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3話 月詠

 観覧車が降り場についてすぐに僕たちは駆け出した。誰かに見つかる前に、攻撃される前にショップにいかないと。


 だけど、案外あっさりとショップまで走りきった。


 『入りますよ』


 『もち、いってら』


 恐る恐るショップと書かれた円形の空間に足を入れてみる。すると、購入できるアイテムが一覧になって表示される。


 一緒に手持ちのスパチャも表示されているのだが、なんと120万円も溜まっていた。


 『いつの間に・・・・・・』


 10万円で回復薬を買うとすぐに売り切れになった。当然だよね、いくらでも買えたらバトルが沼るし。


 で、レベルアッパーの値段を見てみると、まだ100万円のまま変動していなかった。ラッキー。ハルハルさんはショップをまだ見つけられていないのだろうか。とにかく迷わずに購入する。


 ショップを出ると、すみれさんが出迎えてくれた。


 『どうだった?』


 『回復薬は買えましたし、レベルアッパーもごらんの通り!』


 タブレット錠の薬を見せる。


 『おぉー!! マジナイスだし! んじゃあたしもー』


 そう言って、すみれさんもショップに入り、レベルアッパーを持って出てきた。


 『ハルハルもやるじゃんねー』


 『え? なんで今ハルハルさん?』


 『追々説明しようと思ってたけど、ショップは1つにつき1人1回しか入れないんだよねー。序盤に人気の味方VTuberがレベルアッパー買っちゃったらあまりスパチャ集まらない人が買えなくなるし、あえてショップを温存しておいて、後から人気なVTuberが買って回るっていう作戦よ。ハルハルは私達のためにショップに入らなかったってワケ』


 ハルハルさん、あまり話してないからどんな人かも分からないけど、すごい人なんだろう、人気もあるし。カードは未だに低価格で買えるけどね!


 『てなわけでレベルアッパーが2つ、これでかなーり有利になったってわけ! 超超ぐっじょぶ的なー!』


 やった! 役に立てたぞ!


 『あとはハルハルに合流したいとこなんだけどなー・・・・・・どこにいるやら』


 すぐに回復薬を飲み干し、すみれさんの後ろについてハルハルさんを探すことにした。


 それから間もなく、敵と出会った。


 『おーっと! 出てきた出てきたルーキーの“いちかりん”ちゃんだっけ?』

 

 『は、はい・・・・・・』


 『んでそっちは泡沫りんす!』


 『そーですけど・・・・・・なにか?』


 『アンタたちみたいなセンスのない運がいいだけのルーキーが、私に勝てると思ってんのぉーっ?』


 黒髪短髪で、自信に満ち溢れた彼女の側から、双剣が顕現する。


 『てかそっちもルーキーっしょ! 常世ツクヨミ!』


 『私はね、違うの。チュートリアルで無様に敗北するそこらのザコ敵とは違うの。選ばれし、勝つべくして勝つ主人公なのよっ!』


 いかにもヤバそうなやつだ・・・・・・。


 『てなわけで、ぶった斬るっ!』


 くっ、来る!!


 ツクヨミがこっちに向かって地を蹴った、その瞬間だった。


 ドッコ?ォォォォォォンン!!!


 大地が鳴動し、空間が歪んだ錯覚さえ覚えた。耳の中で音がグワングワンと響き続ける中、土煙が収まったかと思うと見覚えのある姿が現れた。


 『『ハルハル!!』』


 『待たせたな!』


 小柄な体には似合わないほどの巨大ハンマーを担ぎ、不敵に笑うその姿、歴戦VTuberの風格を纏った美少女だった。


 『ハルハル・・・・・・』


 ツクヨミが顔を歪ませる。いいぞハルハル! やってしまえー!


 『じゃーん、“コレ”、なんだと思うよ!』


 その手の平には4つのレベルアッパーだった。


 『ゲロやば!! うっそ! さっきまで1個も買ってなかったじゃん!! たった数分で買える分全部買ってきたワケ!?』


 『じゃ、もう2個のほうも貰おうか』


 ハルハルがこっちを見てきたので、僕はすみれさんの手持ちのレベルアッパーを受け取り、ハルハルに向かって2つ同時に投げる。


 『バァーッカ!!!』


 宙に舞うレベルアッパー、が、何かに弾かれ明後日の方向に飛んでいったかと思うと、片方をツクヨミがキャッチした!!


