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15話 佐々木夏芽の探偵FILE ~アリバイ証明試験~

 時刻は10:21、記憶のリセットまで13時間39分。


 『バカ五百井のせいでとんでもなく時間を無駄にした!』


 『ごめんて・・・・・・』


 『洒落にならなーいっ!!』


 く・・・・・・でもまだ他にも何か手がかりがあるはず・・・・・・。


 昨日の夜、徹夜でAITuberたちの会話ログを見せてもらった(リーフィが協力してくれた)けど、やっぱり怪しい言葉は削除されてるのか、不審な点は見つからなかった。


 あとの手がかりは、やっぱりアリバイの確認か、夜には出来なかった調査をするしかない。


 というわけで、片っ端からアリバイを確認した。


 『私はずっと他の2人と一緒にいたのです! アリバイはしっかりあるのですよ!』


 『あるのですー!』


 『ええ、右に同じです。そもそも私たちにそんなことをする動機がないんですが』


 『WHYダニットは今は関係ない、犯行が可能か否かの問題』


 『わいだにっとってなんや?』


 『推理ものにおける考え方、要するに動機ってこと。誰が、どうやって、何が動機でやったのかを埋めるのが大切ってこと』


 『なるほどな』


 『次行くよ!』


 今度はあの仲良し3人組かな。


 『俺はユートピアメーカーに取り込まれてたんだ、絶対ムリだろ』


 『私はこっちの私と体を交換して、そのあとはずっとライブの練習してたよ? その時に研究してる人も見てくれてたから、お互いにアリバイっていうのはあるよ!』


 『私は現実世界にいたけど、ライブのために仮想世界に行ったの』


 『そういえば律帆は現実世界のおにいちゃんの娘って本当?』


 『本当のことよ』


 『くぅー! ますます現実世界が嫌になってくる! おにいちゃんが他の女とあんなことするなんて!!』


 『あまり人の父親のナマナマしい話しないでくれる?』


 うーん、この3人で怪しいのは律帆だな。なんせ前科がたくさんあるみたいだし、現実世界のおにいちゃんがバックにいたらなんでも出来るだろうし。


 それに、やっぱりここでも現実世界からこっちに来るタイミングが合わないんだよなぁ。こっちの世界は現実世界よりもとんでもなく早く進んでるはずなのに・・・・・・明らかに時間が合わない。ここの研究者が勘違いしてるだけで、実際の時間の流れはめちゃくちゃなのが正しいと思うんだけど。でも、それは今関係ないな。


 『今のアリバイの状況はどーなっとん?』


 『まず藍と晴人は外しても構わないよね。私、五百井、律帆、佐藤、七海、小林。斑鳩、かりん、渚。この中で佐藤、七海、小林はお互いにアリバイを主張してるけど、3人が共同で犯行を企てている可能性が否めない』


 『でもだいぶ絞れたなぁ』


 『次! 次で決めるよ!!』


 次にアリバイを聞いたのは斑鳩、かりんさん、渚さん。


 『ねえ、さっき喜楽里ちゃんがフラフラと廊下を歩いていたけれど、なにかあったのかい?』


 『それはどうでもよくてっ、みんなのアリバイが聞きたいの』


 『僕は黒部ランちゃんと秋葉原でビラを配っていたよ、秋葉原は僕と晴人くんの思い出の場所だからね』


 『惚気はいいんで・・・・・・』


 『僕はかりんさんと研究者のみなさんで最終調整の確認とか、いろいろしてたよ』


 『ええ! 監視カメラに映っていますからしっかり証拠もありますわよ!』


 『監視カメラがあるの? だったら犯人も分かるんじゃないっ?』


 『残念ながら、主要な場所のデータは全て消されていましたわ。Vスタジオは少人数で運営してますから、リアルタイムで監視している人もいませんの・・・・・・』


 『データが消されてた期間は?』


 『それが、大胆にもここ1週間全部消されてましたわ』


 じゃあ時間の特定は出来ない・・・・・・。


 『よし、これでさらに狭まったな! でも、AITuberは記憶を消せるって言っとったし、渚さんはワンチャンあるで・・・・・・』


 『いや、それはないよ、昨日ログを確認したけど、黒部ランにはちゃんと渚さんとの会話ログがあった。会話の内容も間違ってないし、渚さんは白で間違いないね』


 『せやったら斑鳩さんとかりんさんはどないや?』


 『あの2人はアリバイがある、だけど、管理室にとても近い場所にいたから、トイレに行くふりなんかで数分のうちにプロテクトを作った可能性も否定できない。だから容疑者リストから外せるのは渚さんだけだね』


