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学校の『王子様』女子を甘やかしてみた  作者: 有明海
1章

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5/9

05

生徒会室を後にし、階段を下りて昇降口へと向かう。

部活終わりの生徒たちとすれ違うたび、何やら品定めをするような、あるいは好奇の入り混じった視線を感じた。


誰も話しかけてはこないが、背中に刺さる無言の圧が妙に重い。

そんな困惑を抱えながら下駄箱にたどり着くと、体育館の方から見知った顔が走ってきた。


「遠藤。部活お疲れ様」


「上原も……生徒会の手伝い、お疲れ様だな」


走り寄ってきた遠藤は、どこか俺を労るような表情を見せた。

あれ、俺、今日生徒会のこと言ったっけ? そんな疑問が頭をよぎったが、それを口にする前に、廊下に一際明るい声が響き渡った。


「あれ!大地先輩――っ!!」


猛烈な勢いでこちらへ突っ込んできたのは、中学時代の後輩、桐原青葉だ。


「久しぶりだね青葉元気にしてた?」


「先輩に会えたんで、一気に元気チャージ完了です! 見てください、今日練習でいっぱいシュート決めたんですよ!」


まるで、尻尾をちぎれんばかりに振るチワワだ。

この感じ懐かしいな、、、

懐かしいそのテンションに、思わず彼女の頭を撫でてやると、青葉は嬉しそうに近況を語り始めた。


「ところで先輩、先輩この時間までなにしてたんですか?」


不意の質問に言葉が詰まる。

生徒会の手伝いをしていることは、まだあまり広めたくないのが本音だ。


「……こいつ、数学の講習受けてたんだよ。な?」


遠藤が俺の肩に手を置き、『ここは任せろ』と言わんばかりにウィンクを送ってくる。


「そうなんだよな来年受験だから早めに勉強しておこうかなって思ってさ」


「さすが先輩です!遠藤先輩も見習った方がいいんじゃないですか?」


そんな軽口を交わしているうちに、時計の針は18時40分を回ろうとしていた。

18時40分を迎えそうになっていた。

急いで帰らないと、遠藤達に別れを告げようローファに履き替える。


「先輩!」


「ごめんちょっと俺もう急いでるから」


「もうバスケ部には入らないんですか?先輩がバスケしてるとこ見たいです!」


振り返ると、そこには今にも泣き出しそうな、寂しげな瞳があった。


「おい、青葉それはーー」


助け舟を出してくれた遠藤の声を遮り俺が答える。


「ーーごめん。もうバスケは興味ないかな」


遠藤の制止を遮り、俺はあえて突き放すような言葉を投げた

青葉の顔が絶望に染まる。その罪悪感に耐えきれず、俺は逃げるように昇降口を飛び出した。


(バスケをしてるところを見たいか、、、)


バスケをしたいか、したくないか。そんなの、自分が一番よく分かっている。


うちのバスケ部は都内1.2位を争う強豪校。

週5の活動は当たり前。なんなら土日も活動してる時がある。


そんな中で家事のため、千代の面倒見るため放課後に部活をやることは不可能だ。


――もし、バスケを続けていたら。

答えの出ない問いが、雨上がりの夜の闇に溶けていった。




翌朝。世界は土砂降りの雨に包まれていた。

週末の開放感も、この湿気と憂鬱な気分には勝てない。


校門へ向かうと、そこにはいつも通り白鷺さんたちの集団がいた。

以前ならその美しさに見惚れていたが、今は彼女の冷徹な視線が真っ先に思い浮かぶ。

ただただ恐ろしい。


彼女の視界に入らないよう、息を殺して下駄箱へと急ぐ。

だが、室内履きに履き替えている最中から、妙な視線を感じていた。

廊下を歩いても、教室に入っても、クラスメイトたちがジロジロとこちらを窺っている。


そんな中金井と佐々木が血相を変えて突っ込んできた。


「お前昨日白鷺先輩と2人きりでいたって本当か!?」


クラス中に響き渡る大声。瞬間、教室中の視線が俺に集中したのが分かった。

昨日からのまわりの視線の理由はこれか……


「2人に入ったろ生徒会の手伝いをしてるってそれだよ」


「そんなのは分かってんだよ! んで、どんな話をしたんだよ!!」


金井が詰め寄ってくるが、話したことと言えば殺伐とした業務連絡と、身に覚えのない疑いをかけられたことくらいだ。

俺が説明に困っていると、不意に隣から冷ややかな声が飛んできた。


「金井くんそろそろホームルームよ。席に戻ったら?」


菊池さんの一喝だ。

金井は「また後で聞くからな」と捨て台詞を残し、渋々自分の席へと去っていった。


「菊池さんありがとう。助かったよ」


手を合わせて感謝を伝えると、彼女は本を閉じることなく、淡々と、少しだけ重みのあるトーンで答えた。


「……今、学校中で『副会長が男と歩いていた』って話題になっているわ」


その言葉に、眩暈がした。

どんだけ影響力があるんだよあの人は……

白鷺華という存在の影響力を、俺は甘く見ていたらしい。

たった数分、一緒に歩いただけだというのに。


「苦労をかけるわね。……先に説明しておけばよかったわ。ごめんなさい」


あの鉄面皮の菊池さんが、申し訳なさそうに謝罪の言葉を口にする。

それは、これから俺に降りかかる受難が、彼女の謝罪が必要なほど面倒なものになるという、不吉な予兆に他ならなかった。


「それと来週は月曜日と木曜日に来てほしいって会長から」


「はぁー……わかったよ。」


そういいながらスマホのカレンダーに『生徒会』と予定を書き込んでいった。


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