9話 はじめてのでびゅーせん
『ランク制度が出来てから更にアツいVTuberバトル!』
『現在のトップランカーはBランクのバースタジオ3期生! 2回のバトルでもうこんなところまで来てる化け物級の人気っす!!』
『今日の試合はもざいぶ6期生VSネクステ19期生!』
『前回の試合、もざいぶに突如参戦した謎のVTuberいちかりん。しかし、なんと初戦でキルされるという前代未聞の事態にっ! あれはビビったっす!』
『そして、今回いちかりんの代わりに参戦するVTuberは・・・・・・』
僕の出番だ。
仮想ステージの幕が上がる。
『またもやトレンドVTuberではない謎のVTuber、締野うどん!!』
『もざいぶ6期生、ハルハルの移籍、謎のVTuberといい、話題が尽きないっすねー!』
『まぁ、面白いからいいけど!』
そう、僕の新しい名前は締野うどん。昨日鍋を食べながら歌ってたら思いついた名前だ。
さすが特注の3Dモデル、僕の体によく馴染む。
しかもなんと、すみれさんが手続きを進めてくれたおかげで、スキルも武器もゲットした! これで、ちゃんと2人の役に立てるんだ、前回と違って完璧な姿、滾る。
『絶対勝つぞ、お前ら』
『どーしたの? ハルハル~。怒ってんのー?』
『早くSランクになるんだ。なって、願いを叶える』
『やる気ムンムン! ゲロいいね!』
りんすが僕の方を見る。
『うどんちゃんも、頑張ろね!』
『もちろん! どんなやつが相手でもぶっ倒すよ!』
『にひー!』
そして、反対側の幕が開き、相手の姿が現れる。
『幕を捲(幕)りまくるZE! 今日も超! 調(超)子良い!』
『えぇっ!? 幼女がいないっ!! 誰!? 私にこんな試合をセッティングした人ぉっ!!』
『くだらねー。幼女とか泣くだけでいじめがいないしね、強いのが相手だと嬉しいけど』
『はっ!? 幼女に縄跳びのなわで絞められて、スモックすーはーしながら足で踏まれるシチュ!? 萌える! けど、なんだか解釈違いーっ!! ぐわぁー! これが葛藤っ!!』
『OIOI、初っ端からぶちかますなYO! 私らまるで変態の編隊! 常識枠の私は勝つ、際立つ活躍最高なビート!』
・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・。
『やべぇーやつらだぁー!?』
開口一発、それしか出なかった。
『これでも今日は抑えめ的な!』
『まぁ、いつもよりかはマシだな』
『あれでっ!?』
中々のクレイジー集団だ。
敵の情報を整理しておこう。といっても、軽く調べただけだから名前とキャラくらいしか覚えてないけれど。
まず、あのラッパーみたいな小柄な子は雷舞ライム。YO、YOって言ってるからラッパーなのかな?
そして、あのお姉さんキャラは地垂木九子、先日バチャメンカードを眺めてたときにも出てきた名前だ。確か幼女愛好家で、幼女のためなら火の中水の中、ということらしい。
最後にあの目がまんまるな子、あれは佐渡島クリス。白野ワールがドMで、クリスはドSキャラだ。武器は鞭、好きなことは強い人を屈服させることらしい。
『てなわけで試合はじめるっすよー!』
『今回は・・・・・・ゴホゴホ・・・・・・』
『大丈夫っすか?』
『ランク制度のせいでスケジュールが密すぎて、仕事量がっ・・・・・・』
『喉をやられてるっす!?』
『社長~~! 休みをーっ!!』
『とっ、とにかく! 今回の試合の舞台は市街地っす! よーいスタートぉっ!!』
大丈夫か・・・・・・?
実況2人の心配もつかの間、体は試合会場に転送され、すぐに戦いに集中せざるを得なかった。
『よし・・・・・・頑張るぞ・・・・・・』
『DANA! 頑張らないと・・・・・・』
顔をピシャリと叩いて、走り始めようとした。
・・・・・・。
い、いるぅー!! 敵が後ろにぃーっ!!
『OH! 突然の遭遇! 展開的にはSo Good!』
『お・・・・・・おぉ? はじめまして! 僕は締野うどん!』
『わたしは雷舞ライム! 挨拶欠かさず! よろしいねぇ、よろしくねぇ!』
握りこぶしを突き出されたので、拳でグータッチをする。これであってるのか?