 『よし、容疑者リストを再確認や』


 『私、五百井、律帆、佐藤、七海、小林。斑鳩、かりん。佐藤、七海、小林は共犯の可能性あり』


 『全然あかんやん! もう13時過ぎやで!? この中からどうやって犯人見つけて、おまけに自供させるねん!』


 『情報は集まった、これ以上捜査を頑張っても無意味だと思う。後はみんなをまとめて議論しよう、そして、この事件の犯人を見つけてみせる』


 『お、おお! いけるんか!?』


 『解いてみせる! おにいちゃんの名にかけて!』


 時刻は14:12、記憶のリセットまで9時間48分。


 『もうだめです・・・・・・! 元の世界に戻れなくなるですー・・・・・・!』


 『わーん! おとーさーん!!』


 『諦めてはいけませんわ! そのためにこうやって集まったんですから!』


 私がみんなを食堂に招集した。


 『では、今から現実世界と仮想世界の間に壁を作り、わたしたちをこの世界に閉じ込めようとしたのは誰か、議論を通して犯人探し!』


 『なんで夏芽が仕切ってんだよ』


 『この中でわたしが一番頭がいいから!』


 『大した自信だな・・・・・・』


 円になるように座り、それぞれの目が見える形で議論を始める。


 『まず始めに、今回議論をするにあたって既に容疑者から外れてる人を発表します! それは、AITuberの4人、そして仮想世界の住人のきゅー子さんと和美ちゃんの2人。そして、藍、晴人、喜楽里、渚の4人!』


 『なんでその人達は外れることになるのかな?』


 渚さんが優しく問いかける。


 『まず、リーフィの証言で、AITuberは人間にとって不利になるような行動を起こさないようなプログラムがあるらしいです。だから容疑者から外れるの、でも、だれかがAITuberにお願いした場合は犯行の“手段”として関わってくるらしい』


 『ですが、私はやってませんよ! ホントです! そんな褒められないこと、した覚えありません!!』


 『残念ながら、AITuberの記憶は簡単に消せるのでぇ・・・・・・。自覚はなくても犯行はできちゃいます・・・・・・』


 『ぶへらばー!』


 そう、ある意味便利だよね、犯行を行った方法はAITuberで全部説明できるから。その代わりに誰でも犯行が出来るってことになっちゃうわけだけど・・・・・・。


 『そして、現実世界のことを知らない2人にも犯行は不可能、というか、あの管理施設に入れないようになってるの』


 『よく分からないけどー、犯人からはずれたよー!』


 『幼女所望!』


 『そして、藍はずっと歌の練習をしていたし、そもそもこっちの世界の藍と交代してから間もなかったから、その間に犯行を行うのはほぼ不可能。晴人は異世界に閉じ込められたままだったから不可能。喜楽里はリーフィの監視下で大分にいたから不可能、渚さんは黒部ランといっしょに秋葉原にいたから不可能、このアリバイは黒部ランに残されていたログで証明済み』


 『えぇー!? 私の会話ログを覗いたんですかーー!? ひどいですよー!』


 『というわけで、外せるのは以上・・・・・・』


 『異議ありぃーでーす!!!』


 突然、佐藤が床をバンバン叩いて主張する。


 『さっき言ったじゃないですか! 私たちにはアリバイがありますです! そう、3人一緒にいたんですよ!』


 『残念だけど、3人一緒にいただけじゃ証明にならないよ。だって、3人が共犯の可能性だってあるしね』


 『そんなのひどいですー!』


 『あ、それならいい証拠がありますよ』


 そう言うと、小林さんが懐から1枚の写真を取り出した。


 『これ、兵庫でビラ配りをしていた時に撮ったんです。なんか映画のキャンペーンみたいで、恐竜といっしょに写真を撮れるんですよ』


 写真を見ると、確かに日付と時間が記載されている。


 『でも、これ一枚じゃ証明にならないよ。プロテクトが発動したのはライブの直後、ライブが始まるまでの24時間ずっと兵庫にいた証拠がないと』


 『あ、だったらあるわよー!』


 突然口を挟んだのはきゅー子さんだった。


 『ねえ七海ちゃん、後ろ向―いて』


 『へ? こうですか?』


 きゅー子さんが取り出したのはトラッキング装置だった。


 『うっそでしょ!?』


 『えへへ~、つい出来心で』


 『いつの間に!?』


 『喜楽里ちゃんを捕まえて~その後管理施設に言ったでしょう? その時に七海ちゃんとすれ違ったのよ~。可愛かったからつけちゃった!』


 『うわーー!! こわいですーーこのひとぉぉぉーー!!!』


 『で、スマホを見ればいつどこにいたかは丸わかりっ!』


 きゅー子さんが出したスマホ画面を見る。確かに、ずっと兵庫にいたことになっている。


 『えへへ! 役に立っちゃったかしら! 褒めて七海ちゃーん!』


 『いやですー!!! こわいですよーーー!!!』


 『なにはともあれ、証明出来たみたいでよかったです。七海ちゃんが兵庫にいたことが証明できて、この写真でお互いに無実を証明しあえるので、私たちは完全に無罪ですね』


 『七海の犠牲は大きいですが、無罪放免になったですよー!!』


 『それじゃあ整理するよ、容疑者リストは私、五百井、律帆、斑鳩、かりん。5人まで絞れたね』


 『だったら、私も異議申立てさせてもらうわ』


 今度意見を出したのは律帆だった。


 『さっきから私たちへのアリバイ確認ばかりして、あなた達のアリバイについて全く聞いてないんだけど?』


 『う、その通りや』


 『忘れてた。その通りだよ、じゃあ、私の身の潔白も証明してみせるね』


 『“私”やなくて、“私たち”やろ・・・・・・?』


 『五百井、自分の身は自分で守りなさい』


 『ずーっと一緒におったやんかぁぁー!!!』


 『五百井の言う通り、私たちは基本的には一緒にいた。渋谷でビラ配りをしてたよ』


 『じゃあ、今度は僕が相手になるよ』

 

