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9話 9-nine- くろいろしろいろおうじさま

 『7月ですねー!』


 『7月っスー!』


 『7月と言えば?』


 『杏あめ、スイカ、冷やし中華に冷たいそうめんっすよね! そしてなによりー!?』


 『『VTuberバトルー!! いっえーーい!!』』


 『というわけでー! 本日の試合はー! ネクステ18期生VSきゃらめリップ1期生っす!』


 『というわけで、今回が初バトルになるきゃらめリップ1期生! 渚カペルです!』


 華やかに登場したのは、細身な長身VTuber。一見すると男性のようなシルエットだが、女性である。


 『今日はよろしく、いい試合が出来るといいね』


 『わっ! イケメンだー!』


 『普通に女の子みゅ。いわゆる王子様系VTuberってやつみゅ』


 『あらあら、そういうのも悪くないわねぇ~』


 『あれ? でも1人だけ? 後2人は必要だよね?』


 『ごめーさーつ! きゃらめリップは最近できたばっかの事務所で、VTuberは1人しか所属してないんっすー!!』


 『それって試合出来るの・・・・・・?』


 アイカはもっともらしい疑問を口にした。


 『そういうわけで、私たちの素晴らしい“声”を元にしゃべるAITuber』

 

  突如、カペルの両端が光りだし、光と共に2人の影が映る。光は消え、そこに現れたのは2人の3Dモデルだった。


 『黒部ランっ!』


 『白野ワール・・・・・・』


 『この2人がアシストするっすよー!』


 『おー! すごーい! 今ってこんなことが出来るんだ―!』


 アイカは2人のAITuberの元に駆け寄る。


 『ねぇねぇ喋れる!?』


 『もちろんですっ! なんたってAITuberですからっ!』


 『な、舐められてる・・・・・・っ? ひ、ひひぃ・・・・・・』


 『おわーー!! すっごーい!!』


 『未来との戦いって感じがするわー!』


 『黒・ブラン、白・ノワール。黒白と白黒って意味みゅんね』


 『2人とも、僕の初陣に来てくれてありがとう。絶対勝とうね』


 カペルの笑顔が2人に向けられる。


 『ええもちろんです! 勝ってたくさん褒められたいですから!』


 『わたしはといえば、負けてブーイングされるのも・・・・・・。また乙なものだったりなんだったりしちゃうかもですがぁ・・・・・・』


 『ねぇ、なんでワールちゃんは目隠ししてるの?』


 『そのほうが、痛みに集中できるからですぅ・・・・・・。へへへ』


 『それって、前は見えてるの・・・・・・?』


 白野は自分の首についたリードを自分で引っ張って荒い息を立てている。


 『はぁっ、はぁっ、もっと強くぅ・・・・・・っ!』


 『ねぇねぇハルハルちゃん。ワールちゃんはなんであんなに顔が真っ赤なの? 喜んでるの?』


 『知らないほうがいい世界みゅ』


 実況のくろねことしろねこは、自分たちと全く同じ声が自我を持っていることに少し違和感を感じていた。


 『くろねこの声がこんな変態ドMっ子に使われてるの、すっごい嫌なんすけど』


 『わたしだって嫌だけど、今回ばかりはしろねこに同情するな・・・・・・。そっちのほうが凄まじいキャラだし』


 『しゃーなしっす。もうしろねこボイスもくろねこボイスも一般販売されてるっすから、今でも同人界隈であんなことやこんなこと・・・・・・』


 『ひぃーっ! おそろしい!』


 『さぁー、切り替えていくっすよ! バトルスタートっす!』


 開始の合図と同時に、6人はそれぞれランダムな場所に飛ばされる。


 『今回のステージは・・・・・・っと』


 ホリィは、周りを見渡す。


 メリーゴーランドやジェットコースター、コーヒーカップなど、昔懐かしのアトラクションが並ぶ施設。たくさんの客もいて、騒々しいこの空間は。


 『アナログな遊園地ねぇ~!! 私こういうの好きよぉー!』


 わりかし昔のものが好きなホリィはとても喜んでいた。


 『ホントはゆっくり遊びたいところだけれど、みんなを探さなくちゃならないのよね』


 しかし、どうしても周りのアトラクションに目を奪われてしまう。


 『ちょっとくらい、いいわよね?』


 昔からの憧れだった、ジェットコースターに向かって走り出す。


挿絵(By みてみん)


 『こ、これは! あまりの速さに運用禁止になった令和の問題児! ジェットコースター小鳥遊!! このフォルム、このトンネル、ひねりを加えたレーン、間違いないわ!! 初速から200キロ出ることから、首を痛めた人が続出したというあの小鳥遊が! なんでこんなところにあるのよっ!?!?』


 『ぴんぽんぱんぽーん! えー、VTuberバトルに使われている空間は令和の世界がモチーフになってますので、現代では完全アウトの遊具も置いてまーす』


 『楽しむもよし、楽しんでる敵を倒すもよしの、春と夏限定の楽しい新ステージとなっておりますっすー。ぜひぜひ心ゆくまで楽しんでくださいねーっす!』


 ぴんぽんぱんぽーん??


