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14話 時計仕掛けのダイアリー -戦いの幕が開ける時- 前編

 これで、勝ったほうがAランクに昇格だ。


 僕は、いつものバーチャル会場に立っていた。


 『今日も実況はわたし、黒部ランですっ!! 今日も頑張るので、応援してくださーいっ!!』


 『いつも通り、喉の調子が悪いくろねこに変わって黒部ランが代打っす! というわけで、今日の試合はAランク昇格戦!!』


 『Aランクまで上がったら、後はSランクまでの秒読み! そう考えると、かなーり重要な試合ですねー!』


 『言うまでもないっすね! それじゃ、後がつっかえてるので、早速選手の紹介っす!』


 『ネクステ20期生VSもざいぶ6期生! ネクステ20期生は超人気アイドルふれあちゃんと、最弱の御園生みみのコンビが必見ですね!』


 『サチウスも忘れちゃいけないっすよー!』


 『もざいぶ6期生は私を倒した憎き相手・・・・・・。でーすがっ! そんな過去は水に流しましょー! 私は懐が深いのでっ! 偉い子なのでっ!』


 『目下トレンドVTuber道を爆走中、バトルでも大活躍の締野うどんに注目が集まるっすねー。りんすとハルハルも強いっす!』


 『今日の試合会場はお城! 狭い分戦略性があるステージですよー!』


 『『バトル開始―っ!!』』


 僕の視界はあっというまに切り替わり、気づくと洋風なお城になっていた。


 『よぉっし、頑張るぞー!』


 今いるのは・・・・・・。暗い、地下かな? とりあえず階段でどんどん登っていくぞ! こういうのは高い場所のほうが有利だって聞いたことあるし!


 僕は、近くにあったドアから中に入り、上へ上へと登っていく。


 2階を通過しようとした時、なにやら物音が廊下の方から聞こえてきたので、足音を殺しながらこっそりと近づいて聞き耳を立てる。


 『無理です無理です!! いつもどおり私は隠れてるので、アイ・・・・・・じゃなかった、ふれあさんが倒してくださいよ!!』


 『でも、協力しないと勝てないよ! じゃあ、レベルアッパーをさっちゃんにあげるから、頑張って攻撃して!』


 『嫌です嫌です!! ほら! ガガりんも「そうだそうだ」と言ってます!!』


 『・・・・・・』


 声の聞こえる方をこっそり覗いてみると、ふれあちゃんと頭がハニートーストのVTuber、サチウスが言い争いをしていた。


 サチウスはいわゆる異形頭ジャンルのVTuberで、顔はなく、頭のアイスクリームとミントが乗った立方体のハニートーストがなんとも美味しそうな人だ。そして、もうひとつ大きな特徴は彼女が持ってる謎の球体。名はガガりん、不気味な顔が描かれている鉄球だ。もちろん生きてるわけではないのだが、サチウスはいつもガガりんとお話をしてる。


 知っているのはこれくらい、確かお菓子作りで有名でもあるらしいけど、そこまでは詳しく知らない。多分食通のスミレさんに聞いたら色々教えてくれると思うけど・・・・・・。


 『そんな事言わないでよー! Aランクに上がるんだったら、協力しないと勝てないってばー!』


 『脅迫ですかっ!? 私がキライだからっ!?』


 『なんでそうなるのー!!』


 『うぅ、私なんて、お菓子作りしかぁっっ!』


 『え!? 危ないよ!!』


 サチウスは頭を抱えながら窓から飛び降りた。僕も急いで窓の外を見に行くと、中庭で痛みを耐えながら転げ回っている姿が目に入る。


 バカだ・・・・・・。正真正銘のバカだ・・・・・・。


 さて、今ここにはふれあちゃんしかいない。であれば、今ここで攻撃すれば有利か?


