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学校の『王子様』女子を甘やかしてみた  作者: 有明海
0章

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01 学校の王子様

二年生になって一ヶ月 。

新しいクラスの空気にもようやく馴染んできた頃、ニュースでは「もうすぐ梅雨入り」なんて予報が流れ始めていた 。


どんよりした空模様を気にしながら校門をくぐろうとした俺の目に、ひときわ異彩を放つ一団が飛び込んできた。


その中心にいるのは、この学校で知らない者はいない有名人

――白鷺 華だ


『王子様』


そう称されるほど彼女は美しい 。

綺麗に整えられた髪に、一つ一つの美しい所作 。


容姿だけではない。頭も切れるのだ 。

頭脳明晰で成績は学年トップ 。

生徒会副会長を務め、教師陣からの評価もピカイチ 。


「みんな周りの邪魔になってるから早く行くよ」


通り過ぎる誰もが足を止め、彼女の美しさに見惚れていた。

……まあ、かくいう俺もその一人なのだが 。


「ヨ! 上原おはよー。教室行こうぜ」


不意に肩を叩かれ、現実に引き戻される。声をかけてきたのは金井君 。一年生からの付き合いで、趣味が合う気心の知れた友人だ 。


「おはよー、金井」


三階の教室へ続く階段を上りながら、俺たちは他愛もない映画やドラマの話に花を咲かせる 。

上の階から、例の白鷺先輩ファンクラブの人たちが話しているのが聞こえてくる 。


「相変わらず白鷺先輩人気だな。校門前でぼーっとしてたけど、上原も興味ある感じ?」


「ないって言ったら嘘になるけど……あんなに目立っていると、まぁ気になるよね」


「だよなー、 あんな綺麗な人いたら嫌でも注目するよな」


「でも俺、どっちかっていうと『可愛い人だな』って思うんだけど」


俺の言葉に、金井は「はぁ?」と大げさに呆れた顔をした。

「可愛い!? あの『王子様』が? ナイナイ、それはないって!」


……やっぱり、そう思っているのは俺だけなのだろうか。


教室に入ると、いつものメンツが待っていた 。


「うえ、金井おはー」 「2人ともおはよう」


話しかけてきたのは佐々木君と遠藤 。

佐々木君は高身長のイケメン 。

サッカー部で1年からレギュラーとして試合に出ている、なかなかの高スペックマン 。


隣の遠藤は中学からの腐れ縁 。

バスケ部に入ってそこで仲良くなった 。

彼は俺と違って、高校でもバスケを続けて頑張っている 。


俺たちはいわゆる“いつメン”で、基本一緒に行動している 。

今、学校が楽しいのは彼らのおかげっていうのもある 。

まぁみんなで悪ふざけしすぎて、たまに怒られることもあるけど…… 。


そんないつメンと談笑していると、担任の吉野が入ってきた 。

みんな蜘蛛の子を散らすように席に戻っていく 。


「ちょっと早いけど朝のホームルーム始めるぞ。今日は席替えするぞ」


その一言でクラスがざわざわし始める 。

正直、3人以外で仲のいい友達もいないから、いい機会ではあるか 。

遠藤とは前後だから、ペア決めとか楽でいいんだけど。


「次、上原。くじ引きに来ーい」


クラスが騒然とする中、俺の番が回ってきた。

祈るような気持ちで箱に手を突っ込む。一番前だけは嫌だ! できれば一番後ろの窓際を……!


「5番」


「5番か、ならここだな」


その場所を見ると廊下側の、一番前の席 。

俺の願いは虚しくも叶わなかった 。


「一番前とか運悪いな、上原」


「終わった、俺の学校生活が……」


「まぁそう言うなよ。どんまいどんまい」


「てか金井隣じゃんこれからよろしくな」


「よろしくー、英語とか教えてくれよな」


そんな2人の話を小耳に挟みながら黒板に目をやると、隣の席が埋まっていた 。


「うえの隣の席、菊池さんじゃん」


「んげっ……菊池さん……」


菊池 楓うちのクラスの委員長 。

常に本を読んでいる寡黙な女子。

そして何より、俺たちのような「騒がしいグループ」を蛇蝎のごとく嫌っている(気がする)


「まぁ、俺らの中だったらうえが一番相性良さそうだし、大丈夫じゃね?」


「いやー逆でしょ。俺への目線がいっつも怖いし、目が合うし……」


「まぁ頑張ってくれ。俺はあいつらと楽しくやってるからさ」


そう言って番号を見ると『32』の文字 。

つまり3人は横並び。羨ましすぎる 。


「ほらお前ら、黒板通り移動しろー」


3人に馬鹿にされながら荷物を移動させる 。

重い足取りで荷物を運ぶと、隣の席ではすでに菊池さんが読書に没頭していた 。

最前列。逃げ場なし。……よし、せめて挨拶くらいはしておこう。


「菊池さん。俺、上原。これからよろしくね」


「よろしく」


……それだけ。

すぐにページに目を落とした 。

明かな拒絶オーラ。

これ、夏休みまで持つのか?


こうして、俺の(物理的に)前途多難な新生活が幕を開けたのだった。



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