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学校の『王子様』女子を甘やかしてみた  作者: 有明海
1章 体育祭

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06 生徒からの噂話

週明けの月曜日。

体育祭まで残り三週間と迫り、校内はどこか浮き足立った空気に包まれていた。


この土日は、妹の千代の子守りと家事に明け暮れた。

最近、俺が迎えに行けない日が増えたのが相当不満だったらしく、機嫌を直してもらうために公園を三軒ハシゴする羽目になった。

……正直、中学のバスケ部のときより体力を削られた気がする。


そんな疲れを引きずりながら、俺はいつものように四階の「あの教室」の扉を開けた。


「お疲れ様でーす……」

「あ、上原君、お疲れ様」


珍しく、部屋には会長の烏羽さんが一人でいた。

いつも賑やかな先輩たちがいないと、生徒会室が妙に広く、そして少しだけ居心地悪く感じる。


「そういえば聞いたわよ、上原君。あなた、今や学園の有名人じゃない」


烏羽さんが意地悪そうな笑みを浮かべてこちらを見てくる。

その言葉に、俺は思わず顔をしかめた。


「勘弁してください……。こっちは生きた心地がしないんですから」


事の発端は、今日の昼休みだった。


今日はうっかり弁当を忘れてしまい、いつメンと共に購買へと向かった


コロッケパンとジュースを見繕い出ようとすると、見覚えのない男女の先輩に声をかけらた。


「君、2年の上原くんだよねなんで生徒会に出入りしてるわけ?」

「白鷺さんと一緒にいたって本当?」


向けらたのは疑念と嫉妬だ。

……おいおい、受験生なら人様の心配してないで英単語の一つでも覚えてくれよ。


そんな毒づきが口から出そうになった時、後ろからひょっこりと、救世主(?)が現れた。


「大くん、そんなところで何やってるの?」


鳩ヶ谷さんだ。

その「大くん」という親しげなあだ名に、周囲の空気が一気に凍りつくのが分かった。


「茜。こいつ、白鷺さんと一緒にいたけど何者なのよ」


女子の先輩が鳩ヶ谷さんに詰め寄る。

すると、いつもはおちゃらけている鳩ヶ谷さんの瞳から、スッと体温が消えた。


「大くんは今、生徒会のお手伝いさんとして私たちが雇ってるの。だから一緒にいてもおかしくないでしょ?」


真顔で言い放つ彼女

普段の天然キャラからは想像もつかない、底冷えするようなオーラを感じる。


そんな気迫に押され、野次馬たちは蜘蛛の子を散らすように去っていったのだ。



「――っていうことがあったんです」


俺の報告を聞いて、烏羽さんは「あはは、茜らしいわね」と笑っていた。


そこへ、扉が勢いよく開く。


「つ、疲れたぁぁ……っ!」


入ってくるなりソファにダイブしたのは、鶴見さんだった。


「鶴見さん、お疲れですね。どうしたんですか?」


そういうと彼女はバツが悪そうに目を逸らす。


「……君のせいで、クラスで質問攻めにあったのよ。」


…………。

どうやら生徒会メンバーが俺のせい多かれ少なかれ被害を被っているらしい。


「でもヒヨどうする? このままだと上原君、本当にリンチに遭いそうな勢いだよ」


「いやーそうよね。私たちも華ちゃんの人気を舐めてたわ」


物騒な単語をさらっと出さないでほしい。

それに人気なのは白鷺さんだけじゃない……

二人が深刻な顔で今後のことを話し始めるとを俺はたまらず割って入った。


「あの……先輩たち。俺、別に迷惑だったら今すぐ辞めてもいいんですよ?」


俺の言葉に、二人は驚いたように顔を上げた。


「なんで? 私たちが強制的に連れてきたようなものなのに、断りもせずに手伝ってくれてるじゃない」


「そうだよ。逆に上原君はなんで引き受けてくれたの?」


真っ直ぐな視線。

俺は少し照れ臭くなりながらも、本音を口にした。


「……あの菊池さんが、わざわざ俺に声をかけたんです。相当困ってるんだろうな、役に立てるなら助けたいな、って。それだけですよ」


二人は呆然と目を見合わせた。


「……え、それだけ!?」


鳥羽さんから聞いたことないような叫び声が聞こえた。


「正直に言って。下心はないの? 」


「下心……? 別に、特には……」


俺の即答に、先輩たちは本日一番の衝撃を受けたような顔をしていた。


「逆に、俺の方が迷惑じゃないですかね? 俺がこんな5人の可愛い人たちと一緒にいて」


卑屈ではなく、客観的な事実として伝えたつもりだった。

だが、二人の反応は意外なものだった。


「……『5人』って、華ちゃんも入ってるの!?」


烏羽先輩の問いに、俺は「当たり前じゃないですか」と頷く。


「白鷺先輩も、可愛いじゃないですか」


あの冷徹な視線。

怖いし、近づきがたいのは確かだ。


けれど、時折見せる真剣な表情や、先輩たちと話している時のふとした横顔。

周りは綺麗だというが俺は直感的に可愛いと思ってしまった。


「……え、華を『可愛い』って言ったの?ねぇ、ヒヨ!?」


「なんか……いいわね! やっぱり上原君を誘って正解だったわ!」


鳩ヶ谷さんと烏羽さんが、勝手に盛り上がり始める。

俺はトークに入れなくなり窓の外を眺めることしかできなくなった。


そんななか背後のドアが開く音と共に、聞き覚えのある凛とした声が響く。


「お疲れ様」


現れたのは、白鷺さん。

彼女は部屋に入るなり、俺の姿を視界に捉えると、あからさまに不機嫌そうに無言で睨みつけてきた。


そんな白鷺さんとは対照的に烏羽さんと鳩ヶ谷さんが、ニヤニヤしながら白鷺先輩を見つめているのだ。


「……なによ、二人とも。その顔は」


白鷺先輩が怪訝そうに眉をひそめる。


「上原くんに何か変なことでも吹き込まれたの?」


「いやー、そんなことないよー?」


烏羽さんはそう答えるが、そのニヤケ面は全く否定になっていない。


白鷺さんは状況を理解できず、苛立ちを募らせている。


「……まあいいわ。ヒヨリ、今日は何をすればいい?」


彼女は俺を無視するように自分の席に着くと、ノートパソコンを開いた。


その流れるような所作は相変わらず美しい。

俺もただ座っているわけにはいかない。

何か手伝わなきゃ。


「うーん、そうだな……。今度やる説明会のスライド、華ちゃんに作ってほしいんだけど」


烏羽さんの指示に、白鷺さんが頷こうとした、その時だった。


「あ、それなら――土日に俺、作ってみました」

俺の何気ない一言に、室内の時間が止まった。


「「はぁ!?」」


「……」


烏羽さんと鳩ヶ谷さんの声が部屋中に響いた。

キーボードを叩こうとしていた白鷺先輩の指も、空中で完全に静止した。

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