 『なっ!?』


 『あぁぁ!! ごめんなさいぃーっ!!』


 無駄にカッコつけて投げたのがいけなかった!! ただでさえノーコンなのに!!


 『ははっ! さすが私! 天才にも程があるでしょーっ!!』


 よく見ると、ツクヨミの双剣が合体してブーメランのような形に変形していた。あれを投げていたのか!!


 『これで2レベル分の差は埋まっちゃったわけだ! だーっはっは!』


 そう、本来はハルハルがレベル7、ツクヨミがレベル1の状態になるはずが、ハルハルがレベル6、ツクヨミがレベル2の状態になったわけだ、かなりの痛手だ・・・・・・。


 『しかも、あのAITuberコンビがレベルアッパーを持ってきたら、更にレベル差が狭まっちゃう感じ!? ちょいヤバ!』


 『は? なに勘違いしてんの? アイツらに力なんて借りねーよ』


 『え?』


 『もしかするとそこのルーキーズは知らないかもだから教えてやるよ! 私のスキルは『それちょーだい!』、相手を5回攻撃すればレベルを1奪うことが出来るんだよぉっ! 2つとない超特殊スキルだけど、選ばれし私の才能なら使いこなしてやるっ!!』


 『そ、そんなのってアリ!?』


 バランスブレイカーすぎるだろ! さっきショップに行ける回数は限られてるって言ってたけど、このスキルの内容通りならレベル上限が実質2倍ってことだよな!?


 『だったら、当たらなければ済む話だっ!』


 レベルアッパーを飲み込むと、ハルハルのハンマーが変化した。巨大で、しかもジェットブースターみたいなものがついてて強そうだ。


 『ギガントハンマーMk,ii! いくぜっ!』


 ハンマーを振り回す・・・・・・かと思いきや、なんとハンマーにまたがった!


 ハンマーのジェット口から炎が吹き出したかと思うと、急加速してツクヨミ目掛けて突進した!!


 『っ!!』


 さすがのツクヨミも躱すしかない、逃げ続けるツクヨミをハルハルは執拗に追いかけ回す。


 『この戦い、僕達必要なのかな・・・・・・』


 『もち、チーム戦だかんね。あのツクヨミって子はどこか勘違いしてるじゃん』


 “アイツらに力なんて借りねーよ”

 

  あの人はどうやら1人で勝とうとしてるみたいだ。ほか2人の力を借りずに・・・・・・。

 

 『じゃあ僕達は、残りの2人を倒しましょう!』

 

 『いーじゃん! こいつは任せて先にいけってヤツだね』

 

 それは死亡フラグ的なやつだと思うけど・・・・・・。まぁいいか。


 とりあえず、ショップをもう1つ見つけないとな。レベル上げて、なんとか対抗する手段を得てから・・・・・・。


 『あらら・・・・・・ちょいヤバ』


 『ぐふふふ・・・・・・。ハルハルだぁ・・・・・・私をいじめてくれるかもぉ・・・・・・』


 『ちょっと! その前にこの2人を倒すんでしょ!』


 いつの間にかAITuber2人に挟まれていた。


 『ちょっと・・・・・・こういうときはどうしたらいいんですか!?』


 『こういうときは、戦うしかないっしょ! レベル差が全てじゃないってハルハルも昔言ってたし!』


 『そっか・・・・・・技術さえあれば逆転も出来るんだ、このゲームは・・・・・・』


 よし、落ち着いて、分からないなりに考えて動くんだ!


 『取りつけっ! ワール!』


 『はいぃ・・・・・・っ!!』


 目隠しした変態が僕に飛びかかる。


 躱すか!? いや、攻撃かっ!


 武器がないから、代わりに己の拳で殴りつける。


 ドゴォっ!


