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2話 Vtuberに! スク水着せたら貢がないとっ!

 この時代の事務所所属VTuberは、昔のものとは大きく異なる。トレンドVTuberになるために必要なものはSNSでの実績。動画サイトでも、掲示板サイトでもなんでもいいので、とにかく100万人のフォロワーを集めることでトレンドVTuberへの参入権を得ることが出来る。VTuberバトルを創り出した会社、Vectorベクターによって認可され、スキルやステータスといった情報も手続きの際に設定される。


 この参入権こそがトレンドVTuberへの切符、参入権を持つVTuberは各事務所のドラフト候補に自動で振り分けられる。定期的に行われる事務所のドラフトに選ばれることで、晴れてトレンドVTuberとなる。


 トレンドVTuberはVTuberバトルへの参加が義務付けられる。VTuberバトルは疑似的フルダイブ型カプセルに入って行われる3対3のVRアクティビティで、Vector社によって設定された能力はこのVTuberバトル内に反映される。トレンドVTuberはみな、このVTuberバトルからは逃げられない。そして、戦わなければ、生き残れない。

 

『えーっと、はじめてだからよくわかんないけどっ』

 

 アイカは周りを見渡す、ゲーム開始と同時にプレイヤ―は全員エリアのどこかにランダムで飛ばされるため、まずは2人と合流しようと考えた。掲示を見ると今は地下1階、とりあえずエスカレーターに乗って上の方に移動することにした。

 

『はみゅ・・・・・・なに呑気にしてる・・・・・・』


『あーっ! ハルハルちゃん!』


 ハルハルは、1階を探索していると、偶然エスカレーターに乗ったアイカを見つけた。律儀にエスカレーターの上では立ち止まるアイカとは違って、ハルハルはエスカレーターを走って移動していた。


『今は試合中、立ち止まるのは時間の無駄みゅ』


『でも、放送でエスカレーターは立ち止まってって・・・・・・』


『ポンコツ。今は戦いの途中なんだから、そんなこと気にするんじゃない』


『でっ、でもぉ・・・・・・』


『しっ、見つかるからこっそり移動だみゅ』

 

 ハルハルはアイカの手を取って上層階へ走り出した。もちろんエスカレーターの上でもお構い無しに走り続ける。

 

『は、背徳感・・・・・・』


 ハルハルは走りながら視界モニターをオンにする。

 

『今のところ、アイカが250000、ハルハルが178000、ホリィが10000』

 

  集まっているスパチャの額を確認する。

 

『うみゅ、ホリィのお色気芸は1人で完結する、とりあえず2人で移動』

 

『わー、すっごいスパチャ! みんなありがとっ!』

 

 ハルハルはデタラメにデパートを走り回ってるわけではなかった。とあるショップを探していたのだ。

 

『思ったより誰にも会わないものなんだね』

 

『とうちゃーく、水着屋~』

 

 ハルハルは三角形の口を開けて、両手をあげてアピールする。

 

『わー、色んなかわいいのが並んでるねー』

 

『と、いうわけでフォロワーのみなさん、スパチャ30万でこの水着』

 

 キャミソール付のビキニ、黒と白のボーダーで、随所にフリルがついている。

 

『50万でこちら』

 

『え、えっとこれを着るって話をしてるの・・・・・・?』

 

 水玉の普通の水着、オーソドックスといえどこの場ではあまりに過激すぎる。

 

『んで、300万円でこちら』

 

 スク水、それも旧式のほう。なぜかご丁寧にひらがなで「あいか」と書かれている。

 

『なんでこんなのがあるのーっ!? っていうか、なんでだろう、さっきのより露出は少ないはずなのに何倍も恥ずかしいんだけど・・・・・・』

 

『時間は惜しい、今から3分! 目標額達成でこの水着を着てバトりまーす。はーい買った買ったー!』

 

『今はバトルの途中なのに、お着替えってなんか変な感じ。というかっ、私の水着そんなにスパチャしてまで見たい人いないよー!』

 

『2分経過、ただいま168万2000円集まっています』

 

『なんでぇーっ!?』

 

『ふにゅ、ほらスパチャ読んで読んで』

 

 アイカは視界の右下に流れるコメント欄を確認する。

 

『そっ、そうだよね。えっとね・・・・・・

『アイカちゃんのスク水見せて!』『応援してますっ! バトルに役立ててください!』『スク水スク水スク水』『ありがとう水の販売は行われていますでしょうか』』

 

『あと18秒、現在279万円でーす、どうなるかなー』

 

『うう、素直な応援がスク水コメントでサンドされてるよぉ。それにありがとう水ってなに・・・・・・?』

 

『おぉー、無事残り1秒で目標額たっせーい。世界の変態諸君ありがとー』

 

『み、みんな! 私のことを応援してくれてありがとう!!』

 

『というわけで』

 

 そういうと、ハルハルはアイカをスク水と一緒に着替え室へ押し込んだ。

 

『しばし待たれよ~』

 

 ・・・・・・。

 

 ・・・・・・・・・・・・。

 

『ちーん、ほくほく・・・・・・』

 

『に、似合ってるかな・・・・・・?』

 

 アイカは書き込まれるコメントに驚愕していた。数10秒で10922コメントも寄せられていたからだ。

 

『日本は病んでいる・・・・・・』

 

『ハルハルちゃんのことも書いてあるね、『ナイスハルハル』だって』

 

『賞賛スパチャありがとみゅ―』

 

『というわけでスパチャはアイカが389万、ハルハルが78万、ホリィが、0?』

 

