1話 それゆけ! ぶらこんマンHARDCORE!!
私の名前は、高田夏芽!
今は高校2年生で、元気に過ごしてます! たまにお菓子を作って食べたり、ゲームしたり。そんな、普通の女の子!
歳は16、好きな食べ物は綿菓子、キライな食べ物はスイカ。
そして、好きなものは。
おにいちゃんおにいちゃんおにいちゃんおにいちゃんおにいちゃんおにいちゃんおにいちゃんおにいちゃんおにいちゃんおにいちゃんおにいちゃんおにいちゃんおにいちゃんおにいちゃんおにいちゃんおにいちゃんおにいちゃんおにいちゃんおにいちゃんおにいちゃんおにいちゃんおにいちゃんおにいちゃんおにいちゃんおにいちゃんおにいちゃんおにいちゃんおにいちゃんおにいちゃんおにいちゃんおにいちゃんおにいちゃんおにいちゃんおにいちゃんおにいちゃんおにいちゃんおにいちゃんおにいちゃんおにいちゃんおにいちゃん
・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・。
『昨日ね、おにいちゃんが私の作ったマカロンを食べて、美味しいって言ってくれたんだ~! 正直、あまり膨らまなくて不格好だったからこんなの食べさせられないっ! て思ってたんだけど、そしたらおにいちゃん、ぱくってつまみ食いしちゃって、そしたらラングドシャみたいで美味しいって!! うれしいよぉ~~! これって、完全に脈アリだよね!?』
『ん~・・・・・・』
『あ、そうそう。前におにいちゃんの部屋にこっそり入ったんだけど、おにいちゃんのイラスト帳を見つけたの!! そこにはイラストがびっしり描いてあったんだけど、特にスク水が多かったんだー、おにいちゃんってスク水フェチなのかな? 私が着たら興奮してくれるかな!?』
『んーーー』
『それからね、今週末テスト終わりだから、どこか行きたいって行ったらおにいちゃんが行きたいところがあったら車で連れてくぞ。だってーー!!! こんなのっ!! もう完全にデートだよね!! はぁ、もし手を繋いでくれたりなんてしちゃったら・・・・・・。ずっと離さないからねぇー!! そして、顔を赤らめるの。きゃーー!!!!』
『な、夏芽ぇ?』
『がっつきたくなるのは分かる。でも、いきなりBはダメっ!!! デズモンド・モリスさんも言ってたでしょ! カップルの12段階っ! 手を手に、の後は腕を肩に、その次は腕を腰に、それから、キスして、ペッティングで・・・・・・それからそれからっ!!』
『と、とりあえず、ここ人おるから・・・・・・。とりあえず黙ろか・・・・・・』
『おにいちゃん・・・・・・』
辺りを見回すと、カップルが大勢歩いていた。全く腹立たしい、不健全な野郎どもだ。体の関係しか求めていない獣だ。私はそんな恋愛を許さない。
私は家族内、男同士女同士の付き合い以外は全部不健全だと思う。特に男、他の女を見るときの下心丸出しな感じがキライだし、よく教室で下品な話をしてるのが本当にイライラする。キモい、ほんとにキモい。それに比べて、同性同士や血の繋がりがある人同士の恋愛はなんて素晴らしいことか!!
知ってる? 家族の人の匂いって臭く感じるらしいの。それは、近親相姦を防ぐための本能らしいんだけど、それを超えた恋愛って、とっても素敵で純粋だと思わないっ!?
『あんなぁ、おにいちゃんのことが好きなんはよう分かるねんけど、聞かされるこっちの身にもなってくれへん?』
『なんで? みんな恋バナとか好きじゃん!』
『いや、せやねんけど・・・・・・』
『あー、あれだ。流行りの曲について話し合ってるところに、アニメのOPの話で入っていくと距離を置かれる的なこと?』
『そうやな』
『だとしたら、悪いのはそっちだよね! 自分の専門外だからって距離を置くのは、人としていけないことだよ!』
『いや、あんたやってカップル嫌いやんか・・・・・・』
『私のはキライ、みんなのは未知を忌避したがってるだけでしょ!?』
『哲学かいな』
『恋する乙女はみんな哲学者たりえるのだよ!』
・・・・・・っ!?