 お腹にクリーンヒットする、人を殴ったのなんて始めてだから、若干の気持ち悪さが拳に残る。


 『ぐほぉぉっ!? い、良いぃぃっ!! 暴力慣れしてないのが一発で分かるぎこちなさですぅーっ!! もっと、もっっと!!!』


 『ひぃぃーーっ!! キモいぃーっ!!』


 『いけ! くまベア! このヘンタイちゃんをぶっ飛ばせぇー!!』


 『あぁー! 遅いですねーっ!!』


 そう言うと、変態が僕の腕に手錠をかける。


 『ちょっと!? なにこれ!?』


 『これでずぅーっと一緒ですよぉ・・・・・・』


 『変態属性に加えて束縛属性も兼ねてるの!?』


 『この手錠は私がダウンしても外れな、ぐふっ!?』


 周りの岩を取り込んだくまベアが変態の脳天をかち割った。もちろん、頭は割れてないけれども・・・・・・。


 『おぐぅっ・・・・・・なかなか効いたァっ・・・・・・』


 『だめです! こいつエクスタシー感じちゃってます!』


 『とんだ変態だ!!』


 『『ふたごの絆黒』!!』


 僕らがこの変態女に手を焼いていると、突然背後からスキルを使う声が。


 『ぷー・・・・・・私の事をぜんっぜん見てない! 私は褒められるために戦わないとだめなのにぃーっ!!』


 『りんすさん! 今のスキルって!?』


 『ふたごの絆は、使うとランちゃんの弾数を0.5つ回復して、30秒間変態ちゃんが攻撃を受けるとHPを回復する的な・・・・・・』


 『0.5つってなんだ・・・・・・』


 『これはニコイチで使うスキル、1回使うと30秒のクールダウンが必要なんだけど、変態ちゃんも全く同じスキルを持ってるから交互で使えば1分で弾を1個回復できるし、変態ちゃんはずっとダメージを受けない無敵状態になる的な・・・・・・』


 『めちゃくちゃ強いじゃないですか!!』


 『ウケる!』


 『ウケないですよ! そこはゲロやばって言うとこでしょ!!』


 『このスキルはワールが近くにいないと使えない・・・・・・。前は隠密行動してたし、ワールが勝手に行動するから使えなかったけど・・・・・・今回は違うから! スキルを活かして勝つからね!』


 『勝ち目がないーっ!!』

 

 『諦めたらそこで試合終了っしょ』

 

 『・・・・・・へ?』

 

 『あーしが選んだんだから、強いに決まってるし・・・・・・。底力見せてよっ!』

 

 ・・・・・・そ、そうだな。


 僕は選んでもらったんだ、あふれかえる程に人がいるあの駅前で・・・・・・。


 だったら、勝てなかったとしても、爪痕残さないと! 申し訳が立たないよね!!


 『武器がなくても! この頭でなんとか勝ってみせる!!』


 『ぜったい無理ですっ! この状況で! 私たちの完全優位! チェックメイトなんですっ!』


 『りんす! 僕の後ろに!』


 『りょーかい!』


 『なにをする気で・・・・・・ひぇっ!?』


 僕は自分の腕と手錠で繋がった変態を抱きかかえ、そのままランに向かって走り出す!


 『攻撃は任せます!』


 『まっかせてー!! くまベア!!』


 『ゴフゥー!』


 返事出来るのっ!?


 『うおーっ!!』


 突進突進突進―っ!!


 『ちょ、ちょっとまって! ワール邪魔!! どいてっ!!』


 『どけと言われても、がっつりホールドされちゃってますぅー!!』


 スキルループは強い印象だけど、ランだけ片付ければ大した事ない! ランの弾数が回復したって、当たらなければどうってことはない!!


