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12話 アイカノ響

 『みんなー! 今日は私のために来てくれてありがとー!! 私はふれあ! 異世界からやってきた大人気VTuberだよ!!』


 頑張る、これは、晴人くんを助けるため、私の夢を叶えるため、ぜったい成功させないといけないんだ。


 『まずは私の曲! 異世界じゃ一番人気の曲から始めちゃうよ! “ふれあフレイム・レモネードマティーニ”!!』


 この曲は、ディレクターの人が作ってくれた曲。実は、私の意見はあんまり入ってなかったりするんだけど・・・・・・すごくいい曲。


 演奏が始まり、歌い始める。


 良かった、声はいつもどおり出る。歌える。


 今まで色んなことをやってきた。絵を描いたり、ゲームしたり。そんな中で、一番楽しかったのが歌だった。律帆ちゃんと、晴人くんと一緒に曲を作って、歌って、すごく楽しかった。だから、もう一度VTuberになるために始めたのは歌だった。


 事務所の関係で“あの歌”はもう歌えなくなっちゃったけど、それでも、もっとたくさんの歌を歌えて楽しかった。それに、アイカだったときのファンが私の招待に気づいて、たっくさん応援してくれた。


 昔、私はレジェンドVTuberになりたいって言った。基準が曖昧で、人気が長続きしない界隈だって言われてたVTuberの世界で。でも、お父さんとお母さんは応援してくれた。それに、私の頑張りを見て、晴人くんが一緒に頑張ってくれた。


 『なあ藍、VTuberになったんだってな』


 『うん! 今はお絵かき配信してるよ!』


 『げっ、あの絵でかよ・・・・・・。まぁ人気が出るかもな、別の方面で』


 『で、どうしたの?』


 『・・・・・・そ、それがさ、あんま言いたくないんだけど、俺もVTuberやってんだよ』


 『えー!? うそ!? ほんとに!?』


 『ま、まぁな。でも、どうやったらいいのか分かんないよな。俺はできれば現実じゃ出来ないようなことをしてみたいと思ってるんだけど、かといって、それほどはっちゃけられるほどでも・・・・・・』


 『じゃあさ! コラボしよーよ! コラボ!』


 『聞いてねぇし・・・・・・』


 そうやって、晴人くんとコラボ動画を作った。そういえば、前に八葉高校のメタラジでも紹介されたっけ、その時はお絵かきしかできないのかー! なんて言われたんだけど。


 晴人くんとハルハルのキャラを作りながら、一緒に試行錯誤して頑張ってきた。


 それから、晴人くん以外に唯一VTuberのことを話してた律帆ちゃんもVTuberを始めたんだよね。


 『でさー! 前は190人も見てくれたんだよー! 凄いでしょ!? 小学生なのに!』


 『私なら、もっと見てもらえると思うわ。藍の動画は編集もダメダメだし、キャラも弱いし』


 『えー! ひどいよー! じゃあやってみてよー! 結構難しいんだよー?』


 『ええ、いいわよ。ちょうど新しい趣味を始めてみたいと思ってたところだし』


 『え! ホント!? じゃーVTuberになったら一緒にコラボ動画撮ろうね!』


 『まぁ、コラボして損は無いかしらね』


 昔のことが走馬灯みたいに思い浮かぶ。別に死んだりするわけじゃないのにね!


 ♪窮屈だって困難だって 超えれば立派な勲章さ!


