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20話 はるはるとつき、

 AITuberの2人と合流して、その後はショップ巡りをした。なんとか2つのショップを見つけて、合計6個ものレベルアッパーを手に入れる。


 嬉しいことに、レベルアッパーの購入に必要な金額の高騰も僕達とAITuber達で違うおかげで、上限数まで購入してもまだ余裕がある。


 『どうっ!? 役に立つでしょっ!?』


 『うん、最高だよ。これで勝てるかも知れないっ』


 『これだけのレベル差を見せれば、ツクヨミさんも改心するかも知れませんね・・・・・・。あ! そうです! 私がレベルアップすればその分たくさんのダメージを受け続けることが出来るのではないでしょうかぁっ!!』


 乱心したワールが僕の手にあるレベルアッパーを奪おうとしたので反射的に蹴り飛ばしてしまった。お腹にクリーンヒットして、その場にうずくまる。


 『わっ! ごめんっ!』


 『ぐふ・・・・・・。ぐふふふふ・・・・・・いい蹴りですぅ・・・・・・』


 よだれを垂らしていかにも満足げな顔で上気する。


 『なにやってんの!! バカワール!』


 『純真なフリして案外バイオレンス・・・・・・。あぁ、そういう人からのお仕置きも堪えますぅ・・・・・・』


 ランも腹を立てるが手を出さない。手を出したらそれがワールにとってのご褒美になってしまうからだ。


 裏表のないいい子たちなんだろうけど、いかんせん根っこの部分からネジ曲がってるんだよな。


 その後も探索を続けていると、ハルハルを見つけた。


 『んなっ!? お前どうしたんだ!?』


 『大丈夫! みんな味方だよ!』


 『味方ぁ!?』


 ハルハルは警戒しながらも、僕の説明を聞いて納得したようだった。


 『とか言って、油断したところで後ろからバサリ、なんてことねぇだろうな』


 『そんなことしたらみんなに嫌われちゃうよ!! 褒めてもらえないでしょ!!』


 『私はバサリとするより、される方が好きなのでぇ・・・・・・』


 『ね? 信頼できるでしょ?』


 『とはいってもなぁ・・・・・・』


 未だ納得しかねているハルハルだったが、大人しく僕達に同行してくれることになった。


 そしてハルハルが見つけたショップと、僕達が見つけたハルハルの行ってないショップを共有すると、レベルアッパーを追加で4つ入手し、ハルハルが持っていたものと足して、合計12個まで増えた。


 『おいおい・・・・・・レベルの歴代最高記録は11だよな・・・・・・?』


 『それが、今日一気に2レベル更新されるってこと? というか、本来のレベル上限が1チームで入手できる12個だから、それを超えるってことだよね?』


 『あっ! ハルハルっちー! うどんー! って!? なんか混じってるんですけどー!?』


 そんな話をしていると、かりんさんまで現れた!


 『りんす! ショップは見つけたか!?』


 『え? えーと、薔薇庭園のとこでしょー? あとハサミとか知らないのが色々置いてあるガラスの小屋のとこにあった的な』


 『ガーデンルームか! そこはまだ見つけてない! 早く案内してくれ!!』


 『も、もち! だけど、走りながらでいいから説明してよねっ!?』


 そういうわけで、かりんさん先導で僕らは走った。道中ここまでの経緯を説明すると、『えーまじ!? めっちゃウケるんですけど!!』と、疑うことなく受け入れた。


 『あーしの勘が、2人は嘘ついてないって言ってんかんね!』


 『だったらなおさら信頼できるね』


 そして、かりんさんの言っていたガーデンルームにたどり着く。


 『流石にスパチャが足りないか・・・・・・』


 AITuber2人組は1つ、僕達は追加で1つのレベルアッパーを買うことが出来た。


 流石Sランク昇格戦。歴史の戦いに貢献しようと凄まじい額のスパチャが飛んできている。だけど、それでも流石に今のレベルアッパーの価格、20億4800万円には届かなかった。


 『レベルの最高記録が11ってことは、僕達も同じところまで来たってことだね』


 敵の妨害がなかったのも大きいが、最終的なチーム内でのレベルアッパー購入数は過去最高の試合に並んだ。これだけでも十分凄い、だけど、この勝負は勝てなきゃ意味がないんだ!


