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7話 終ノ戦Remake

 3ヶ月前、例の事件が起きる前の話。


 「・・・・・・所詮誰も彼も、普通じゃない人間を排除したがるのよ」


 藍の家から抜け出す律帆、その手には会話内容を逆探知する機械があった。


 そのとき、律帆のBMIに連絡が入った。


 『律帆ちゃん、最後の戦いの前に言いたいことがある。君のお父さんのことだ』


 『い、いきなりなによ、見つかったの? パリにお菓子修行に行ったとかって聞いてたけど』


 『・・・・・・なぜ、君を選んだのか。とも繋がる話なんだ』


 ・・・・・・。


 ・・・・・・・・・・・・。


 私は、その話を聞いて、ぐらりと足元が傾いた。信頼できると思っていた全てが、次々と自分を裏切っていく。


 「だったら、信用できるのは、私だけよ」


 咲也に報告を済ませた後、律帆はAIに教わりながらフルダイブマシンの分解方法を確認し、そのまま分解に取り掛かる。深夜にこっそり家を抜け出し、分解したフルダイブマシンを近所の空き家に移動する。電気は通っていなかったが、前日に強力な発電機を買っておいたので問題ない。


 これはだれにも言っていないし、私の監視役は今逆探知で大忙しだ。つまり、このフルダイブマシンの移動は自分しか知らない、私は、この戦いが失敗しそうなら逃げる。


 ・・・・・・。


 ・・・・・・・・・・・・。


 そして、時は流れ、最後の戦いが始まった。


 順調そのものだったはずが、私が奥の手にしていたスキルはミリコに通用しなかった。


 やっぱりだ、他人の情報なんて信じられない。私は全て上手くやってたんだ。なのに、アイツらが最後にポカするから・・・・・・。


 『落ち着いて! ホリィちゃん!』


 『・・・・・・いい、もう終わりにしよう』


 『え・・・・・・?』


 アイカは何も理解できていない様子だった。


 『もういいの、キルして。私を』


 『なんで、そんなこと言うの・・・・・・?』


 『2度は言わないわ、私をキルして』


 『そんなの出来ないよ・・・・・・』


 『30秒以内に私をキルしないと、アイカをキルするから』


 『やだ・・・・・・やだよ!!』


 29、28・・・・・・。声に出してカウントを進める。


 『やばいデスよ・・・・・・! このままじゃ大変なことになるデス!!』


 『一体何がどうなってるのか・・・・・・っ!!』


 『18、17・・・・・・』


 『ねぇ! 落ち着いてよ! そんなに焦らなくたって大丈夫だよ!! やめてー!!』


 その時、現実世界の方では晴人が律帆の部屋の前にたどり着いていた。


 「やばい! あと15秒!!」


 部屋のドアを開け、フルダイブマシンの電源を切る。そうすればなんとかなる。


 はずだった。


 「なんで・・・・・・ないんだよ・・・・・・」


 度々修理に来ていたはずの部屋、そこは最低限の家具と律帆のコレクションしかない、普通の部屋だった。フルダイブマシンはそこにはなかった、跡形もなく。


 「なんでだよ!!」


 『6、5、4・・・・・・』


 『し、仕方ないデス!! やるデスよ!!』


 『アイカちゃんが出来ないんだったら!!』


 ミリコは銃の照準をホリィに合わせ、山田は斬りかかった。しかし。


 『だめっ!!』


 アイカがとっさの判断でホリィの前に出る。放たれた銃弾はアイカを打ち抜き、山田の攻撃は急所に当たってしまった。


 アイカ ダウン。


 『な、何やってるデスか!?』


 『だって・・・・・・。嫌だもん、こんなの・・・・・・』


 アイカは天井を仰ぎ見、続いてホリィの顔を見て呟く。


 『ねぇ、なんでそんなにつらそうな顔なの・・・・・・? ホントは嫌なんでしょ・・・・・・? 一緒に頑張ってきて、最後は自分からやめたいなんて・・・・・・突然言い出して』


 『・・・・・・』


 『そんなに急がなくていいんだよ? ゆっくり考えて、それでもだめだったら止めないけど、もっと話し合いたい。今のホリィちゃんはなにかに追われてるみたいだよ・・・・・・』


