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1話 僕がVTuberになった理由 FIRST ENCOUNTER OF THE BOY

 知っているだろうか。この世界には2種類の人間がいることを。


 それは、メインキャラとモブだ。


 僕の人生を変えれるようなメインキャラってのは、人生の中でも数えるほどしかいない。そして今、僕はそんなメインキャラに会うことなく大学まで進んでしまった。


 今もこうして、大学終わりにふらっとコンビニに寄って大人気TCG、バチャメンカードがあるか探しつつ、そのまま帰路につく。


「そこの貴方! 今、お時間は空いていますか!?」


 猫背が一気にピンと伸びる。


「は、はい・・・・・・? 僕ですか?」


「ええ、貴方です!」


 眼の前にいたのは、長い金髪、縦カール、高そうな服。顔は・・・・・・僕にはよく分からないけど多分美形寄り。


 そんな彼女が僕の手をぎゅっと握る。


「一応・・・・・・大学終わりで時間はありますけど・・・・・・。バイトもないですし・・・・・・」


 握った手をブンブンと上下にスイング。


「よかった・・・・・・! でしたら、ちょっと来てほしいところがありますの! 来てくださいませんか?」


「え・・・・・・あ、はい」


 これは・・・・・・なんだ? 罠か?


 今までの人生、人生が大きく変わりかけたことはたくさんあった。でも、そのいずれも結局は僕の人生を変えてはくれなくて・・・・・・。どうせこれも、大した事ないんだろう。多分、高い情報商材を買わされるのかな? なんて思いながら、彼女について行った。


「やっぱり! 1人目で見つかるとは、私の直感に間違いはありませんでしたわ!」


 ドキドキする。もしかして魔法使いにスカウトされたのかも、とか、実は超かっこいいロボットの操縦士に選ばれたのかもとか、色んな妄想が捗って仕方ない。まぁ、流石に違うんだろうけど・・・・・・。僕の悪い妄想癖だ。


 彼女に連れられたのは、一台の車。


「さぁ、乗って乗って!」


 えー・・・・・・これって人攫いだったりしないですかね・・・・・・。


 まぁ、ここまで来ちゃったし、あとはなんとかなるだろ! 多分!


 そんなノリで乗り込む。


 運転席には無口な感じの運転手がいた。「わたくし運転手が生業でして」と言いそうな、そんな雰囲気だ。


「わたくしの家までお願いしますわ!」


「分かりました」


 うーん、さっきは顔を見る余裕なんてなかったけど、見た感じ同年代か・・・・・・?


 まさか、こんな子が僕を詐欺にかけようとしてるわけないよなー! だいじょぶだいじょぶ! 多分・・・・・・。


 車がエンジン音を上げて動き始める。すごい、家の車より遥かに滑らかに動く!! 高級車だ!


「わたくしも幸運ですわ!」


「で・・・・・・僕は今からなにをすればいいんですか?」


「貴方には・・・・・・」


 ゴクリと息を呑む。


「VTuberになってもらいますわ!」


「・・・・・・」


 え? VTuberって、あの?


「す、スカウト?」


「でも安心してくださいな、バトルを1試合してもらうだけですの」


「バトルって・・・・・・VTuberバトルですか? VTuberとか見たことなくて、あまりルール知らないんですけど・・・・・・大丈夫ですか・・・・・・?」


「そんなっ!? VTuberバトルを知らないんですの!?」


 まずいかも・・・・・・? とんだ糠喜びさせちゃったかも、僕なんて戦力にならないし・・・・・・。


「ますます気に入りましたわ! 1すみれポイントを差し上げます!」


 なんだすみれポイントって・・・・・・。こいつやばいやつかよ。


「そっ、そもそも、3Dモデルとかはあるんですか?」


「もちろんありますわ、これですの」


 全面の車内とは思えないほどのめっちゃでかい液晶パネルに映し出されたのは。


「ってこれ、女の子のモデルじゃないですか! 僕男ですよ!?」


「大丈夫ですの、女性VTuberの1割は男ですわ!」


 VTuber界隈が心配になってきたぞ・・・・・・。


「声はフィルターを通せば女の子の声になりますわ。人並みに言葉使いだけ気をつければ大丈夫ですわよ」


 そうは言われても・・・・・・。


「ネカマとか、出来るのかなぁ・・・・・・」


「ネカマじゃありませんわ! バ美肉ですの!」


「あぁ、バーチャル美少女受肉ってやつでしたっけ・・・・・・」


 同じだろ・・・・・・。


「わかりました・・・・・・やれるだけやってみます。せっかく選んでもらえたんですから、それなりに期待に添える活躍をしないと・・・・・・」


「さすがさすがっ! 5すみれポイントをさしあげますわ!」


「そのすみれポイントってなんですか・・・・・・」


「先程発行しましたわ! BMIを起動して身分証明欄を開いてくださいな!」


 言われる通りに身分証明欄を見てみる。


 ホントだ、右下にちっちゃくすみれポイントって欄が増えてる。6ポイント入ってるな。


「貯まるとなにかもらえるんですか? これ」


「未定ですわっ!」


「未定かい・・・・・・」


「でも、テストに花丸がつくと嬉しいのと同じ、小テストにGood!!と書いてもらえると嬉しいのと同じ、“褒め”を可視化すると気持ちのいいものでしょう?」


「確かに・・・・・・」


 僕はこの人と話をしていて分かった。


 この人は、僕が話すに値する人だということに。


 さっき考えてた話、世界はメインキャラクターとモブに分かれてるって言ってた。その続きで、モブの中でも僕よりしょぼいヤツと僕よりすごいヤツがいる。しょぼいヤツと話してても頭が良くなることはないからそういうやつは敬遠してる。でも逆に、僕よりすごいヤツはつるんでたら色んな気付きをもらえるから積極的に話している。