『くんくん・・・・・・』
『ど、どしたんや?』
『おにいちゃんの匂い・・・・・・。あ! あそこ!!』
100mほど先、あれは間違いなく帰宅中のおにいちゃん!
『え? どこや?』
『じゃ、私は偶然を装って一緒に帰るので、ここでバイバイ』
『は、はぁ・・・・・・』
呆れ返る友達、五百井羽奏ちゃんをよそ目に少し回り道して、急いでおにいちゃんの元へと走る。きっと、メロスもここまで必死にはなれなかったに違いない。
商店街を回って、上手いことおにいちゃんの横へとたどり着く。
『あ! おにいちゃん!』
『お、夏芽、学校帰りか?』
『そうそう、次の電車いつ?』
『えーっと、12分だな。あと4分』
『りょうかーい』
ふふふ、これで一緒に帰ることは確定だ。これで最高の帰り道になったぞ!
おにいちゃんと歩くこと2分、駅のホームに着くと、2人で電車を待っていた。
話は切り出さない、私はスマホをいじってるふりをして、おにいちゃんをチラチラと見る。こうして、無言の時間を一緒に過ごせるのは恋人同士に大切だって、前にクラスの誰かが言ってたしね。
『おう、夏樹じゃねーか!』
ようやく乗る電車が来たかと思うと、中から出てきた人がおにいちゃんに話しかける。
『あ、久しぶりです、先輩。これは妹です、あはは、でかいでしょう?』
そういうと、手のひらを使って私とおにいちゃんの身長が近いことをアピールする。
『じゃな! おつかれ!』
『はい!』
おにいちゃんが男の先輩? を見送ると2人で電車に乗り込む。結構混んでて、座るところが少ない。
『そこ空いてる、座れよ』
『いいよいいよ、おにいちゃん座って』
『そ、じゃ遠慮なく』
おにいちゃん優しい! でも、ここで素直に座っちゃだめ・・・・・・。ここで気が利くアピール返しをすれば、さらに好感度アップ!!
電車が発車すると、がたんと大きく揺れる。
電車の中は、うるさくて話が聞こえないから雑談はしない。それがお互いにとって心の平穏になるの。
それより、さっきのおにいちゃんの行動・・・・・・。私を彼女だと勘違いされないためにああ言ったんだよね。ということは、私はおにいちゃんにお似合いの女の子に見えるってこと!? ふふふ、やっぱり、おにいちゃんは私のこと好きなんだよ!
電車を降りて、自転車に乗って、そのまま家に着く。
『ただいまー!』
『ただいま』
今はお父さんとお母さんは旅行に行ってて家には2人だけ。はぁ、なにか間違いが起こったりしてもいいシチュエーションなのに・・・・・・。
もこもこパジャマでおにいちゃんのベッドに寝転がっちゃえばワンチャンある? うう、でもさすがにそこまで露骨なことしたら引かれるかなぁーっっ!!
おにいちゃんは家に変えるといつもお風呂に入る。私は、あえて歯磨きをしに行っておにいちゃんの着替えを見る。はぁ、そこまで筋肉がついてない普通の体・・・・・・。でも、これが16年間ずっと見てきた体なんだから、それが良かろうが悪かろうがなんてことない。ただ、愛おしいおにいちゃんの裸体があるだけ。
おにいちゃんは私のことを気にせずに服を脱ぐと、そのままお風呂に入っていった。
『わぁぁっ!?』
突然、浴槽の方からおにいちゃんの声がした。
『どうしたのっ!?』
急いで浴室の扉を開けると、なぜかお風呂にはきれいな女の人が入っていた。
『こら! 早くでて! おにいちゃん!!』
『う、うん・・・・・・』
おにいちゃんは面食らいながらも、赤くなった顔をタオルで隠しながら外に出ていった。
それより、今はお風呂にいるこの人だよ!