 AITuber2人組に買ってもらった分、かりんさんが買った分を合わせると、合計16個。


 『うわー!! すごいっ! すごいですっ!! これもぜーんぶ! 徒党を組もうって提案した私のおかげですよねっ!? 褒めてください褒めてくださいー!!』


 『マジ感謝―って感じ! 歴史を動かした大偉人だよねーっ!! ランらんー!!』


 『みゅ~~っっ!!』


 『なんだか、ランばっかりいいとこを持っていってる気がするのですが・・・・・・これはこれでイイかも・・・・・・』


 『ところで、レベルを13以上に上げることって出来るの? 普通起こらないよね? こんなこと』


 『ぴんぽんぱんぽーん!! どもどもっすー! 実況兼アナウンスのしろねこっすー!』


 僕らが話していると、突然どこからともなくしろねこの声が聞こえてきた。


 『答えましょう、実は13レベル以上の強化もしっかり実装されてるっす!! 心置きなく全ブッパするもよし、安定策で2人で分けるもよし、好きな方法でやってほしいっす! ぽんぱんぽんぴーん!』


 『だって、どうする?』


 『私たちAITuberはとりあえず外してもらって大丈夫ですよー。ぜひぜひ使っちゃってくださいっ!』


 『僕も、スキルを考えると1レベルが安定、りんすかハルハルのどちらかだよね』


 『あーしはぶっちゃけ? いっつも攻撃をハルハルに任せてたからレベル上げとかあんましたことないし。だったら、ハルハル安定じゃね? 的な!』


 『・・・・・・そうだな、ツクヨミには借りもある、俺が倒してやるぜ』


 『2人はそれでいいの? ラン、ワール』


 『なんていうか、ツクヨミにつくより、みんなについたほうが褒めてもらえるし、こっちに鞍替えすることにした!』


 『私は、なんで裏切ったんだーって罵られたいので、私もこっちでいいです・・・・・・ふひひぃ・・・・・・』


 『よし、ハルハル!! レベルアッパー16個、ごくっといっちゃえ!』


 『おう!』


 そう言うと、ハルハルは手持ちのレベルアッパーを全て飲み込む。


 『す、すげぇ! 力がぐんぐん湧いてくる!』


 レベルが1つ1つ上がるごとに、ハルハルのハンマーが変化していく。そして、レベル17で止まったときの、ハンマーの形状はっ!!


 『・・・・・・ぴこはん?』


 ぴこはん、レベル1の武器だ。


 『いや・・・・・・すごい力が溢れてるぞ・・・・・・?』


 ハルハルが試しにぴこはんを振ってみると。


 どごぉぉぉんっっっっっ!!


