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16話 リツホノ刻

 カチャカチャ・・・・・・。


 「あー、ここだな。パーツがズレてる」


 ドライバーを使って、器用にパーツの調整を行う晴人。


 「助かるわ。ありがとう」


 「多分これでいいはず。ちょっと使ってみてくれ」


 律帆は、さっきまで壊れていたフルダイブマシンに入り、動きをテストしてみる。右手を開いて閉じて、左手を開いて閉じて。うん、問題ない。


 「うん、完璧ね。わざわざありがと」


 突然マシンが壊れたと聞いて恐る恐るパーツをバラした晴人だが、無事に修理することができてホッと胸を撫で下ろす。最近ではAIが指示してくれるので知識がなくても修理は出来る。しかし、AIなら完璧ということもなく、結局は何度も機械いじりをしたことのある人間が作業したほうが確実だ。


 「ホントは、ちゃんと見てもらったほうがいいんだけどな・・・・・・。お金はあるんだし」


 「でも、業者だと何かと時間がかかるでしょ? 予約もあるし、車で時間かかるし、パーツの取り寄せだなんだいって」


 「じゃあ今日の配信が終わったらちゃんと見てもらってくれよ、あくまで応急処置だ」


 「そうね、そうするわ」


 晴人が作業をしている間、藍はチョロチョロと部屋の中を見ていた。


 「漫画がいっぱいー!」


 「もの好きだよな・・・・・・」


 律帆の部屋には、紙書籍の漫画がずらりと並び、フィギュアやCDなど、様々なグッズが心狭しと並んでいる。


 「でも以外だな。アンティーク趣味があるってのは初耳だった、それもここまでとは・・・・・・」


 「そうね、別にPRはしてないから」


 「どこかで聞いたセリフだね」


 藍は床に寝そべりながら伸びをする。


 「昔は結構アニメの話とかしてたよね~。小学校の頃が懐かしいや」


 「そういやさ、2人の小学校のとき、俺が来る前ってどんなだったんだ? 言われてみれば聞いた覚えがないような気がする」


 晴人は、両親の仕事の関係で転校してきたという経緯がある。そのため、2人の4年生以前のことは知らないのだ。


 「藍は・・・・・・、今と全く変わらないわね。クラスの中のムードメーカー」


 「律帆ちゃんはぜんぜん違うよね。4年生くらいまですっごく明るくて喋る子だったんだよ?」


 「律帆が!?」


 「そんなに驚くことでもないでしょ・・・・・・」


 「よくアニメとか、好きなゲームの話しをしてたよね」


 「想像がつかない・・・・・・」


 「あと、授業中にいきなりおもしろいこと言ってたよ! 計算ドリルやってるときに、『さんかっけいさんドリル! ウィーン!!』とか、『ドリアンの皮をそのまま使ってドリアを作ったら、ドリアドリアンになるのかな? それともドリアンドリア?』とか!」


 「おも・・・・・・しろい?」


 「こういうのを毎日20個くらい言ってた!」


 晴人は、極めて悪質な授業妨害なのでは、という言葉が喉のすぐそこまでせり上がってきたのをなんとか飲み込んだ。というか、それ以上に今の律帆からは想像もできない話だったので、言葉が出なかった。


 「そうね、小学校の時だから、空気読めないこともあったわ。でも今はちゃんと成長して、立派なオトナよ」


 「そうだな、人って変わるもんなんだな」


 動画が残ってないか、あとで藍に聞いてみよう。昔の律帆の姿に興味が湧いた晴人なのであった。


 ・・・・・・・・・・・・。


 ・・・・・・。


 私は、空気が読めなかった。


 ずっと、知らず知らずのうちに人に迷惑をかけてた。


 私は、正義感が強かった。


 ずっと、わるいことをする人を見つけては、注意していた。


 だけど、今なら分かる。分かってて悪いことをする人よりも、分からず人に迷惑をかけるほうがずっと悪質だってことに。


 私は、真面目なんじゃなく、悪いことをするだけの要領の良さがなかったってだけに過ぎないってことに。


 辛かった、その事実に気づいた時に、私は自分の頭の悪さにうんざりした。それから、少し周りの人間が嫌いになった。勉強もスポーツもできて、友達を作る才能にも恵まれた人、すごく羨ましい。人に迷惑をかけてるのに楽しそうにしてる人、見てると過去の自分を見ているようで嫌になるし、早く気づいてほしいと思う。


 要するに私は、自分が生まれ持たなかったものがたくさんあることだけ知ってしまった。頭では分かるのに、腕が動かないもどかしさ、翼をもがれた鳥のようだと思った。


 誰かと仲良くなればなるほど、その場の空気とか、本当の自分とみんなに見せる自分の境界線が曖昧になって、結局私の異常性をさらけ出してしまう。


 だから、同じ人に何度も話しかけることは苦手だ。最低限の言葉と行動で関われば、嫌われることもない。だから、私は楽しむだけの友達は作らなかった、2人とつるんでるのも、あくまでビジネスパートナーとして。


 でも、努力してここまで成長できて、自分でもよく頑張ったと思う。マイナスを、ようやく0にできたと思う。大人になれたと思う。


 私は頑張った。そしてこれからも頑張らないと。生まれ持たなかった私は。

挿絵(By みてみん)


おまけ 白野ワール デザインラフ

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