『あの! だれですか!?』
『・・・・・・私に名前なんてないわ』
『でたらめ言わないでください! なんでこの家にいるんですか! あなたは誰なんですか!!』
『・・・・・・。経緯を説明する必要があるわね』
『はい! そうしてください!』
『まず、私は幾多の世界を行き来できる存在・・・・・・なんてね、この世界に降りてこれたのは奇跡みたいなものなの』
『だから、でたらめ言わないでください!!! あと、早くお風呂から出てください!!』
『お風呂から出る。それは出来ない相談ね』
『なんで!?』
『私は、お風呂の中じゃないと落ち着かないの。外に出たら発狂するけれど、あなたにそれを止められる?』
『は?』
『冗談よ、ただお風呂が好きなだけ』
『もう・・・・・・めちゃくちゃだこの人・・・・・・』
もう何を言ってもダメだと悟った。電波ゆんゆんな電波女は無視するに限る・・・・・・。
私は、諦めて浴室を出た。
・・・・・・。
『ってぇぇ!! 貴方が出ないと私もおにいちゃんもお風呂に入れないじゃないですかぁっ!!!』
『あら、私は気にしないけれど』
『私が気にするんです!! おにいちゃんに近寄らないでください! 万が一にでも純粋なおにいちゃんにやましい気持ちが芽生えちゃったらどうするんですか!! 責任取れるんですか!? おにいちゃんを記憶喪失にできるひみつ道具でも出してくれないと私許しませんよ!!』
『出来ないこともない、かもしれないけどね』
『んぐぐぐぐ・・・・・・・・・』
こういう状態を最近辞書で見た。問禅答だ。 ※禅問答です
全く言うことを聞かない謎の女に地団駄を踏んでいると。
『だっ! だれだぁ!?』
またもやおにいちゃんの声がした。
なにかあったの!? だとしたら、こんな女に付き合ってる暇はない!!
私は急いで脱衣所を抜けて、声がしたリビングへと走る。
『大丈夫ですって! 別に僕達は危害を加えるつもりはないんです!』
『そうですわ! 人助けだと思って来てくださいな!!』
リビングで見たのは、変な2人組がおにいちゃんを捕まえている場面だった。片方は女の姿なのに男の声だし、もう1人は学校帰りのギャルみたいな格好をしてる。
『ちょっと!! そこの人!! おにいちゃんになにしてんの!!』
『お・・・・・・。おにいちゃん?』
『あら、妹がいるんですの?』
『夏芽! 逃げろっ!!』
『いや、だから、僕達は別に危害を加えるつもりじゃ・・・・・・』
『そんな変な格好をした人の言う事を信じるわけないでしょーーが!!』
『へ、変な格好!?』
なんだ、なんでこんなに緊張感がないんだ!? この人達、おにいちゃんを連れ去ろうとしていることには違いないのに!!
『ちゃんと説明して!!』
『あ、うん。えっとね、要するに君のおにいちゃんはすごく重要人物なんだ。この人がいないと、色々と不都合で・・・・・・』
『もう! なんでそんなに回りくどい説明なの!? 単刀直入に話して!!』
『ねぇかりんさん。これって話してもいいの?』
『一応、問題ないはずですわ。この人が戻れば記憶も操作出来るはずですし』
『記憶を操作出来るなら、別に説明しなくてもいいんじゃ・・・・・・』
『それもそうですわね、それでは早く帰りましょうか。こういうのは一刻でも早く用事を終わらせるべきでしてよ』
この人達、さっきの女の人とおんなじで私には意味のわからないことばかり話してる。言葉は同じはずなのに、感性が違うというか、世界が違うというか・・・・・・。
変な2人組は、おにいちゃんの両手をがしっと掴むと・・・・・・。
突然、浮き始めた。
『え、えぇー!? 飛んでるっ!? この2人飛んでるよっ!? で、俺も浮いてるっ!?』
『かりんさん、ほんとに記憶は消せるんだよね・・・・・・?』
『大丈夫なはずですわ。多分』
私は呆気に取られて、声を出すことも出来なかった。
おにいちゃんを連れて、変な格好をした2人組はリビングの縁側から外に飛び出し、そのまま高く高くへ飛んでいき、そのまま見えなくなってしまった。
・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・。
『ね、ねぇ・・・・・・これ、夢?』
私は、膝をついて嗚咽混じりに呟いていた。
頬をつねってみても、やっぱり痛い。
『これって、どんな夢? ねぇ、ねぇ・・・・・・』
どうしようもなかった。
夢みたいなのに、夢じゃない。
どうすればいいのか、全くわからない。もっと、殺されたとか、事故にあったとかなら分かる。でも、おにいちゃんはまるでできの悪いアニメのように、伏線もなく、合理性もなく、理不尽にも超常的な現象とともに消えてしまった。
『ねぇ! だれか答えてよ!!』
『なっ、なぁ! どないしたん!? 今、なんか飛んでってったよな!?』
『・・・・・・誰お前』
『なんでや! あんたの友達、隣の家に引っ越してきて同じ高校に通う五百井羽奏や! 今日無惨にも駅前に1人置いていかれた五百井や!』
縁側からずかずか家の中に入ってくる友達。
『もう、今はそんな場合じゃないんだよぉ・・・・・・。おにいちゃんは空に飛んでいってしまったの、もう会えないかもしれないんだよぉ・・・・・・』
『はぁ? 何言っとんや?』
『こっちのセリフだよ!! どいつもこいつも意味不明なことしか話さなくってさぁ!!』
・・・・・・。どいつもこいつも?