 なんと、小屋の壁が全て崩れ去った。


 『や、やべぇ強ぇぇ』


 『あ、あの・・・・・・私をそれで殴ってくれませんか・・・・・・? 消し飛ぶって、どんな気持ちなんでしょうっ!!』


 『痛みもないだろうよ。つまり、このぴこはんはただのぴこはんじゃねえ。ぴこはんMark17ってとこか!』


 『『『『おぉー!!!』』』』


 ぴこはんMark17を手に入れたハルハルは、とても勇ましく、頼りになる背中だった。


 そして、僕達はもう出来る準備を全てやりきった。そういうわけで、ツクヨミを探すべく、ひたすらに植物園中を歩き回った。


 色んな場所を練り歩き、熱帯エリアでようやく彼女を見つけた。


 『み、見つけたぞっ!』


 『はぁ、私の植物観察を邪魔するとは、いい度胸してるね』


 『・・・・・・このくだり、どこかで見覚えが・・・・・・』


 何やら意味深長なことをハルハルが呟いていたが、今はそれよりも、眼の前のツクヨミだ。


 『私、アンスリウムが花の中で一番好き。他の花みたいにすぐにしおれないし、このなんともいえない感触が、本当に好きなの』


 『そうかよ』


 『ところで、いつの間に2人はそっちの味方になったわけ?』


 『ツクヨミがわたしたちを除け者にするからです! 痛い目にあってもらいますよ!』


 『裏切ったのかぁー虫けらどもめぇーっ! って、罵ってくれてもいいんですよ? ふひひ』


 『ふーん、そのほうがいいね』


 『『・・・・・・え?』』


 『やっぱり、人間は1人で歩くものさ! 腕を振れば誰かに当たる、こんな狭い世の中じゃあだれかと肩を並べて歩くなんて無理な話なんだよぉっ!!』


 急に口調を荒げるツクヨミに、僕らは警戒姿勢に入った。


 『落ち着いてください、ツクヨミのレベルは1です』


 『えっ!? そうなの!?』


 『ゲロ甘じゃーん!』


 『だから、私たちは最後までレベルアッパーを買えたわけなんですが・・・・・・。彼女のスパチャ額は・・・・・・0です』


 『0って、ええ!?』


 『バトル前にツクヨミが言ったんです、私がキライなら見捨てろ、私が好きならスパチャを送るなって。あくまでも、どこまでも1人で戦うつもりみたいなの、ツクヨミったら』


 『そんな無茶な・・・・・・』


 『誰かに与えられる必要なんてないっ! 私はただ1人で、他人から奪って生きてやる!!』


 そう言うと、突然、ツクヨミが短剣をブーメランに変形させ、天井に投げた。


 『何っ!?』


 彼女が投げたブーメランは天井に当たり、一部が割れる。そこからヒビが広がり。


 天井が、落ちてきた。


 『バーカ!! 私がなんの下準備もしてなかったと思ってたのかぁ!? まんまと罠にはまりやがってよぉぉぉぉ!!』


 『お前ら! 俺の方に集まれっ!!』


 ツクヨミは、天井に細工をしていたんだ。あらかじめくり抜かれてい天井が落ちる。普通は考えつかないスケールの作戦だ。だが、それが実際に目の前で起こっている。


 僕らは急いでハルハルのそばに駆け寄る。しかし、ワールが逃げ遅れている。


 『バカ! 早くこっちに!!』


 『結構、痛そうですねっ!』


 ガラスが地面に叩きつけられる。ハルハルがハンマーで降り掛かってくるガラスの天井を破壊してくれたおかげで、僕達は無傷だったが。ワールは・・・・・・。


 『ふひぃ・・・・・・なかなか気持ちいい・・・・・・』


 ガラスに潰されてぺしゃんこになっているが、逆に元気になっているようだ。


 『『ふたごの絆黒』、私がスキルを使ってワールを一時的に無敵にしました』


 『おぉー!! ナイスだよ!!』


 『えへへぇ・・・・・・』


 『和んでる場合かっ! 来るぞっ!』


 土煙が舞う植物園に、1つの影。


 『くそっ、仕留めそこねたか』


 『仲間で協力するってことは、素晴らしいことなのっ! ツクヨミはそれを疎かにしたからピンチになってるんですよっ!!』


 『えぇ~? いつ私がピンチになったのぉ~?』


 そう言われて気付いた、彼女の武器がないっ!


 『後ろだ! みんなっ!』


 遅かった、防ぐ間もなく僕達は彼女が投げたブーメランに当たる。


 『よっしゃぁ! ワンヒットぉ!』


 『ワール! 今は無敵なんでしょ! ツクヨミを拘束して!』


 『了解ですぅっ!!』


 ワールは、すぐさまツクヨミのもとに走っていく。


 『脳みそ詰まってないんじゃねぇの!?』


 そういうと、ツクヨミはすぐさまワールを短剣で繰り返し斬りつける。


 『効きませんよ~! っていうか、気持ちいいくらいですぅっ!』


 『はい、これでいっちょあがり』


 僕らは彼女の能力を少し誤解していた。彼女の攻撃にHPも無敵属性も関係ない。


 『あ、あれ・・・・・・? レベルが0になってますぅ・・・・・・』


 白野ワール、ダウン。


 『はい! これでレベル2!』


 『ワール!!』


 『そう! お前らの蟻より小さい脳みそのためにもう一回説明してやるよ! 私の能力は5回攻撃すれば相手のレベルを奪うことが出来る。そして、レベル1のときにレベルを奪われた相手はダウンする!』


 『スキルの無敵効果も効かないの!? みなさん・・・・・・ごめんなさい、私の判断ミスで・・・・・・』


 『いや、大丈夫だよ。ワールには悪いけど、ツクヨミのスキルがどれだけ強力か分かった』


 『うどんさん・・・・・・』


 『関係ない! だったら、レベル17の俺が前に出ればいいだけだっ!』


 そう言って、ハルハルはツクヨミの懐に入る。


 ハルハルの強力な攻撃が、全く当たらない。


 『おい! どうしたぁ!? もしかして、日和ってんのかぁ!?』


 一体、この期に及んで何に日和るっていうんだよ。ツクヨミの口からでまかせだ。だけど、なんだ、本当にハルハルが攻撃をためらっているようにも見える。


 『・・・・・・一時休戦だ』


 『・・・・・・っはぁ!?』


 ハルハルの突然の一時休戦要求に、お互いが攻撃をやめる。


 僕達はあまりに突然な提案に、思考がフリーズする。僕はかりんさんの目を見る、かりんさんは最初呆気に取られていたようだったけれど、突然真面目な顔つきに変わる。僕も、全くこの状況を理解できていないけれど、ハルハルを信じて見守る。


 『1つだけ確認したいことがある。それがはっきりしないと、俺はちゃんと戦えない』


 『はぁ、なんでそれを私に聞くかな。私が聞くと思う?』


 『お前、ホリィの転生先だろ』


 !?