 『2、1、0』


 ホリィは斧を振り上げ、おろした。


 『えっ・・・・・・』


 ・・・・・・。


 振り下ろされた斧はアイカにトドメをさし、アイカは最後の言葉を残す間もなく粒子となって空気に消えていった。


 アイカ キルド。


 『はぁ、ほんとバカね。話し合おうってのは、自分の意見を相手に押し付けたい人間が言うことよ』


 長年の友達の夢を絶つ。そこには罪悪感もなく、ただ凪いだ水面のように冷たい表情のまま、山田たちを見る。


 『さて、2人は私をキルしてくれるのかしら・・・・・・?』


 『人質もいなくなってしまったデス・・・・・・。大人しくダウンで我慢しろデス・・・・・・』


 『・・・・・・それもそうね』


 私は斧を持ち上げ、息を吸って最後の演説を始めた。


 『世界は! 私を不要としている! 口では平等平等と宣っているが、現実はそうではない! 犯罪者を排斥するように、集団に不都合な人間は切り捨てられる! だのにッ! 世界は私に与えられた“都合のいい人間”になるための権利すら奪った! だから! 私はこの場を借りて、皆に問う! 普通とはなにか! 普通ではないものは悪なのか! 答えよう! 普通とはマジョリティに生み出された幻想だ! そして、普通でないものは悪である! 私は、飛べない鳥だ! 翼を授けられることもなく、地面に落ちてやがて朽ちるだろう! だが! 自分を憎まない! この世に生まれ落ちたことを後悔しない! いつまでも前向きに! 気高く! 止まることなく! 歩き続ける! この腕が朽ちようと、足が腐り落ちようと!』


 長いセリフに息を切らして、最後に呟いた。

 

 『私は、前向きに、この世界を去るわ』


 私は自分の斧で足、腕、腹を斬りつけ、自らダウンした。ダウンすると武器は消滅するので自滅は出来ないが。もういい、アイカという脅しの材料がいなくなった時点で私の負けだもの。


 『とんでもない人ですね・・・・・・』


 『一体なにが、ホリィを変えてしまったんデス・・・・・・』


 試合は、山田たちの勝利で終わった。しかし、アイカが仲間にキルされたこと、ホリィのこれまでの動きが注目され、ニュースで取り上げられるような事件として語り継がれた。


 ・・・・・・。


 ・・・・・・・・・・・・。


 「なんでこんなことになっちゃったんだろう・・・・・・」


 件の小指を警察に届けたところ、律帆のものと一致した。


 今でも捜索は続いているが、未だに有力な情報は見つからない。監視カメラも近年撤去され始めていて数が少なく、彼女を追う手がかりはなかった。


 「私ね、律帆ちゃんにキルされて、気づいたら自分の部屋に戻ってたんだ。戻ってきたことに気づいた後、すぐに律帆ちゃんの家に行ったのに、だれもいなかった。律帆ちゃんが心配なことしか考えられなかった。話すことも出来なかった」


 「その後、どっかの空き家で見つかったらしいな。騒音の通報があって、警察が駆けつけてみるとフルダイブマシンを壊してる律帆が見つかった。それから、律帆は自分の部屋にこもりきりになって、俺達と会うことを許してくれなかった」


 「お母さんも心配だから小指にチップを埋め込んだんだよね。律帆ちゃんのことを思って、誰になんと言われても・・・・・・」


 「なのに、律帆は俺達に会う体で兵庫に来て、ハサミで小指を切り落とし、そのまま逃亡中だ」


 ・・・・・・。


 ・・・・・・・・・・・・。


 「律帆ちゃん・・・・・・。お母さんが心配してるよ・・・・・・? 私たちもすっごく心配してる・・・・・・。早く戻ってきてよ・・・・・・」


 「・・・・・・でも俺達に出来ることはたかがしれてる。だから、俺達に出来ることはVTuberを続けることだ」


 「うん、そうだね」


 「ランクSになれば、Vector社が1つ願い事を叶えてくれるらしい。だから、俺はSランクになって、律帆を探してもらうんだ。あの大企業なら、警察が見つけられない律帆も見つけられるかもしれない」


 「私もだよ、最近出来たランク制度・・・・・・。私はレジェンドVTuberとしての目標のために頑張ってたけど、今となっては律帆ちゃんを探すためって理由が出来た。でも、律帆ちゃん・・・・・・私がレジェンドVTuberになるまでに、死んじゃったりしないよね!?」


 「・・・・・・信じよう。俺達は、友達だからな」

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