そうだ、この意味不明な状況を、唯一分かる人がいるかもしれない!!
私は、再び、浴槽に戻った。彼女の言う通り、本当に湯船からは出られないみたいだ。
『おい、さだこ!!』
『さだこって何かしら』
『髪が長いからさだこだよ、名前を言わないから適当なあだ名をつけてやったんだよ!』
『それで? なにやらリビングのほうが騒がしかったようだけれど、なにかあったのかしら? そして、それについて私に話があるんじゃないかしら?』
『さっき、おにいちゃんが変な格好をした2人組に連れて行かれたの! それも空を飛んで・・・・・・。何か知ってるでしょ! おにいちゃんを助けるためにどうすればいいか教えて!!』
『ふふ、簡単な話よ。その人達はあなたたちより高次元の存在なの』
さっきは意味不明な言葉だとしか思っていなかったけれど、今は違う。一見荒唐無稽、だけどそれを信じるしか方法はないんだと思う。
『高次元って?』
『貴方がゲームをする時、ゲームの中の人物は3次元の貴方に操作されるでしょう? それと同じよ。そして、技術の発達でそのゲームの中の人物が今いる私たちと全く同じように思考し、行動できるようになったらどうなるかしら? それでも、3次元のあなたたちはゲームの中の人物を操作できるの』
『な、なんの話や? ゲーム?』
『五百井黙れ』
『ひどっ!?』
『あなたたちは、自分が現実世界に生きていると思っているだろうけど、実際はそうじゃないの。あくまで高次元の存在によって作り出された存在なのよ。でも、1人だけ例外があった。それが貴方のお兄さん。彼は本当は高次元の存在なのよ』
がらりと、足元が崩れるような気がした。
嘘だ、そんなわけない。おにいちゃんは生まれたときから私と一緒にいて、一緒に育って、寝食を共にして・・・・・・。今週だってテスト終わりに私とドライブデートするんだ。
『きっとお兄さんとしての記憶はすぐ消されるでしょうね。とは言っても、この世界は上位世界よりも遥かにゆっくり進むから、まだ間に合うかもしれないけれど』
あの人達、私たちの記憶を消すとも言ってた。でも、時間はまだあるみたいだ。
『うふふ、いつから彼があなたのおにいちゃんになったか、皆目検討もつかないわね。あなたは今朝生まれ、今までずっと一緒にいたのは偽りの記憶だったのかもしれない。でも実際は昨日かもしれないし、1年前かもしれないし、実はこの世界に生まれたときからずっと一緒にいたのは本当なのかも知れない』
『き、聞いたことあるで、世界五分前仮説ってやつや』
『そう考えたら、おにいさんへの未練も消えるんじゃないかしら』
『ひ、ひどいで! それがホントなんかは知らんけど、ほんまやったとしてもわざわざ言う事なかったやんか!』
『あら、わたしは親切で言ってあげてるのよ。こうしたら、お兄さんのこともきっぱり諦められるでしょう?』
おにいちゃんとの思い出が、偽物?
