同士の私的空間での発言は問わない。


第四条。

攻略対象者と呼称される人物への過度な接触を禁じる。過度とは週三回以上の一方的な訪問、深夜の呼び出し、および本人が拒否の意思を示した後の継続的接触とする。


第五条。

王族との婚約、婚姻を希望する場合、外交部への事前申請を必要とする。電撃婚約、電撃婚姻は承認なき場合、法的効力を持たない。


第六条。

チート能力による市場競争への参入は認めるが、通常の市場価格を著しく下回る販売行為、または通常の労働力では不可能な速度での大量生産行為には、チート能力税を課税する。


第七条。

鑑定スキル保持者は、他者の個人情報、能力、好感度、称号、秘密の過去などを本人の同意なく閲覧してはならない。


第八条。

アイテムボックスおよび異空間収納に類する能力の保持者は、収納物のうち、危険物、希少素材、大型魔獣の死骸、調理済み食品、王宮備品について申告義務を負う。


第九条。

他者の技能、魔法、固有能力をコピー、模倣、強奪する能力を持つ者は、能力模倣許可証を取得しなければならない。


第十条。

「俺また何かやっちゃいました?」という発言には、一件につき銀貨五枚の罰金を科す。


最後の一条を読み上げた時、転生者たちの間で奇妙なざわめきが起きた。


「最後のやつ、なんですか」

「そのままの意味です。あの発言をされると、周囲の人間が非常に困惑します。また、その発言をした後に何ら反省が見られないケースが多く、被害の拡大につながります」

「でも、どうやって把握するんですか」

「密告制度を設けます。報奨金あり」


しん、と静まり返った。


「……対策室長補佐、あなた、なかなか怖い人ですね」

「お褒めいただきありがとうございます」


これ以上ない褒め言葉に、笑みが零れた。


条例の草案は王議会でおおむね可決された。

チート能力税の税率をめぐって転生商人たちから猛反発があったが、「嫌なら帰れ」と言ったら全員黙った。

帰らないのだから、税は払わなければならない。


断罪イベントの事前届出制については、悪役令嬢転生者たちから「断罪は感情的なイベントであり、事前に届け出るものではない」という主張があった。


一理あると思ったが、「ならば断罪イベントをやめてください」と返したら渋々同意された。


鑑定スキルの無断使用禁止についても、「相手の好感度が見えなかったら恋愛攻略ができない」という反論があった。

それに対しては、「好感度を数値で見なければ成立しない恋愛は、恋愛ではなく情報処理です」と答えた。

なぜか数名が深く傷ついた顔をしていた。


知るか。


条例施行から一週間後、対策室の窓口はかつてないほど賑わっていた。


チート能力の申告をしに来る商人。

発明品の重複確認をしに来る転生者。

断罪イベントの届出を提出しに来る令嬢。

アイテムボックスの収納物一覧を提出しに来る冒険者。


今日だけで三十件以上の書類が処理された。


「次の方、どうぞ」


私は窓口に座り、視線を上げた。

入ってきたのは、十代半ばほどの少年。

いかにも「俺、何か特別な力に目覚めました」という顔をしている。


「能力申告ですね」

「はい。鑑定スキルを持っています」

「鑑定対象は?」

「名前、年齢、職業、能力値、好感度、隠し称号、秘めた恋心、前世の罪、今朝食べたものまで見えます」

「最後の二つは必要ですか」

「見えるんです」

「では、こちらにご署名を」


私は『無断鑑定禁止誓約書』を差し出すと、少年が固まる。


「えっ」

「この世界にも個人情報はあります」

「でも、鑑定ってチートの基本で……」

「基本的人権の方が上です」

「異世界なのに?」

「異世界だからといって、覗き見が許されると思わないでください」


少年はしょんぼりしながら署名した。


「次の方」


次に入ってきたのは、背中に大剣を背負った青年だった。


「アイテムボックスの申告ですね。収納物を確認します」

「えーと、ポーション三百本、魔剣七本、ドラゴンの死骸、カレー粉、マヨネーズの試作品、謎の卵、あと王宮の燭台が一本」

「最後のものは何ですか」

「気づいたら入っていました」

「窃盗物返還窓口へどうぞ」

「異世界なのに税関があるんですか?」

「異世界だからこそ必要なんです」

「ドラゴンの死骸は?」

「大型魔獣資源管理課へ」

「マヨネーズは?」

「発明品重複審査部へ」

「謎の卵は?」

「孵化前危険生物相談窓口へ」

「窓口、多くないですか?」

「あなた方が増やしたんです」


青年は黙った。


「次の方」


次に現れたのは、白いローブをまとった少女。


「コピー能力を持っています」

「能力模倣許可証の申請ですね。模倣可能範囲は?」

「一度見た魔法や剣技は、だいたい再現できます」

「では、こちらの申請書に、模倣予定の技能名、元技能保持者、模倣の目的、商用利用の有無を記載してください」

「許可制なんですか?」

「剣聖の家が三代かけて継承した奥義を、目視三秒で盗まれたら困りますので」

「でも、私のチートが……」

「他人の努力より優先される理由にはなりません」

「異世界なのに厳しい……」

「現実ですので」


少女は泣きそうな顔で申請書を受け取った。


そう。

ここは異世界ではあるが、彼らのためだけの遊び場ではない。


泣こうが、叫ぼうが、転生特典があろうが、書類は書いてもらう。

それが行政である。


「カヴァレキア様。少しよろしいですか」


午後になり、隣に座る補佐官が小さく声をかけてきた。


「何ですか」

「個人的な質問でして」


少し躊躇してから、補佐官は声を落とした。


「カヴァレキア様にも……前世の記憶があると、聞いたのですが」

ブックマーク、★★★★★、リアクション

よろしくお願いします( *・ㅅ・)*_ _))ペコ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。



こちらの作品もよろしくお願いします
▶ 鬼狩りの番
〜置き去りにされた娘は、半人半鬼に血を捧げる〜
和風ファンタジー/鬼/大正浪漫/半人半鬼/番/契約結婚/溺愛/虐げられ
本作品の文章・タイトル・設定等の無断転載、無断複製、生成AIへの入力および学習利用を禁じます。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