 で、話してて分かった。この人はすごいヤツだ。僕にとってプラスの体験を与えてくれるだろう。


「あ、着きましたわ! 急いで!」


 余計な話をしていたせいで、バトルのルールも、なんで僕がやることになったのかも、何もかもわからないままだったけど、とにかく彼女の家に乗り込んだ。


 彼女の家は、それほど豪華でもないが・・・・・・。いや、十分豪華だ、妄想のせいで期待値が上がりすぎた。2階に上がると、そのうちの一室に案内された。


 中に入ると、落ち着きのある部屋の中に大きな機械が2台。Vector社のロゴが描かれている。


「あと5分・・・・・・。とにかく、詳細はバトルの最中にお教えしますわ! バトルが始まったら、ランダムな場所に飛ばされますから、私を頑張って探してくださいな。私のVTuberとしての名前は泡沫りんす、茶髪が目印ですのよ」


 うたかたりんす、泡沫りんす・・・・・・。よし、覚えた。


 あれ、そういえばVTuberの名前は分かったけど、この人の名前、まだ聞いてなかったっけ。


「で・・・・・・これはどうやって入れば・・・・・・」


 おそらくトラッカーのようなものなんだろうけど、この機械で何をすれば良いのか分からない。


「安心してください、わたくしが取り付けますわ!」


 そう言うと、僕の右足、左足、右腕・・・・・・と、どんどん接続していく。口の中までなにかつっこまれたし!?


 最後はゴーグルを被って終わり。


「それじゃ、よろしくおねがいしますわね」


「そ、その前に!」


 機械が閉じる前に、僕は彼女を呼び止めた。


「まだ名前・・・・・・本当の名前聞いてなかった・・・・・・」


「私は・・・・・・。すみれ。す、鈴木すみれですわ」


「いい名前だね、僕は宮内斑鳩。変わった名前だけど・・・・・・。今日はよろしく」


「ええ、覚えましたわ。あなたには本当に感謝してますのよ」


 機械がゆっくりと閉じられていく。


「それから、あなたのVTuberとしての名前はこれから“いちかりん”ですわよ!」


「了解・・・・・・ですっ!」


 機械が閉じると同時に、世界が構築されていく。


 広がった世界は、見たこともないものだった。たくさんの視聴者が僕を見ている。


 こんな晴れ舞台に、立つ時がこようとはね・・・・・・。


「遅い!!」


「ご・・・・・・ごっめーん!」


 僕の陣営には僕以外に2人のVTuberがいた。


 青い髪と茶髪、つまりこっちのギャルっぽいほうが泡沫りんす。


「危うく減点だったぞ! 不戦勝でっ!」


「ウケる!」


「ウケねーよ!!」


 待て待て、この空間、僕はどんな話し方をすれば良いんだ?


「迷惑かけてごめんな。いきなり声をかけられたんだろ?」


「まぁはい・・・・・・あれ?」


 あれ、この人見覚えあるな。


「あっ! ハルハルさんですか!」


「え? ま、まぁそうだな・・・・・・」


「バチャメンカード集めてるんでハルハルさんは分かりますよ! 連星の思い出のSP持ってます」


「おおー! 嬉しいなぁー! 頑張ってサインを考えた甲斐があった!」


 ちなみにハルハルはハズレ枠。出た瞬間発狂したってことは黙っておこう。


「よしっ、今日は頼むぞ!」


「はい!」


 ハイタッチをする。


 しっかし、ハルハルってこんなキャラだったんだ。イラスト見る感じてっきりおとなしめの電波っ子って感じだったけど・・・・・・。


『あ、りんすさん。僕はとにかくりんすさんを探せばいいんですね?』


『そうそう! 流石ぁ! よくわかってんじゃーん!』


 リアルを知ってると、この世界での振る舞いが少し歯がゆいが・・・・・・。まぁ細かいことは気にしたら負けだな。


『さぁーって! 今シーズン初めの試合は”もざいぶ”6期生VSきゃらめリップ4期生の勝負っすよー!』


『ハルハル移籍後初の試合! どうなるやらやら!』


『楽しみっすねー!!』


 なんか黒いのと白いのが出てきて実況を始めた。はぁ~。友達はよくVTuberバトルのことを語ってくれてたけど、こんな感じなのかぁ。


『うひひぃ・・・・・・久しぶりの試合ですぅ・・・・・・』


『3ヶ月待った! けど、待った甲斐があったというもの!! “久しぶり”ד大活躍”でいつもの倍褒めてもらえるかも!!』


『久しぶりなので、痛みももっと感じるかもですねぇ・・・・・・。切られたい、首絞めてもらいたい・・・・・・っ!』


『あいつらは平常運転だな・・・・・・』


 うわ、なんか変なのがたくさんいる・・・・・・。特にあの白い手錠して目隠ししてるやつやべぇ、イラストはバチャメンカードで見たことあるけど、見た目通りの中身のヤバさだ・・・・・・。


『だはっ! なんでトレンドVTuberじゃないのがいるんだかっ!』


 あっちは見たことないやつだな・・・・・・。新入りか? まぁ僕ほどではないにしても。


『ここはお遊びの場じゃないってこと、教えてあげないとなっ!!』


 そうだよな、一般人は立つことが出来ない舞台に、僕は立っている。


『選手は揃いました!』


『それじゃ始めていくっすよー!!』


『今回のステージは遊園地!』


 これから、はじまる。始まってしまう。


 僕は、この体験で人生が変わるのか? すみれさんは僕のメインキャラクターになり得るのか?


 気になることはたくさんだけど、とにかく目の前の事に集中しないとな。


 よし、勝つ!


『『それでは試合、スタぁーっと!!』』


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