 突然飛び出したその言葉は、完全に意表を突かれた。


 『ゲロやば!? マジで!?』


 ホリィの転生先、つまり、小指を切り落として逃走中の律帆・・・・・・ってことか!?


 『意味わかんねぇこと、言ってんじゃねえよ!』


 『じゃあ、違うんだな!?』


 『違うに決まってんだろ!!』


 『じゃあ、指切りげんまんだ』


 『は?』


 ハルハルは、小指を差し出す。


 『あぁ、分かったよ! やればいいんだろ!』


 そういって、右手どうしで指切りげんまんをしようとしたところで、ハルハルは手を変え、左手を差し出した。


 『・・・・・・どうした、左手だと指切りげんまん出来ないのか?』


 『・・・・・・』


 『一気にしおらしくなったな』


 観念して、ツクヨミも左手の小指を差し出す。ハルハルは、少し強引気味に指切りげんまんをする。


 『指切りげんまん、嘘ついたら針千本飲ます』


 『指切った』


 一瞬の出来事だった。ツクヨミは、右手に握った短剣でハルハルの小指を斬りつけた。


 『ツクヨミだっ! 小指は動かなかった! こいつが、ツクヨミがっ! ホリィだ!』


 『くそっ! なんでばらすかなぁっ!?』


 ツクヨミは素早くハルハルに攻撃すると、レベルを1つ奪った。これで、ハルハルはレベル16、ツクヨミのレベルは3になる。


 『倒すわけにはいかないっ! 時間を稼げっ!!』


 『なっ!? なんで!?』


 ・・・・・・。


 ・・・・・・・・・・・・。


 このバトルの1ヶ月ほど前、晴人はとある来訪者に出会った。


 「はじめまして、咲也です」


 「誰だお前」


 「律帆ちゃんに薬を渡した人、といえば分かるかな・・・・・・」


 俺は、すぐに咲也と名乗る眼の前の男を殴った。


 「嘘なら殴られるだけの嘘をついたってことだ、本当ならそれだけのことをしたってことだ」


 「聞いてほしい。僕は、ただ正義のために、困る人達のために戦っているんだ! 律帆ちゃんには、協力してもらっていた」


 「協力!? その結果どうなったか知ってるんだろ!?」


 「あぁ、だから償いに来た。僕達は今、律帆ちゃんを全力で探しているよ」


 「ってことは、咲也さんも律帆の場所は知らないのか?」


 「そうなんだ、しかし、今のところ全くこれと言った情報は手に入っていなくてね」


 腹立たしい、眼の前のやつが律帆をおかしくしたくせに、今更になって、正義面して俺の眼の前に現れるなんて。


 「そこで、これを渡すよ」


 「なんだこれ?」


 「これは、逆探知装置だ。以前の戦いで使用したものなんだけどね、これを使えば、バトル相手の位置情報を見つけることが出来るんだ。元々通話相手しか逆探知出来なかったんだけど、なんとか改善して、ここまでバージョンアップすることが出来た。時間がかかりすぎたのが玉に瑕だけどね。これを君のフルダイブマシンに取り付けてほしい」


 「・・・・・・あぁ、分かったよ。で、律帆を見つけたら、お前はどうするんだ。また律帆を使って身の丈に会わない仕事をやらせるのか?」


 「いや、僕達はあの薬の製造をやめたんだ。悔しいけど、僕達の手に扱える代物じゃなかった。これからはまた別の活動をするよ、それも、律帆ちゃんに頼らずにね」


 「・・・・・・信じる、しかねぇよな」


 「ありがとう。そして、話の続きなんだけど、もし対戦相手が律帆ちゃんだと分かったら戦いを長引かせて律帆ちゃんをその場に留まらせてほしい。逆探知には大して時間はかからないが、どこにいるかわからない以上、確保まで時間がかかるからね。一応、各都道府県にそれぞれ1人ずつ団員を配置しているけれど」


 「分かった、そこは俺達子供には出来ない仕事だ。大人に任せる」


 「・・・・・・ありがとう」


 咲也は、目を赤くしていた。俺には全く彼の気持ちがわからないが、大人も子どもと同じように、間違えて、悲しむものなんだと知った。

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