 ・・・・・・。

 

 ・・・・・・・・・・・・。

 

 ハルハルは握った拳を震わせ、胸中の怒りを全て放出した。

 

『あいつ過激なことしすぎてペナルティー食らいやがったぁっっっ!!!』

 

『ハルハルちゃん! 素が出てるよ!』

 

『素~? なんのことみゅ~?』

 

 一見VTuberの初歩ミス、しかしコメント欄には「なんだ、いつものハルハルか」「平常運転」というコメントであふれている。VTuberはただ完璧にキャラを演じきるだけでは人気を得られない、こういう“ギャップ”が魅力の1つになるのだ。

 

『初戦だからキルはないものの。不安だみゅう・・・・・・』

 

『そ、それじゃ私たちでがんばらないとね! 急いでショップに行かないと!』

 

『うみゅー・・・・・・』

 

 2人は急いでショップを探す。

 

『げげ』

 

 ショップは屋上にあった、しかしショップを見張るように1人のVTuberがいた。

 

『涼海ミリコ、巣穴を守るウォンバットみたいな戦法みゅ・・・・・・』

 

『どうするっ?』

 

『他を回ってもいいけど、正面突破にかぎるみゅ。ショップに行かないことにはどうにもならないみゅ』

 

『じゃあ、おねがいっ! アタッカー!』

 

『任せろみゅ』

 

 ハルハルはミリコに向かって走り出した。

 

『まんまと挑んできましたね!』

 

『ぴこはん!』

 

 ハルハルがそう叫ぶと、巨大なピコピコハンマーが現れた。

 

『そんなものでっ!』

 

 ミリコは軽々と手で受け止めた。

 

『ふみゅう、さすがタンカー』

 

『お互いLV.1みたいですねっ・・・・・・!』

 

 ハルハルはバックステップで距離を取る。

 

『ショップの近くにいたくせに、レベルアッパーを買ってないみゅ?』

 

『えぇ、私はあくまでタンカーですから。アタッカーに回した方がいいんです』

 

『となると、アタッカーの山田運命(デスティニ―)に渡したってことだみゅ』

 

『えぇ、そういうことです』

 

 2人がだべっているうちに、アイカはこっそりとベンチの影を移動してショップに近づいていっていた。


『この隙に、いけちゃうよね・・・・・・』


『ごみぇんなさい! それはむりでしゅっ!』


『ひゃぁっ!?』


 ショップの影から出てきたのは相手チームの井上アンダーソン、アンちゃんの愛称で呼ばれているデバッファーだ。


『しょうしき、アイカひゃんには負ける気ひないのれすっ! すずめひゃん!』


 アンダーソンの武器は相棒のスズメ。基本的には相手に取りつかせて全ステータスをダウンさせるのだが、ヒーラー相手には攻撃も出来る。


『つっつけー!』


『きゃあっ! 痛いよー!』


『これがとてんどぶいチューバ―の恐ろしさなんでしゅ!』


 レベルの低い小競り合いをよそに、ショップの防衛戦は続いていた。


『はみゅう、最低でもLv.2は必要みゅ・・・・・・。じゃないと埒が明かないみゅ』

 

『そうですか、ではどうぞ』

 

『ふみゅ?』

 

 突然ミリコは戦いを止め、下へ降りる階段の方へ進んでいった。訝しく思いながらも、急いでショップへ駆け込んだ。ショップはSの文字が浮かんでいて緑に発光するゾーンのことで、そこに入ると30秒間だけショップに入ることが出来る、1度入ったプレイヤーは同じショップに入ることは出来ない。

 

『なんか知らないけど、とりあえずレベルアッパーげっとぉ!』

 

 ショップでレベルアッパーを購入する、金額は100万円。他の商品も購入したかったが、バトルの間にもらったスパチャも含めてレベルアッパー1つを買う余裕しかなかった。

 

『よし、これをさっそく使って・・・・・・』


 レベルアッパーはタブレット状の薬だ、それを飲み込む。


『よし、これでLv.2、うちでのこづちになった・・・・・・』

 

 まずはアイカを助けようと振り返ったが、そこにアンダーソンはいなかった。

 

『アンちゃんなら、急に向こうのほうへ行ったよ?』

 

『なんか、やな予感みゅ』

 

『お―当たりなのデス!』

 

『やっぱ、そういうこと・・・・・・』

 

『え? どういうことっ!? どういうことっ!?』

 

『あの2人で時間稼ぎをして、その間にスパチャ集めてレベルを上げたってわけみゅ』

 

『そうデス! 私のレベルは3! このポイズンクローなのデス!』

 

 敵チームのアタッカー、山田運命デスティニーは、その爪から毒をしたたり落としていた。

 

 不敵に笑い、爪をひと舐めする。

 

『げっほげっほ。スリップダメージが・・・・・・』

 

 癖で爪を舐めた山田は、毒のダメージを食らってしまう。


挿絵(By みてみん)

 

『バカなんですかあなたは!?』

 

『これっ! これのんでぇ』

 

 山田はアンダーソンから解毒薬と回復薬を受け取り、すぐに飲み干した。

 

『ぷふぅ。かっこわるいところをみせたデスね・・・・・・。さぁ気を取り直して、VTuberバトルは経験値とレベル差がすべてだってことを教えてやるのデス!』

 

『ふみゅ、なんだかポンコツそうだけど・・・・・・』

 

『勝てるかな? ホリィちゃんなしで、レベル差もあって・・・・・・』

 

『かなりの大ピンチみゅ』

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