 しかし、ふれあちゃんのスキルが怖いところだ。あれは結構強いからな、ここまで勝ち進んできたのもふれあちゃんがいたからだ。ここは様子見して、ショップでレベルを上げて、仲間と合流してから倒すしかない。


 僕は引き続き、ショップを探しつつ上へ上へと登っていった。


 最上階、7階に行くと、そこにいたのはハルハルだった。


 『よかった! ここにいたんだね!』


 『バカと煙は高いところが好きだからな・・・・・・。それじゃ行くぞ』


 どういうことか問い詰めたい気持ちを抑えつつ、ハルハルに同行する。


 『・・・・・・あまりここで話すのも良くないかもだけど、りから始まる例の人がVTuberになってる可能性ってあると思う?』


 視聴者がいるから本当は控えるべき話題だけど、律帆ちゃんの行方を知るために今必要な情報だった。


 『あぁ、あると思う。前にやってたVTuberとしての自分が嫌だったからやり直したかった、って可能性もあるかもしれないしな』


 『あぁ~。確かに、あのキャラはね・・・・・・黒歴史になるかもね・・・・・・』


 ホリィの話だった。直接的なことは言ってないものの、かなり危ない発言ばかりしていたらしいけど、本人の人物像とは全く合致しない。結局、VTuberをやり直すためにあの芝居をうったんじゃないかと、僕は考えてる。


 だとしたら、今もVTuberをやってる?


 『最近はフルダイブマシンのレンタルをやってる店も増えてきた。色んな場所にあるから、そこをはしごしていけば可能だろうな』


 そうか、やっぱり可能ではあるんだね。


 『敵の中のだれかが怪しいと思うのか?』


 『2人とも違うと思うよ? でも、どこかで会ったこともあるような気がするんだ』


 『・・・・・・?』


 すみれさん特有の勘が僕にも身についたのか。僕は、一度どこかで律帆ちゃんと会ったことがある気がする。


 『だが、万が一にでも可能性があるのなら、確認する必要はある』


 『そうだね』


 ふれあちゃんが藍ちゃんなのは確定してるから、サチウスと御園生みみが律帆ちゃんじゃないかも件の小指を観察しながら戦う。途方もなく地味な方法だけど、0.1%でも可能性があるのならやる価値はある。


 僕らは城内を歩き、無事に2件のショップを発見し、そこで合計4つのレベルアッパーを購入。人気がついてくると特に何かをする必要はなく、普通にバトルの最中でも2万円くらいのスパチャがひっきりなしに飛んでくる。


 『・・・・・・気配がするな』


 『気配って?』


 『俺の勘だ。こっちだ!』


 ハルハルについていき、入った部屋は玉座の間だった。


 『おぉー! お姫様の気分になれるねぇ』


 『ここにいそうな気がするんだが・・・・・・』


 ハルハルの勘がどれだけ信用出来るかわからないけど、とりあえず部屋を確認することにした。


 きらびやかというよりは荘厳な雰囲気の場所だ。大理石で囲まれていて、RPGにありがち赤いカーペットなんかは敷かれていない。奥は段差になっていて、少し高いところに玉座がある。その後ろには巨大なフレスコ画が描かれている。


 『玉座に座ってみていい?』


 『勝手にしろよ』


 一度は座ってみたかったんだよねー! 玉座!


 僕は早速玉座に座ってみる。実際に座ってみると思いの外ふかふかしていて座り心地が良い。だけど、椅子の幅が広くて、肘掛けに腕が届かない。


 『体に合わせてオーダーメイドにすればいいのに。ぜったい不便だよ』


 その時、少し振動を感じた。


 『い、今なんか揺れなかった!?』


 『揺れてないぞ?』


 『いや今も揺れてるよ!! どくん、どくんって!!』


 『どくんどくん?』


 ま、まさか江戸川乱歩の人間椅子的なこと!? 僕はすぐに椅子を確かめた。でも、人が入れるスペースなんかないし・・・・・・。


 と、椅子の後ろを見た時だった。


 『きゃーーーーー!!!』


 『えぇぇぇーー!!!』


 悲鳴をあげつつも、微動だにしない小さな人影。


挿絵(By みてみん)


 『ひぃーー!!』


 間違いない、VTuberの御園生みみだ。


 『敵か!!』


 『お願いしますー!! 倒さないでくださいー!!』


 『いや、そういうわけにもいかないから・・・・・・』


 小動物のように縮こまり、涙目の丸い目を僕に向ける。


 『わたし・・・・・・。VTuberバトルなんてやりたくなかったんですー!! ただ科学系VTuberとしてみんなにサイエンスの面白さを教えたかっただけなのに、いつの間にかトレンドVTuber扱いになって、スカウトされて嫌々やらされてるんですー!!』


