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13話 召しませ温泉旅行 ~そうだ、温泉に行こう~

 時刻は17:23


 ライブは、目標の同時視聴者数1億人には届かなかった。


 でも、100万人超えの偉業を成し遂げた。突然現れ、100万人を超える視聴者数を得て消えたことで、文字通り伝説のVTuberになった。


 『これは、まごうことなきレジェンドVTuberだな』


 『うん、私も、これで夢を叶えたよ』


 『にわかには信じがたいわね、こっちの世界では異例の視聴者数を集めて、おまけに20人の命を救ったんだから』


 『おい、俺はおまけかよ!』


 『ふふ、冗談よ。ようやく3人で仲良く話せるってものじゃない』


 『なんていうか、変わったよな、向こうの世界の律帆より、こっちのほうがいい』


 『その向こうの世界ってなんなの? 確か、ユートピアメーカーって機械に入って自分の望み通りの世界に行ったのよね?』


 『あぁ、俺は、律帆が見つかるようにって願いにするつもりだったんだが、もう律帆は見つかってたからな。だから、律帆が指を切ったりしないで、もっと早い段階で和解出来るようにって願いを叶えてもらったんだ』


 『それって、どうなるの?』


 『最後のバトルの時点で分岐してた。俺達はお互いにキルされることなくログアウトしたんだ、そして、現実世界で対話して、そしてお互い分かりあえた。いやー見ものだったぞ、律帆と藍の殴り合い!』


 『なによそれっ!』


 『私が殴り合いしたのー!?』


 『そうそう、藍が『本気の殴り合いの喧嘩だー!』って言って、お互いに殴り合ってたんだよ。まぁ、律帆にボコボコにされてたけどな』


 『えー! なにそれひどいー!』


 『まぁ、私が藍に負けるわけないものね』


 『ひどいよー!』


 『まぁ、現実では律帆のお母さんがキーパーソンだったな、俺達じゃなくて』


 『そう! ちょっと悔しいんだよ! 私たちがいないうちに解決しちゃってたから!』


 『文句言うんじゃないわよ。お母さんと話してなかったら、きっと今頃咲也も律花(律帆の生みの母)も家族じゃなかったんだから、いいじゃない』


 『そうだな、このハッピーエンドは俺達で掴んだ未来だ』


 『かっこいー!』


 『茶化すなよ・・・・・・』


 そんなのどうでもいいー!


 知らない人のハッピーエンドはどうでもいいー!!


 『早く! おにいちゃんに会わせてー!!!!!』


 『ちょ、ちょっと待っててね・・・・・・? ほら、今研究者たちが頑張ってくれてるから』


 『待てないー!! なんのために私が頑張ってきたと思ってるの!? 分かる!? 分かりますー!?!?』


 『わ、分かってるってば・・・・・・』


 『ちょっと待ってくださいね・・・・・・? うーん』


 『どうしたんですの?』


 『それが、なぜか転送装置が作動しなくって、サルベージした20人を続けて転送したから再調整が必要かもしれません・・・・・・。すいませんが復旧に時間がかかりそうなので、しばらくこっちの世界でのんびりしておいてください』


 『果報は寝て待て、ということですわね、賛成ですわ』


 『って、どういうこと!? ねーどういうこと!? おにいちゃんは!?』


 『え、えーっと、ちょっとの間おあずけってことかな?』


 『はぁぁー!?!? 約束破った!? 破ったよね!? おい五百井!』


 『急にうちの名前呼んで、どうしたん?』


 『一発殴らせろ』


 『なんでやっ!?』


 『この気持ちをどこで発散しろって言うのー!!!』


 『それをなんでうちで発散するねん!!!』


 今すぐにでも殴りたい、イライラ! 耐えかねて拳を振り上げた瞬間、かりんさんが手をパンパンと叩いて、みんなに聞こえるような声で言った。


 『あ、そうですわ。みなさんで温泉旅行、というのはいかがでしょうか?』


 『え、ええやーん温泉旅行! な!? な!? うちを殴るより一汗かくほうが絶対ええでー!!』


 『まぁ、それもそうか』


 『ほっ』


 そういうわけで、私たちは温泉旅行に行くことになった。


 これは、ハッピーエンドにたどり着いた私たちへの、ちょっとしたウイニングラン。


 ・・・・・・。


 ・・・・・・・・・・・・。


 時刻は20:21


 夜の温泉に、突然団体客が押し寄せた。


 『わー! 不思議な感じですー!! バーチャル世界の温泉ってなんだか不思議ですよー!!』


 『ふしぎですー!!』


 ここは女湯。女子一同が姦しい。


 『え? もしかして、山田ちゃんとアンダーソンちゃん?』


 『そのとおりデス! なんちゃって、今はオフなのですよー』


 『なのですー!』


 『かりんさん、お久しぶりですね。こちらの世界に呼んでいただけたと思えば、温泉旅行とは、中々粋ではありませんか』


 『人数は多いほうが楽しいですわ!』


 ぷちジャンの3人は広報活動に呼ばれていて、こっちの世界にいた。せっかくだからとこっちにいた現実世界の人間全員を温泉旅行に呼んだのだった。


 『知らない人ばっかりだよー! 道の情報で頭がオーバーフロー(風呂)しちゃいそうだよー!』


 『あぁー! 幼女がたくさんいるー!』


 『うるさいなこの人たち・・・・・・。仮想現実の住人なのに、なんで連れてきたの?』


 ダジャレ好きの瀬川和美(雷舞ライム)、そして地垂木九子は仮想世界の住人、しかし喜楽里は現実世界の人間だ。同じVTuberバトルのチームだが、こっちの世界の彼女たちとは全くの無関係。