よくわからないけど、なんか拳を胸に叩きつけ、ハグをされた。歯を見せてニカっと笑っているところを見ると正解の動きだったっぽい?
眼の前にいるのは敵なのに、なぜだ、戦う雰囲気じゃないな・・・・・・。切り替え出来てないだけか・・・・・・?
『ライムさんはラッパーなの?』
『NoNo! ただのダジャレと韻踏みが好きな陽気ガールさ! ところで、Youの名前、さいっこうだね! シメのうどんなんて、なかなかイカしてるじゃんYo!』
『あはは、照れるなぁ』
僕もこの名前を思いついた時は「キタ!」と思ったし、こうやって褒められると嬉しいな。
『あははぁ、照れるですなぁ~』
『で、Doする? 戦うか、戦わないか』
『そりゃぁもちろん・・・・・・』
レベル上げしてないし、なにより誰とも合流してないし・・・・・・。
『戦わない・・・・・・』
『戦わないとだよね! いいNE! グッドでゴッドだね!』
『あ、いや、そうじゃなくてですね・・・・・・』
『ペットボトルを回して先行後攻きめよーか!』
『いやそれはダンスバトル・・・・・・』
『ボトルスピンしないの? それじゃ、背中合わせに立って、10数えたら』
『それはガンマン!』
『おぉーいいNE! ナイスなツッコミ! はんぱナイっスなー! うちには変なやつしかいないから、こういうボケはなかなか出来ないんだYo! HAHAHA!』
そろそろくどいな。
しかし、なんとかして逃げないとな・・・・・・。僕はまだ自分の戦い方も知らないんだ。
『なにやってんだっ!』
聞き覚えのある声、ハルハルだった。
『あっ! せんぱい!』
『せんぱい言うなっ! なにのんきにトークしてんだよ!』
『うーん、わたしとのトーク、やっトークとおトークかもYo?』
『やかましい! とくとくうるさい! 酒注ぎか!』
『おぉ! いいNE! 微妙なくだらなさが最&高!』
『レベル1同士ならこっちに分があるな、ここで先輩直々に倒してやるよ!』
そういえば、ハルハルってネクステ18期生だったっけ。ライムさん達はネクステ19期生、ハルハルさんが同じ事務所の先輩にあたるわけか・・・・・・。
『長考は禁止! 最高な戦士との1秒争うバトルを開始!』
ハルハルさんが戦ってる間に、僕も自分の能力を確認しないと!
僕の武器は文房具だ、昨日読んでた漫画の影響でかっこいいなと思って決めた。
市街地の壁に試し撃ちしてみる。飛んでけ、1m定規!
定規をイメージすると実体が現れる、これを飛ばすだけ!
ぱこーん!
確かにイメージ通りに放てたけど、なんか攻撃力低いな・・・・・・。
何発か連射してみる。色々試して分かったことは2つ、同時に出せる文房具は10個、同じ種類は2個まで。威力は固定、大きかろうが小さかろうが同じくらいの速度で飛んでいく、当たったら小学2年生男子の平手撃ちくらい痛い。
ハルハルが相手してる間、申し訳ないと思いつつ色々試していると、T字定規の2刀流がかなり威力強めなことに気づいた。リーチは60cm、1m定規ほどではないけど、重さに偏りがあるおかげでとても振りやすい。
遠距離攻撃、近距離戦、どちらもいけちゃうかなり強めな能力だ・・・・・・。とはいえ、遠距離攻撃は豆鉄砲くらいにしかならないけれど・・・・・・。
よし! 大体わかった! ハルハルに加勢するぞ!
と、戦っている2人の方を向くと、すでに戦いは終わっていた。
『出落ち要因で落ち着くMyポジション? 悲Cねぇ~』
ライム、ダウン。
『えぇっ!? 倒しちゃったの!? ハルハル!』
『まぁな、次行くぞ次』
『す、すごい・・・・・・』
『これくらい楽SHOWだっつーの』
『あ、喋り方移ってる』
『クソ! 変なやつと戦うからっ!』
しかし、早くも優勢だぞ。これなら、今回は勝てるかもしれない!
頼れるハルハルとともに、残る敵を倒すべく歩き出した。