理想の世界のイミテーション。
・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・。
『・・・・・・それが?』
『ん?』
『そんなの、関係ない。私は、ただただ、もうどうしようもないくらい。おにいちゃんが大好きなのよ!!』
『それが偽物の記憶だったとしても? お兄さんが自分とは違う存在だったとしても?』
『当たり前でしょーーーーが!!!!! 今でも、おにいちゃんとの妄想が止まらなくてニヤニヤ出来るし、この思いはだれがなんと言おうと本物!!! 偽物!? 知ったことか!!! 私は、おにいちゃんが好き! すきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすき!!!!!!!!!!!!!!!』
私は壊れたロボットのようにひたすらにスキを連呼した。
『こ、壊れてもうた・・・・・・』
『この世界が偽物なら、もう全部捨てたっていい! おにいちゃんとまた会うために、おにいちゃんと一緒にデートをするために!! 私はなんとしてでも上位世界とやらに行ってやるわ!!!!』
『で、出来るわけないやろ・・・・・・。そんな、今まで何億人も試して別の世界に行った人なんておらんのやで』
『でも、ここにいるでしょ!』
『あら、わたしも上位世界から来たってことには察しがついているみたいね』
『えぇ!? マジか!!』
『さぁ、あんたはどうやって来たの!? 水から自ら出れないくせして!!』
『いいわ、教えてあげる。でもその前に、新しい姿をデザインしてくれないかしら?』
『デザイン?』
『絵でいいわ。私に、なりたい姿を見せてくれたら、上位世界への扉を開いてあげる』
『そんなめちゃくちゃな・・・・・・』
『あ!? おにいちゃんのイラスト帳!!』
私は駆け足で階段を登り、スケッチブックを持って降りてきた。
『ほら、このへんのやつとかいいよねー』
『うわ、ホンマにスク水多いな』
『それじゃ、私はこれ! スク水で、八重歯が生えてて、ツインテールのロリ幼女!』
『性癖をこじれせすぎや・・・・・・』
『五百井はこれ! たこ焼きみたいな頭に爪楊枝が刺さってるやつ!』
『おい! 大阪のイメージだけで選んだやろ! 前も言うたけど、うちは京都生まれや! てか、なんかうちに似てへん!? いや、これ明らかにうちみて描いたやろ! キモっ!』
『京都生まれ、嘘だと思ってた・・・・・・。いけずとか、ぶぶ漬けとか言わないから・・・・・・』
『イマドキ言わんわ!』
浴槽につかっているさだこに、この2つのイラストを見せる。
『ほら! これ!』
『ちょ、うちに選ぶ権利はないんかっ!?』
『分かったわ』
彼女がそう言うと、どこからともなく2匹のクラゲが現れて、わたしたちの頭に乗った。
『うわっ! 刺される!』
『オワンクラゲよ、刺しはしないわ』
『にしてはデカない!?』
『いちいち疑問を口にしてたら、この世界でやっていけないわよ』
『そうは言うても・・・・・・』
言い終わる前だった。突然電流のようなしびれが私たちを襲った。
『ほらららら! やっばりりりり! 毒あるややややないかーー!!!』
しばらく続いたが、それが終わるとぴったりと痛みが止んだ。
違和感はすぐに感じた。目線が低いのだ。
自分の身体を触ってみると、ようやく事態が飲み込めてきた。
『うわっ!? 体がほんまにさっきの絵みたいな姿になってもとるで!?』
『その姿なら、空も飛べるわ』
よく見ると、さだこも姿を変えていた。クラゲをイメージしたようなファッションだ。そして、浴槽から出ていた。きっと、この姿なら問題ないということなんだろう。
『じゃあ、早速空へ飛べばいいんだね!?』
『ちょっと待って!? うちも行くん!? うちはアンタと違ってこの世界に未練たらたらやで!?』
『お願い! 五百井! 友達でしょ! 手伝って!』
『もう・・・・・・こういうときだけ友達扱いかいな・・・・・・。ほんまいけずやで』
嫌々、のようだったけれど、五百井も乗ってくれたみたいだ。
『ほいで、どこ行けばええんや?』
『私が先導するわ。一緒に空を飛んでいけばいい』
『どうやって空を飛べばええねん!!』
『自転車も、乗る前はやり方が分からないものよ。じきに慣れるわ』
『おおっ! すごいよ! ほんとに浮いてる!』
『飲み込み早いねん!』
しばらくすると、五百井も空を安定して飛べるようになった。
『それじゃ行くわよ』
『お願いします!』
『安全運転でな・・・・・・? それから、門限は過ぎへんように』
『それじゃ、出発よ』
『おーーう!!』
中庭に出て、さだこに合わせる形で大地を蹴り、そのまま空を飛ぶ。
こうして、私はおにいちゃんを取り戻すべく、長い長い旅へ出たのだった。