 この歌詞は、私の言葉を元に作られた歌詞。


 律帆ちゃんが色んな騒ぎを起こして、私も悩んで、大変だった。だけど、頑張った。


 すっごい辛かった、誰にも言ってなかったけど、本当は明るく振る舞ってる裏でいつも不安だった。律帆ちゃんが危ない薬を使ってるってことが分かって、その後は指を切って行方不明になって。不安じゃないわけない。


 だけど、色んな辛いことを乗り越えて、律帆ちゃんと心を開いて話す事ができた。


 最近、律帆ちゃんが私に言った言葉が印象に残ってる。


 『わたし、カウンセラーになろうと思うの』


 『前にも言ってたよね! それが将来の夢になったの!?』


 『うん』


 『すごーい!』


 『私ね、今まで人前で泣いたり出来なかった。きっと私は薄情で、泣くことは出来ない人間なんだって思ってたの。でも、私がまだホリィをやってた頃、咲也がこう言ったのよ。『泣くことが出来ない? そんなに深刻になって考えなくても大丈夫だよ。それはきっと、泣けるほど心を許せる人がまだいないだけなんじゃないかな。今は出会えてない、気づいてないだけで、きっと自分にこんな感情があったんだって気づく瞬間がきっと来るよ』って。咲也はなにをやってもダメダメだけど、ダメダメだから楽観的というか、あいつと話してると少し楽になるの。私も、そんなふうに誰かの気持ちを楽にしてあげられるようになれたら嬉しいなって、そう思って』


 律帆ちゃんがこうやって自分の気持ちをたくさん教えてくれること、今までなかったから、嬉しくて。すごく大変だったし、失ったものもあるけど、頑張って困難を乗り越えた先にお宝があったこと、これをみんなに伝えたかった。


 ♪やなこと全部シェイクして カクテル飲んで酩酊めーでー


 ♪みんなふれあちゃんを盲信しなさいっ 全て忘れれば 世界は楽しいのさっ!


 思い出を振り返りながら歌う。


 今の視聴者は、20万人、この世界の最高視聴者数は74万人らしい、やっぱり、1億人なんて無理かもしれない。


 でも、私は自分に出来ることをやるだけ。


 『1曲め、“ふれあフレイム・レモネードマティーニ”でした! 次にいく前に、久しぶりにお絵かきしたいと思います! 異世界じゃあんまり上手くないって言われてたんだけど、こっちだとどうかな~』


 私は、フリップに絵を描いていく。


 『はい! パンダです!』


 コメント欄に“あざとい笑”“これはひどい”って流れてくる。あはは、こっちでも私の絵は微妙な評価みたい。


 『じゃあ、次の曲、行ってみよー!! 次の曲は“ざんばらダンス”!』


 ・・・・・・。


 ・・・・・・・・・・・・。


 視聴者数、78万人達成。


 『やっぱり1億人なんてはるか夢の話やったんやな・・・・・・』


 『でも、すごすぎない? この世界じゃ全くの新参者なのに、達成しちゃったよ、歴代1位の同時接続数だよ』


 『せやけど、意味ないやん! 目的は1億人やし、それに、1回こっきりのライブで、そのうちみんなの記憶からも消えてまうんやで!?』


 『でも、藍は全く諦めてない、すっごい笑顔だよ。なんだか、奇跡を起こしそうな、そんな、気がする』


 視聴者数、80万人達成。


 『あぁー!! ダメだぁ!! こっちの世界がこれほどVTuberに無関心だったとはぁー! また作戦を練り直さないと! 今回のライブは失敗だぁーー!!』


 研究者たちが嘆いていた。


 『ですが、わたくしは不思議とこのライブに心奪われますわ』


 『・・・・・・ん、んー!? あれ!?』


 『どうしたんですの!?』


 『記憶領域が、ほどけてる・・・・・・』


 『それは本当ですの!?』


 『見たこと無い波形だ・・・・・・。これは、同調? まさか、形態場仮説は・・・・・・』


 『どういうことですの!? 説明してくださいまし!』


 『形態場仮説とは、人は全員同じ記憶領域で記憶を共有しているという仮説です。その場合、誰かの記憶が他人の記憶に影響を与えると考えられていて・・・・・・。今、藍さんの強い感情が、他人を巻き込んで増幅しているんです!』


 『そ、それじゃあ、記憶のサルベージは!』


 『はい! 可能です! まさかこんな大規模なシンクロニシティ現象が観測出来るとは・・・・・・。奇跡としか言いようがありません』


 『ですが、なぜそんなことが急に・・・・・・』


 『藍さんの純真無垢な精神と、様々な思い出、それらが彼女の全てに魅力を与えているんです。アマチュアの歌唱力、高校生の発展途上な精神、それらの未完成な部分が彼女の武器だ!』