 『でも、その割にはAランクの昇格戦まで勝ち抜いてるんだな』


 『ふれあちゃんが上手く立ち回ってて、その分の芸術点で少ないバトル数でここまで来ました・・・・・・』


 『棄権は考えなかったの?』


 『うぅ・・・・・・はじめはみんなの足手まといになりたくなかったから頑張りました・・・・・・。でも、いざなんでも願いが叶う直前まで来ちゃったら・・・・・・。ぽっ』


 今の状況がまんざらでも無いのか、少し照れ顔になって笑いを隠せていない。


 『欲望が勝ってる!?』


 『わたし、CERNとかSpring-8みたいな量子加速器が欲しいんですー』


 『りょうしかそくき?』


 『放射光で小さいものを見たり、ヒッグス粒子を観測したりするのに使うやつだな。俺もそこまで詳しくはないが』


 『ハルハル博識っ! 僕は文系だからさっぱりだよ。で、それでどんな研究をしたいの?』


 『いや、世界最大の施設でギネスが欲しいんです!』


 『人として小さい!』


 『みみっちいな・・・・・・』


 『後生ですから・・・・・・。見逃してくださいぃー』


 『残念だが、こっちはもっと大切な願いがある、容赦はしないぞ!』


 『そんなぁー!!』


 ハルハルがハンマーで攻撃しようとした、次の瞬間だった。


 『それはっ、私がやるよ!!』


 ふれあちゃんの声!? だけど、どこにもいない・・・・・・。


 『ふれあのスキルかっ!!』


 『なんだってっ!?』


 僕らはすぐに御園生みみとの距離をとった。


 そう、ふれあちゃんのスキル。それは・・・・・・。


 『みみちゃんの代わりに私が戦うよっ!!』


動く体、口の動きは紛れもなくみみの物だが、その中身は・・・・・・


 『ふれあちゃん、参上!!』


 ふれあのスキル『ちょっと借りるね』は、味方と自由なタイミングで中身を入れ替えることが出来るスキル、交換した相手の武器やスキルも問題なく使うことが出来るが、レベルは中の人のレベルになる。スキルの発動は任意で、いつでも戻る事ができる。


 『なんでこのタイミングでっ!?』


 『分からない! が、強いぞ!』


 ハルハルはレベルアッパーを4つとも飲み込み、レベル5になる。


 『とおりゃっ!』


 『えいっ!!』


 ハルハルの攻撃に合わせ、僕もT字定規で攻撃する。しかし、ふれあは小さい体を活かして華麗に避ける。


 『にひひーっ! 煙幕っ!!』


 御園生ふれあが懐から出した丸底フラスコを地面に叩きつけると、突然真っ白な閃光が走る。


 『煙幕じゃないじゃんっ!! 目がぁ・・・・・・っ!!』


 ただの間違いなのか、煙幕と宣言することで目を離さないように仕向けたのか、とにかく僕らは完全に視力を失った。足音はそのまま部屋を出る。


 『くそっ!! どこに逃げた!?』


 しばらくして、目が見えるようになると、僕は手に持っていた道具をハルハルに見せた。


 『さっきの攻撃の時、足元にインクと液体のりを撒いたんだ、床を見ればどの方向に行ったかくらいは分かるはずだよ!』


 『よくやった!』


 逃げたということは相手が不利だったということ。ここで逃さなければ、仕留めることが出来るはず。


 僕らは廊下に出る。仕掛けが功を奏して地面にわずかながらインクの跡がある。コレを辿っていけばなんとかなるはずだ。インクの跡は階段に向かって続いている、走ってふれあちゃんに追いつく!


 3階まで降りたところで、足跡は階段から外れ、別の部屋に向かっていた。廊下にはスミレさんがいて、ドアを叩いていた。


 『りんす!! これで3人合流だねっ!』


 『あ! ふたりとも~。さっきふれあっちと戦ってたのに、急にどこかに逃げちゃって、追いつけなかったからとぼとぼ歩いてたら今度はみみっちが部屋の中に入っていった的な』