 私たちに目線を注いでいるのは斑鳩さんだった。

 

 『渋谷にいた証明は出来るかな?』

 

 『監視カメラでも見れば分かるんじゃないの? 街中にあるでしょ』

 

 『生憎だけど時間がないからここで確認することは出来ない』

 

 『きゅー子さん! うちらに追跡装置はつけてへんの!?』


 『夏芽ちゃんにつけてた追跡装置は喜楽里ちゃんを見つけた時に一緒に外されちゃったの・・・・・・ごめんなさい』


 『いや、ごめんなさいって言うのもおかしな話なのです・・・・・・』


 『くぅー・・・・・・』


 『そうか、確かに私たちが一番不利かも・・・・・・。今回確実に信頼出来る情報は限られてる、追跡装置とAITuberの過去ログ。この2つと私たちは全く関わりがない』


 『わたくしたちは管理施設にずっといましたわ、これは十分な証拠のはず!』

 

 『かりんさん、今はあの2人を・・・・・・』


 『いや、それでいいと思う。消去法で決めていこう、手がかりがない人を推理するより、手がかりがある人を優先したほうがいいよ』


 『あー!!』


 『ど、どうしたの!?』


 『あるで! 証拠!!』


 『それを先に言えバカ五百井!!』


 『うち、コスモと話したねん! 渋谷駅の中で話したで!』


 『渋谷駅? あー、確かトイレに行ってたね。そういえば、COSMO;GARAXのログは全然解読出来なくてあんまり見てなかったな・・・・・・。もう一回確認しとこうか』


 私は昨日パソコンにで会話ログを表示し、内容を確認した。


 『あ、多分ここや!』


 そこにはこう書いてあった。


 『ぶへらばー! きゅるるー、渋谷でびらびらー! いっそがしそうでハンジャンっつー!!』


 COSMO;GARAXは相変わらず意味不明な言葉しか言わない、そして、この会話をした場所も記録に残っているが、確かに渋谷駅になっている。


 『なんで渋谷駅にコスモさん? が来ているのでしょう?』


 小林さんが疑問を投げかける。


 『あはは・・・・・・、COSMO;GARAXは時々散歩に出るんだよ、この世界と接続されてるからどこでも管理作業は出来るようになってるんだけど、それを良いことに退屈になったら外に出るんだ』


 『全く、困ったものですわよね、勝手にいなくなるんですから』


 『でも、24時間管理施設に行けないアリバイがあるわけじゃない。残念だけどアリバイとしては成立しないよ』


 『そんなぁー!? めっちゃラッキーや思ったのに!?』


 『五百井! しょーもないことで時間無駄にしてんじゃないよ!』


 『いや! 今のは十分な進展やったやろ!』


 『喜楽里の件といい・・・・・・さっきから時間を無駄にして・・・・・・。このままじゃ皆殺しコースになるんだよ!?』


 『勝手に皆殺しコースにするなよっ! 戻れないのと死ぬのでは話が違うだろ!』


 晴人が突っ込む。


 『うるさいっ! おにいちゃんがいない世界なんて生きる価値ないんだぁーっ!!』


 私は五百井を睨みつける。


 『これ以上時間を無駄にするようだったら、あんたから殺すからね』


 『あんまりやー!!』


 くっ、捜査の邪魔をしたいのか五百井は・・・・・・!


 ・・・・・・。


 ・・・・・・・・・・・・。


 あれ。


 ま、待ってよ?


 そういえば、犯人っていうのはどうやったら分かるんだ?


 今、私は犯人以外、アリバイのある人から消去法でやっていってる、でも、消去法以外にも犯人を特定する方法はあるはずだ・・・・・・。


 そうか、犯人じゃない証拠じゃなくて、犯人である証拠・・・・・・。


 今、アリバイが確定していない5人。


 その中で、犯人がいるとしたら・・・・・・。


 ・・・・・・あ。


 あれだ、それだ、これだ。


 全て、ヒントだったんだ。なんだ、こんなにもヒントがあったんじゃないか。


 そう、その全ての証拠が、たった1人をあぶり出してる。


 私は周りの雑音をかき消し、再びAITuberのログを見る。


 『分かった・・・・・・』


 『え?』


 『もしかして、犯人が分かったんですの!?』


 『でも、まだ全員のアリバイは・・・・・・』


 『確かに、これは殺人と違って、犯人に至る証拠は無い、指紋も血痕もなにも。だけど、“伏線”があったんだよ、その伏線は、たった1人の人物を導き出してる』


 私は、静まり返ったこの空間で、人指し指を高く掲げた。


 『犯人はっ!!』


 そう、“全て”の犯人は。


 『五百井、お前だッ!!』


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