 『うっ! 撃つよ!?!? 撃っちゃっていいんだよね!? えい!!』


 『あーーっっっっ!!! 撃たれちゃいましたーっ!! 痛いですー! なのにHPが回復して元気になっていくー!!!』


 『落ち着け私・・・・・・私の射撃能力があればワールに当てず敵に当てられる・・・・・・。大丈夫!』


 言葉通り、ランは落ち着いて照準を覗き込み、僕の足に1発打ち込む。


 『い、痛い・・・・・・でももう倒せる!!』


 『もち!』


 弾を込め直すタイミングを見計らい、スミレさんとくるりと立ち位置を変え、そのまま突撃する。


 『ちょっと待っ!! 今はっ!』


 『くまベア! その銃を奪っちゃって!』


 くまベアは銃をひょいっと持ち上げると、ランの届かない高さまで持ち上げ、猫じゃらしのようにランを弄ぶ。


 『返してー!! ねぇ返してよー!!』


 『ぐひひー、盾にされるの一度やってみたかったんですぅ・・・・・・』


 『馬鹿言ってないで! 手伝ってよワール!!』


 くまベアは取り上げた銃を飲み込んでしまった。


 『う、嘘・・・・・・食べちゃった。そんなのってぇ・・・・・・! ワール! 一時撤退! ツクヨミのところに行くよ!!』


 『うぅ・・・・・・もっといじめられたかったのにぃー!』


 無様に逃げ出す2人、しかしスミレさんもくまベアも追いかけなかった。


 追いかけようと言いかけたその時だった、くまベアの腕から銃が生えてきたのだ。


 『あーしのぬいはこんなことも出来るんだよねー!! やっちゃえ!』


 腕から出した銃を構えると、ランに向かって撃ち始めた。


 すごい射撃性能だ。あっという間にランを蜂の巣にしてしまった。


 『わ、私の見せ場がぁ・・・・・・褒められないのは嫌ぁ・・・・・・』


 黒部ラン リタイア


 『ランがやられたってことは・・・・・・私のスキルも使えなくなったということですねー!! もういっそ、そのまま倒しちゃってくださーい!!』


 『お望み通りに!!』


 『がふぐふはひーーっっ!!』


 またもやくまベアの百発百中の銃弾に貫かれ、変態が倒れた。


 『悔いはないです・・・・・・この痛みを思い出してまた1人で励むですぅ・・・・・・』


 白野ワール リタイア。


 ・・・・・・。


 『や、やった・・・・・・』


 『あーしら凄い!! いや、誰よりも凄いのは・・・・・・!』


 すみれさんが僕の方を見た。


 『マジ凄い! 始めてのバトル、いやルールも知らなかったのにここまで戦えるなんて凄すぎーっ!! ゲロやば過ぎて語彙力なくす!』


 『あ、ありがとうございます・・・・・・。でも、りんすさんのほうがずーっと活躍してまし・・・・・・』


 ずしゃ・・・・・・。


 『た・・・・・・』


 背中に鋭い痛みが走った。


 『え・・・・・・』


 『なぁーに勝負に勝ちました面してんのぉー!? 全っ然勝ってねーじゃん!!』


 後ろを振り返ると、そこにいたのはツクヨミだった。


 『やーーっぱ私は恵まれてんのよ! 勝つべくして勝つ! アンタたちみたいなルーキーなんて相手になんねーーっ!!』


 『くまベアっ!!』


 すみれさんはくまベアに指示を出して、ツクヨミを攻撃しようとした、しかし。


 『は? レベル1がレベル5の私に勝てると思ってんの?』


 くまベアは見るも無惨に切り刻まれてしまった。


 『ハルハルさんは・・・・・・どうなったんだっ!?』


 『あーね、今ダウンしてるよ。大したことなかったなー、まぁ、戦いに癖があるのを見抜けてた分、私に分があったんだと思うよ。それに、レベルを奪う最強のスキルもあるしねー』


 『ゲロやば・・・・・・』


 『そーいうわけで、そっちも!』


 さくっ・・・・・・。


 肌が裂ける。


 『痛ったぁーー!!』


 ま、守らないと・・・・・・。


 すみれさんは・・・・・・僕が・・・・・・。


 すみれさんに覆いかぶさる形で、盾になる。


 『・・・・・・』


 『は? キモ・・・・・・』


 ツクヨミがつばを吐く。


 バーチャルの世界なんだ、痛くも痒くもない。だったらせめて最後はかっこよくしめようじゃないか・・・・・・。


 僕はツクヨミに蹴られ、無様にも仰向けになって動けなくなっていた。


 『はぁ、才能もない、適当に生きてるやつがかっこつけんなよ・・・・・・気持ち悪ぃ』


 そう言って、僕にとどめの一撃を与える。


 いちかりん、ダウン。


 『うーん、コレだけじゃ足りないなぁーっ』


 え・・・・・・?


 『トレンドVTuberでもない、努力もしてないポッと出のVTuberがこんなところに来ちゃだめだったよねー。視聴者のみんなもそう思うよね?』


 何をする気だ・・・・・・?


 『てなわけで、処刑しちゃいまーす!!』


 しょ、処刑!? 待て・・・・・・ダウンした相手にこれ以上何をするって・・・・・・!


 『・・・・・・死ね』


 そうして、僕は動けなくなった体に、最後の一撃を食らった。


 ・・・・・・。


 『よーぉし! これでVTuberバトルの平穏が保たれたぁー!!』


 りんすもダウンし、ツクヨミたちが勝利した。


挿絵(By みてみん)


 『デッド・エンド!!』

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