 要するに、ふれあは危険を察知して御園生と体を交換。御園生の体のふれあはこっちに戻ってきて御園生の無事を確認した後この部屋に隠れた、ということだ。


 『よし、ドアを壊すぞ!』


 ハルハルはハンマーで乱暴にドアを叩き、扉はバキっという音と共に割れる。


 『うわー、借金の取り立てみたいでウケる!』


 『どっちかというと打ちこわし? 米一揆みたい』


 開いたドアから煙が出てくる。部屋の中は煙でいっぱいだ。


 『なにこれ? ごほっ、ごほっ!』


 『これは・・・・・・小麦粉?』


 この部屋は食料庫みたいだ、袋に詰まった小麦粉が積み重ねられている。


 『・・・・・・まずいっ! お前ら出ろっっ!!』


 ハルハルが急に焦って叫んだかと思うと、ハンマーで僕ら2人を突き飛ばした。


 『痛ぁっ!?』


 『きゃぁっ!?』


 廊下の壁に叩きつけられた瞬間だった。


 部屋が爆発した。いや、正確には一瞬のうちに部屋全体が炎に包まれた。中にいたハルハルは炎に焼かれ、大きなダメージを受けた。

 

 ハルハル ダウン。

 

 無慈悲にハルハルのダウンを告げるアナウンスが流れるも、その火は付近に引火し、勢いを止めず、廊下まで火の手が迫ってくる。

 

 『ちょっと!? ワケ分かんない!!』

 

 『・・・・・・。そうか、粉塵爆発! 漫画で読んだことあるよ!』

 

 小麦粉を舞わせて、そこに火を点けたんだ! 流石サイエンス系VTuber! いや、あの時の中身はふれあちゃんか? それとも、またどこかで入れ替わってたのか・・・・・・っ?

 

 そんなことは今はどうでもいい、うちのエースであるハルハルがダウンしてしまった。あっけなかったが、あの時僕らを逃がしてくれなかったら一瞬のうちに全滅だった・・・・・・。

 

 『ゲロやばじゃん!! とにかく今は逃げなきゃ!』

 

 『そうは、問屋がおろさない・・・・・・。らしい』

 

 眼の前に立ちはだかるのは、サチウスだ。

 

 『りんす、今レベルは?』


 『まだ1だし・・・・・・。そっちは?』


 『1だよ、しかもハルハルがレベルアッパーを4つ使った』


 『ウケる』


 『ウケないよ!?』


 僕らが漫才のような掛け合いをしていると、サチウスは手元の鉄球に向かってぼそぼそとつぶやき始める。


 『うぅ、勝てるかな? ガガりん・・・・・・』


 『・・・・・・』


 『うん、やるしかないよね。私にはすっごく強いガガりんがついてるわけだし、勝てるよ。うん、2割3分で勝てるっ』


 謙虚だな!! しっかしサチウスが邪魔だ。しかも、火が迫ってきていて逃げ場がない、じりじりと背中が焦げていくようだ。


 バチバチと音を立て、火がゆっくりと僕らの方に。悩んでる時間すらもないのかっ!


 『どうすんのっ?』


 『窓から逃げるっ!』


 僕はスミレさんの手をとって、窓を開けて出るつもりだった。


 しかし、今いるのは4階、さらに、降りれるような屋根はなく。1階まで直接降りるほかない。


 『文房具なんかでなんとか出来る高さじゃないな・・・・・・』


 『くまベアに頼もうかと思ったけど、周りに柔らかそうな材質はないし・・・・・・』


 くまベアがソファーやらを元に生まれれば、きっとクッション代わりにも出来たんだろうけど・・・・・・。


 『さっき2階から飛び降りただけで死にかけたので、4階じゃすぐダウンしちゃうと思います。観念して、ガガりんの錆になってください!』


 火はどんどん広がる。


 『・・・・・・。なら、正面突破だ』


 僕は覚悟を決め、サチウスに向かって走り出す。


 『行けっ! ガガりん!』


 サチウスがガガりんをサッカーボールのように蹴り飛ばす!


