6話 ド素人ちゃんねる15 ~こちら八葉高校放送部
『みんなー! こんにちは! 今日もたくさんハッピーになっていってね!』
今日も、VTuberの活動頑張ってます! 中学3年生の藍です!
今回は、なんと八葉高校の放送部主催のメタラジ(仮想空間で行われるラジオ番組)にゲスト参戦することになりました。ここの放送部は去年全国1位を取ったらしくて、すごいところです、でも、放送部の1位ってなんだろう。
『今日は、トレンドVTuberになりたてほやほやのアイカさんがゲストです。ついにうちの放送部がここまでのゲストを呼べる日が来るなんて・・・・・・』
『えぇっ? なんでですか? 私の方が嬉しいですよーっ! だって全国1位なんですよね!? 私1位なんて取ったことないのに! すごいところに呼んでもらって、ちょっと緊張してます・・・・・・』
『うぅ、生アイカちゃんだぁ。かわいい・・・・・・』
こんな感じでいいのかな?
『それじゃあ本題に移っていきましょう! 今日はいろいろインタビューという事で、トレンドVTuberになるまでの紆余曲折、つらかったことから楽しかったことを聞いていきたいと思います!』
『は、はいっ!』
今日のお話は、主役はアイカ達ではなく、八葉学園放送部のお話。
そう、この物語は、知恵と工夫とド素人魂で面白番組を制作する、ド素人青春ドタバタコメディである!
事の発端はこのラジオの司会者、中田陽介。彼は、現在高校3年生だ。彼が2年生の時の3年生、つまりOBはすさまじい精鋭ぞろいで、全国1位をとったり甲子園で放送席を任されたりなど、たくさんの偉業を残した。だが、その精鋭たちはまとめて引退し、今では実力も実経験もない5人の部員しか残っていない。
そのため、部長である中田陽介はなんとかして知名度を上げ、部員を集めようと画策した。その結果生まれたのが今回の企画。“元”全国1位のネームバリューを用いて、なんとか15分のラジオ放送にこぎつけたというわけだ。
「俺はあのアイカちゃんに会えて、おまけに部員勧誘のチャンスまで! 完璧な作戦だろ!?」
「部員勧誘はおまけなんですね」
「さすがっす先輩! ぜひアイカちゃんの鉄壁スカートの下にはしっかりパンツがモデリングされてるのか聞いてくださいね!」
「おいおい! そんなこと聞いたら廃部だっつーの!」
「「「「あはははは!!」」」」
そんなわけで、もはや全一の誇りも何もない放送部による低俗なラジオ番組は幕を開けてしまったのだった。
『まずは、VTuberになってからですね。最初はどんな動画を出してたんですか?』
『ええと、最初は全く有名じゃなかったから、とにかく出来ることをアピールしようと思って、お絵描きをしてました!』
『おお! お絵描き系VTuber路線だったんですね!』
『はい! 多分今でも残ってると思います!』
『えーっと、過去の動画はっと。これですかね?』
司会の陽介が画面を仮想空間内に映し出して共有する。画面に映ったのは過去の配信、アイカが描いた謎の生き物が映っている。
『はい! それです!』
『かわいい、くま?』
『惜しいです! これはパンダです!』
小学生の落書きなら及第点レベルだが、ネットに投稿するイラストとしてはかなりひどい出来だった。本人はパンダだと言っているが、パンダの特徴的な模様は全くなく、毛は真っ白だ。
『最初期はこんな動画で、20本ほど出てますね』
『記念すべき20本目は1枚目のイラストをまた描きなおしたんです! パンダって黒いところがあるんですね!』
『あはは・・・・・・』
コメント欄には「画伯降臨」「こ れ は ひ ど い」といったコメントであふれていた。いつもと変わらないアイカの天然ムーブなので、ネタとして受け流される。
『で、そのあとは、コラボ動画ですか? 早いですね?』
『はい! ハルハルと初めてコラボしたんです! ここから4年くらい経ってるんですねー、あっという間です』
『じゃあちょっと見てみましょうか』
『はい!』
メタ空間のディスプレイに動画が映し出される。
「はるーん。ハルハル、だよ!」