 視聴者数、87万人。


 『あははっ! すごい! こんなにもたくさんの人が見てくれてる! ここまで来たら、目指すべきは1つだよね!!』


 私は、人指し指を一本立てる。


 『100万人! 目指すよっ!!!』


 私は、さらに歌った。


 気持ちがいい、歌っていて、どんどんボルテージが上がっていくようだ。


 すごい、今ならなんでも出来そうな気がする。


 喉の奥から、魂の声が出る。


 これが、私の力。


 分かる、みんなの姿は見えなくても、伝わってる、私の気持ち、全て。


 視聴者数、96万人。


 『あははっ! 惜しかったなぁー! もう曲のストックもなくなっちゃった! 100万人、行きたかったんだけどなぁー! みんな、見てくれてありがとー! すっごく楽しかったよ!』


 もう1億人とかどうでもよかった。私はただ、今この胸の中にある全てを吐き出したかった。


 えへへ、自己中かな。


 『それじゃあ、今日の配信は・・・・・・』


 『『ちょっと待ったぁぁ!!!』』


 こ、この声って!?!?


 ステージに突然現れた2人の姿。


 『う、嘘・・・・・・嘘だよぉ・・・・・・!』


 私は突然のことに大粒の涙を流してしまった。


 『ふふ、仮想世界の藍が私の武勇伝を聞いてホリィを見てみたいって言うから、仕方ないじゃない? 私の黒歴史だけどね』


 『ホリィちゃん!!』


 『ありがとな、おかげでこっちに戻ってこれた。向こうの世界は律帆が大人しく改心してたんだが、まぁ、せっかく頑張って律帆を改心させたんだ、こっちのほうがいいよな』


 『ハルハル!?』


 『ふん、あんた、驚くのは自分の姿を見てからにしなさい』


 え? 私の体・・・・・・?


 え、これって・・・・・・。


 『アイカになってる!?』


 『ネクステ18期生がパワーアップして戻ってきたってことだな』


 『技術者の人たちがデータベースから引っ張ってくれたのよ』


 『こ、こんなの・・・・・・すごいよ! すごすぎるよ!!』


 『あぁ、最高だな』


 『これも、私たちが頑張ってきたからこそね』


 『もしかして、もしかして! あの曲も準備してくれてたりする!?』


 『そのために来たんだろ?』


 『別にハルハルがいなくてもデュエット曲だから大丈夫なんだけどね』


 『なに言ってるんだよ、俺のラップパートあってこそだろ!』


 『もー! みんな! 今は生配信中だよ! それに、みんなは私たちのこと知らないんだよー! 積もる話は、また今度にしよっ!』


 『それもそうね』


 『あぁ』


 『じゃ! みんな! 自己紹介から仕切りなおすよっ!』


 嬉しい。


 私、楽しいのに、嬉しいのにすっごく泣いてる。涙が止まらない。


 本当の意味で友達になれた律帆ちゃんと、さっきまで機械に閉じ込められていた親友の晴人くんが。


 いや、私の最高のともだちが、こうして隣にいる。


 『みんなおはよう! 私はアイカ! 今日もたくさんハッピーになっていってね!』


 『みゅー、私はハルハル。電波系だったり俺っ子だったりする謎の存在―』


 『私はホリィ! 正直黒歴史だけど、今日だけはサービスしちゃうっ!』


 『実は、私たちの曲があるの!』


 『そうみゅ、作詞作曲をこの3人で頑張ったのだみゅ』


 『結構昔に作った曲だから、歌詞はイマイチかもしれないわ、でも、私たちにとって一番の思い出の曲、そして、私たちの思いを込めた曲!』


 『それじゃあいくよー!!』


 『『『ラフライフ☆めでぃけーしょん!!!!』』』


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