 なんとか避け、T字定規を取り出して真っ向からサチウスを叩く。サチウスは微動だにせず、正面から攻撃を受ける。


 『効いて・・・・・・。ない?』


 僕は恐る恐るサチウスの顔を覗いた。


 『あばばばばばb・・・・・・』


 口から泡を吹いている。一歩引くと、そのままバタリと倒れ、じたばた暴れる。


 『いだいよぉぉ!! うぇーーん!!!!!!』


 『えー! なにそれ!! ゲロよわじゃーん!! ウケるーー!!』


 『だからお菓子作りだけやってたかったのにぃ・・・・・・。トレンドVTuberとかワケわかんないよぉーっ!! ガガりーん!!!』


 みみと同じで、トレンドVTuberにならず好きなことをしていたかったのか・・・・・・。


 『ちなみに、Sランクになったら何をお願いするつもりだったワケー?』


 『うぅ・・・・・・。学校の、同じ製菓学科の人気者に・・・・・・』


 『ちっっさ!!!』


 なんでも願いことが叶えられる、それこそ世界中で愛されるとか、天才になるとかそんなことだってお願いできたはずなのに、なんてささやかな願いなんだ・・・・・・。


 『お菓子作りで人望は得られないんですよぉ・・・・・・。みんなお菓子しか見てくれないんだぁっ!!』


 なるほど、パティシエをやりながら膨らんできた承認欲求が満たされないんだ。


 『またふれあちゃんのスキルが発動する前にとどめをささないと!!』


 『あのゲロやばスキルね、それじゃあーしのくまベアにやってもらうね!!』


 そして、廊下周りの木が空中に集まり、皮を被ってくまベアが生まれる。


 『あ、この城、木製なのは表面だけなんだ』


 くまベアが木を吸収して生まれたことで、岩やレンガが露出し、燃料を失った火は緩やかに消えていった。


 くまベアが攻撃の構えを取った瞬間だった。


 『時間稼ぎはしましたよぉーっ!! お願いふれあ様ぁーっ!!』


 『様つけはやめてよねっ! ふれあちゃん参上!!』


 さっきまでうつぶせだったサチウスが一転、跳ね跳んで仁王立ちを決めている。


 『ま、またか!!』


 『ゲロまずゲロやばーっ!?』


 サチウス、いや、ふれあちゃんがガガりんを蹴ると、ガガりんはスーパーボールのように跳ねて次々と壁を跳ね返して加速していく。鉄球だよな!? なんだその挙動はっ!!


 『くまベア! やっちゃって!!』


 くまベアはガガりんを難なくキャッチすると、すみれさんに手渡す。


 『そのくまさん、可愛いけどちょっと邪魔かなっ!』

 

 ふれあちゃんは、火のついた木をガーディアンに向かって蹴り飛ばした!


 『ゴワァァァ・・・・・・』


 一瞬のうちにくまベアに引火してしまう、本体が木なのもあってどんどん火が人がってくるが、スミレさんは急いでくまベアを引っ込めて元のキーホルダーに戻した。


 『きゅーう・・・・・・』


 ぬいぐるみが弱々しい声を出す。


 『ダメージは少ないけど、もう一回出すには時間がかかる感じ? ゲロやばー』


 『とりあえず逃げよう!』


 くまベアを使えるようになるまで時間を稼ぐ、ついでにレベルアッパーも買い足さないとレベルの差でもかなりピンチだ。


 ハルハルのダウン、レベルアッパーを1個も所持していない上に4つ失っている現状、厄介なふれあちゃんの能力。


 『そうそう、私ね、みみちゃんと協力してレベルを6まで上げたんだ! そして・・・・・・』


 ふれあちゃんは自分の体(サチウスの体)のポケットをまさぐると、錠剤を1つ取り出した。


 『やっぱり、さっちゃんは頑張ってくれてたんだね・・・・・・』


 そして、レベルアッパーをさらに1つ飲み込む。


 『これでレベル7!』


 彼女の笑顔とは裏腹に、圧倒的なオーラが僕達の足をすくませる。


 『・・・・・・なにそれ、強すぎじゃん?』


 『さすがに、勝てないかも』


 一応、僕だってスキルを持ってる。


 スキル名は覚醒。だけど、実はまだその発動条件が分かっていない。というのも、説明文なんかも用意されてなくて、スキルを確認すると覚醒という文字だけが確認できる。


 よく、分からない。なんで僕のスキルだけ説明文がないんだ? 初めての試合で、その場しのぎで作ったスキルだから?


 何故か、僕のスキルのことが脳内をよぎった。


 『とんでもなくピンチだけど、こういう時こそ隠された力の見せ所かもね』


 『どゆこと? イミフなんだけど』


 『覚醒だよ。僕のスキル、こういう大ピンチのときにこそ覚醒すべきなんじゃないの!?』


 その時だった。頭の中にビリリっと電流が走る。そして、見えなかったものがバチバチと繋がっていく。


 『・・・・・・っ! わ、分かったよ、僕のスキル!!』


 『え!? そんな急に!?』


 『とはいっても、まだ無理みたいだ。とにかくこの場は逃げる!!』

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