「アイカでーす! 今日はコラボ動画という事で、フォロワー4人のハルハルとコラボすることになりましたー!」
「今日の動画はー」
「なんとー?」
「2時間耐久お絵描きー!」
「イエーイ!」
なにやらうずうずしてる司会者が動画を一時停止して、アイカに物申す。
『お絵描きしかしてへんやん!』
『か、関西弁!?』
『いやなんでやねん! さっきからツッコみたくてしゃあなかったわ! どんだけお絵描きしてんねん! 最初の1年ずぅっとお絵描きやないかい! そんで初コラボ動画もお絵描きなんかいな! そんでハルハルの絵はもっとひどいな! サムネが下手すればダークウェブに転がってる奴や! そんでなによりパンーーーー』
映像が乱れています。しばらくおまちください・・・・・・。
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『すいません、ちょっとヒートアップしすぎて・・・・・・』
『ふぇーん・・・・・・』
『な、泣かないでくださいっ! あぁ、関西弁って聞きなれない人には怖いってホントだったんだぁ・・・・・・』
司会者の中田陽介を部室から見守る八葉高校放送部部員の4人は、かなり絶望していた。
「やっちゃったよ、放送事故だよ」
「これじゃあもう、ゲスト呼べなくなるかも・・・・・・」
「コメント欄が荒れてる・・・・・・。終わった・・・・・・」
「放送部って、標準語にするのはもちろん、イントネーションまで矯正するからね。溜まりに溜まった関西弁喋りたいボルテージがここで限界を迎えたっぽい・・・・・・」
部長中田陽介は焦っていた。なんとか挽回しなくては。
『あー・・・・・・、えーっと、アイカさんって泣くことあるんですね!』
「馬鹿かっ!?」
「人間として終わってるだろ!! なんだその話題の切替っ!!!」
『は、はい・・・・・・。すいません』
『いえいえ! 泣くのいいですよね! 気分がすっきりしますもんね!』
「泣かせた側がそれ言うなよ!」
「先輩! 一回ネットの炎上で焼かれて死んで転生してきてください!」
『すいません、少しヒートアップしてしまいました。気を取り直して、なんでこの時フォロワーが4人しかいなかったハルハルさんとコラボしたんですか? お互いが知り合うきっかけとかがあったんでしょうか?』
『・・・・・・あ、はい! そ、それは、えっと。そう! ハルハルの動画をたまたま見て、すごくステキだなーと思って、一か八かでコメントしたんです、コラボしてもらえませんか? って。そしたら、ハルハルがOKしてくれたんです! で、動画の内容考えたんですけど、やっぱりお絵描きって楽しいから2人でお絵描きするってことになったんです!』
ほ、ホントは違うんだけど・・・・・・。私たちの馴れ初めの話になっちゃうから・・・・・・。
『なるほど、しっかり意味があったんですね。それより、ハルハルさんとの出会いは初めて知りました。これは視聴者のみなさんも知りたかったところではないでしょうか?』
「おお、なんとか持ち直した!」
「これはなかなか貴重な新情報ゲットだ! さすが部長! ここまで聞けるとは!」
そのあともつつがなく放送は続き、15分の放送はあっという間にエンディングを迎えた。
中田陽介はやりきった。一度は深刻なトラブルに見舞われたものの、それをカバーするだけの放送が出来た。今の中田陽介は胸が熱かった、そしてこう思ってしまった。「今日の俺ならなんだって上手くいく気がするぜ!」と
「よしよし! 無事に放送終了!」
「なんとか持ち返しましたね! ここで部長が調子に乗ってアドリブでも入れなければ!」
『ところで、アイカさんのパンツってちゃんとモデリングされてるんかいな?』
ばちーん!
宙を舞う司会者。
どさっ・・・・・・。
ノーモーションでアイカの平手打ちが炸裂した。
・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・。
『いいオチになりましたわ! なんちゃって!』
「「「「ずてーーん!!!」」」」
八葉高校放送部は、この事件をきっかけに廃部になりました。
めでたしめでたし。