 『ぶへらばー!! きゃーきゃっきゃっきゃ!!』


 『あ! お背中流しますよー!』


 『ありがとう、気が利くのね』


 『同業者ですしー。ありがとうって言ってくれるのはなによりのご褒美ですしー!』


 『ぐへへっ! 水といえば水責めですよねぇー! 顔が真っ青になるまで沈められたいですぅー!』


 『ワール! 調子乗ってないで静かに入れないの!?』


 『ぶへらばー! ぶへらばー!』


 『コスモさんも! うるさいですよー!』


 『お風呂は好きだけれど、やっぱり1人のほうがのんびり出来ていいわ・・・・・・』


 AITuber4人組、黒部ラン、白野ワール、リーフィ、COSMO;GARAXも温泉を各々の価値観で楽しんでいた。


 『ねぇ、こっちの世界の私はどうしたの?』


 『現実世界の方にいるわ。すぐ戻るから大丈夫よ』


 『治りそうだった?』


 『現実世界に残ってる律花に聞いてみたけど、あんたの配信を見てかなり回復したって言ってたわよ』


 『うそ!? 私の歌にそんな力が!?』


 『全く、あんたばかりずるいわよね』


 ネクステの2人も楽しそうだ。


 『これで知り合いは全員集まってますわね!』


 『あ! みみちゃんとさっちゃんがいないよ!』


 『誰だっけ、それ』


 『御園生みみとサチウスですわね、こっちに招待するのを完全に忘れてましたわ・・・・・・』


 『もー! 私の仲間なのにー!』


 『相変わらず不憫ね、まあいいじゃない、現実世界で会えば』


 『あ! あとツクヨミもいないですよー!』


 『それは私よっ!』


 まあ、楽しそうだ。


 『なんていうか、私たちの立つ瀬がないっていうか・・・・・・』


 『あの人らばっかり知り合おってズルいよぁな・・・・・・。うちらは知り合い全員消えてもうたで』


 『笑い事じゃないけど、ここまでくると喜劇だよね』


 ・・・・・・。


 ・・・・・・・・・・・・。


 一方男湯。こちらは斑鳩、晴人、渚の3人がいた。


 『晴人くん、心配したんだよ』


 『渚さん、すいません、心配かけて』


 『大丈夫、その分今日はゆっくり語らおう』


 やたら親しげな渚と晴人。


 『え、えーっと、2人ってそういう関係だったりします?』


 『まだそーいう関係じゃねーけど・・・・・・』


 『恥ずかしがることないじゃないか、晴人くん』


 『んあぁ・・・・・・』


 『うわぁ、LGBTな世の中だ・・・・・・』


 男湯は人も少なく、話題も膨らまなかったのですぐに出てご飯を食べていた


 ・・・・・・。


 ・・・・・・・・・・・・。


 『ほら、晴人くん、あーん』


 『止めてくださいよ! それくらい、1人で出来ますから!』


 『ふふっ、照れてる姿も可愛いね』


 『もー・・・・・・』


 ずずずず・・・・・・。


 僕はいちゃつく2人を尻目にカレーうどんを啜っていた。


 『おや、どうしたんですの浮かない顔して』


 『あ、かりんさん』


 『それはカレーうどんですの? 美味しそうですわねー・・・・・・』


 『一口食べる?』


 『ほんとはそんなはしたないこと出来ませんが、今は気分がいいですわ、お言葉に甘えて』


 そう言うと、僕の持っているお箸を取って、一口啜る。


 『うん、なかなかいけますわ』


 僕のお箸で食べた・・・・・・? 割り箸ならたくさん置いてあるのに・・・・・・。


 『にしても、あがるの早いね』


 『連絡が入ったのですわ』


 『それって研究グループから? 転送装置は起動しそう?』


 『それが、エラーが出るせいでまだダメみたいですわ』


 『あー、よくあるよね。BMIのアプリがなぜか落ちちゃう時とかさ』


 『・・・・・・あまり大きな声では言えませんが、少し、嫌な予感がしますわ』


 僕は、かりんさんの勘を信じている。だから、かりんさんの嫌な予感には僕も顔を強張らせずにはいられなかった。


 『でも、大丈夫だよ』


 『え?』


 『どんな困難があっても、僕らは切り抜けてきた。その予感が的中しても、僕らはきっとハッピーエンドにたどり着けるはずだよ』


 『そうですわね、わたくしとしたことが、斑鳩さんに慰められてしまいましたわ。20かりんポイントをさしあげます』


 『とはいっても、こっちじゃポイントの確認は出来ないんだね』


 『BMIがありませんからね、そのかわり、ポイントは控えているので現実世界に戻ったらしっかり適用しておきますわ』


 『やったね!』


 ・・・・・・。


 ・・・・・・・・・・・・。


 『う、嘘だ・・・・・・』


 私は一生懸命にパソコンを操作していた。


 『これは、プロテクト? 現実世界とこの世界を隔てる壁が張られている・・・・・・』


 これは、どう考えても機械のエラーではない。人為的なものだ。


 『それに、記憶保持の権限が、剥奪されている・・・・・・』


 記憶保持、この世界は1ヶ月毎に記憶をリセットしているが、現実世界から来た人は記憶を消されないよう記憶保持権限が与えられている。それが、なぜか全て無効になっていたのだ。


 『次の記憶リセットはっ!?』


 ライブの開催もあり、次の記憶のリセットまでの猶予はなかった。


 『27時間後・・・・・・? まずいぞ・・・・・・非常にっ!』


 これら操作はこちらの仮想世界で行う必要がある。それが指し示す答えはたった1つだ。


 『・・・・・・この世界に、裏切り者がいるっ!』


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