 『そんなの、楽しむしかないじゃない! 眷属のみんな聞いたぁ!? あの小鳥遊よ!?』


 知らん       ホリィいい感じ

     なにそれ?          かたなしくん?

  ハイテンションホリィ  面白そう        一般開放マダー?

        生まれる前のやつじゃん     ↑ちっちゃくないよ!

  がんばって!!        知らん…なにそれ…怖…


 『なんで知らないのよー! もうー!』


 この喜びを全く共有できないことに腹を立てつつ、ジェットコースターの列に並ぶ。


 ステージをリアルにするためか、仮想の客があちらこちらで遊んでいる。だからちゃんと列も形成されているのだが、そんなのに並ぶほど猶予があるわけもない。


 『ねぇ、わたしのためにどいてくれないかしらぁ~?』


 シーーン。


 ホリィは自分の武器の斧を取り出し、客を薙ぎ払う。


 『『『『うぎゃーーー!!!!』』』』


 もちろん偽物の観客だとわかっての行動だが、あまりの躊躇のなさに視聴者も流石に驚く。


 『ちょっとは進んだかしら?』


 突然の虐殺行為に、客たちは蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。


 『ぴんぽんぱんぽーん! えー、言い忘れてましたが、このステージの特別ルールで、バトルに関係ない客を攻撃した場合、ペナルティーとして1人につき5秒の硬直が発生します』


 『ホリィさんは21人を攻撃したので、105秒の硬直が与えられますっすー』


 『それは先に言いなさいよぉーーーー!!!!!!!』


 『えー、だってぇ。普通攻撃しないでしょー』


 『途中で説明しようとおもたら、さっそくかーいって感じっす』


 『2分もここで生殺しなのぉっ!? というか、この間に倒されたら一生恨むわよっ!?』


 眼前のジェットコースターによだれを垂らしながら、硬直がなくなるまで待つ。しかし、一連の流れが面白かったのか、スパチャがうなぎのぼりに上がっていく。


 2分が過ぎようとした、その時だった。


 バキュンっ!!


 『いだっ!? 何よっ、今の!?』


 太ももに痛みが走った。


 体力が減る。


 『これって、銃で撃たれたってわけ? ちょ、ちょっと! どこから撃ってきてるのよ!』


 バキュンっ!!


 今度は、横腹を掠める。


 『い、いったぁい!!』


 そのとき、体の硬直が解ける。


 『に、逃げないと・・・・・・』


 痛みでもつれる足を引っ張りながら、ジェットコースターに乗り込む。


 ・・・・・・。


 コメント欄が「乗っとる場合かー!!」というコメントで埋め尽くされた。


 『だって! 流石に乗りたいじゃない! 後回しなんて気持ち悪くて嫌よ!』


 優先順位をつけるのが苦手なホリィはどうしてもジェットコースターに乗りたかったらしい。しかし、偶然にも乗り込み口は部屋になっていて、弾丸を受け付けない安全地帯となっていた。


 安全バーをおろすと、ゆっくりとコースターが動き始める。


 コースターが開始地点のトンネルの中まで進むと、一時停止する。


 「3! 2! 1! GO!!!!」


 カウントダウンと同時に、コースターは時速197キロメートルで走り始める。


 『ひゃあああぁぁぁぁぁ!!!!!!』


 はじめは緩やかなカーブ、そして縦に1回転したかと思うと、今度は横に3回転。あまりの速さに、脳が理解する間もなくあっという間に最終地点までついてしまった。


 『た、楽しかったけど、早すぎて何も見えなかった・・・・・・』


 ふらふらしながらコースターを降りると、そこにはなんとショップがあった。


 『やったわ! まさに一石二鳥!』


 自分のスパチャ金額を確認してみる。さっき見たときはレベルアッパーを買うくらいはあったけれど・・・・・・。


 0


 ・・・・・・。


 『0・・・・・・?』


 この数字、前にも見たことがある。そうだ、前回のバトルでデパートにあった可愛いお洋服に着替えようとして、着替え室に入ったんだけど、しっぽがつっかえててカーテンが若干空いた状態で着替えちゃったんだっけ。たしかその時にペナルティーをくらって。


 コメント欄を確認する。


 生乳はみ出ちゃってるからーっ!        草

       今回もペナルティ    見えたっ!!

  いつもの    ありがとうございますありがとうございますありがとうございます

      その衣装だからね、仕方ないね         わざと?

          はやくも恒例行事     さすがに想定外

   天然というには、あまりにも卑猥なVTuber、それがホリィ


 おそらく、あまりの風圧に衣装がめくれて自分の3.1415926…^2が見えてしまっていたのだろう。恥ずかしいという感情は別になかったが、そろそろBANされるんじゃないかとヒヤヒヤしていた。


 ともかく、またもやペナルティーのせいで不利な状況に陥ってしまった。


 『しなしなのふにゃふにゃに萎えたわ・・・・・・』


 一方その頃ハルハルは。


 『ホリィ姉!(妹キャラ続行中)またペナルティーくらってるみゅー!! そろそろ学べ!』


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