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10話 エクスキュートリゾート

 『えへへぇ~。し、しぬぅ・・・・・・っ!!』


 『何してるの! 負けたら褒めてもらえませんよ! はやく行ってきてくださいー!』


 黒部はいい感じの狙撃場所を見つけたのでそこで獲物に狙いを定めているのだが、遠くにいる白野を見てやきもきしていた。


 『あ、あとちょっとだけ・・・・・・。ふはぁ・・・・・・。ふはぁ・・・・・・』


 白野は、自分のリードを柵に引っ掛けて遊んでいる。


 『あぐぅっ・・・・・・! かはっ・・・・・・!』


 そろそろ死にそうな直前、首輪を外そうと手をかける。なかなか上手く外れない。


 『い、いぎぃ・・・・・・っ!!』


 チャリンと音を立て、首輪は外れて白野が床に倒れる。


 どたっ。


 『・・・・・・ワールのやつ、いつか死にそう』


 『あ、あぁ~良かったぁ。命あっての物種、命あってこそ楽しめる苦痛ですしぃ・・・・・・。寸止めってなかなかムズカシイですぅ』


 白野はよだれを垂らしながら、ゆっくりと歩いていった。


 『普通双子キャラって、もっと意思疎通して、言葉をかわさずに協力するものだと思うんだけどなぁ』


 お互いの価値観を理解することが出来ない2人、そして、きゃらめリップの双子じゃないもう1人はというと。


 『こまったな。僕は方向音痴なんだよ』


 王子様キャラのカペルは、遊園地の中、どこへ進めばいいのかわからない様子。腰に手を当ててやれやれ困ったというように、それでいて華やかに歩いていた。


 『でも大丈夫さ、こうやって歩いていればいつかは誰かに出会える。それが味方なら合流出来ることになるし、敵なら倒せばいいだけだよ』


 歩いていると、メリーゴーランドを見つけた。


 『うん、いいね。実はここだけの話、回転木馬には乗ったことがないんだよ。面白そう』


 そんな独り言をつぶやきながら、メリーゴーランドに乗り込む。空いているから待ち時間はなかった、馬にまたがるとゆっくりと動き始める。


 『へぇ、意外と楽しいものだね』


 さっきから続いているこの独り言。実はとある作戦のひとつなのである。


 王子様キャラで人気を集めたカペル。女性VTuberでありながら、女性視聴者率はトップ1。トレンドVTuberのなかでもひときわ目立つ存在だ。そんなカペルはスパチャを集めるにあたって、全ての視聴者との遊園地デートを行っている。視聴者はVR空間にゴースト(当たり判定もなく、自由に動けもしないがVR動画を見るような感覚でバトルに没入できるモードのこと)として視聴し、カペラといっしょにデートをしているような体験をすることが出来る。


 こうして、ただ見ているだけでなく、実際にその場に居合わせて一緒に戦っていると錯覚した視聴者たちはバトルの際に惜しみなくスパチャを送る・・・・・・。という算段だ。


 このような作戦をとったのは彼女が史上初、バトルの中でデートをするという一見デタラメな作戦は功を奏すのだろうか・・・・・・。


 ・・・・・・。


 ・・・・・・・・・・・・。


 そんな中、アイカは1人で遊園地をさまよっていた。


 『うぅ、ひとりだと心細いよー。ハルハル~、ホリィちゃーん!』


           ぼっちざあいか         アイカの哀歌

 なにを言ってるだー! 俺等がいる!   VTuberによる事件が、もうすぐ起こる

         かわいい    がんばれーーーーーーーーーーーーーーーーー

    ハルハルどのへん?      守りたい

     どけ! 俺はお兄ちゃんだぞ!      安心しろ、俺が守る(イケボ)


 コメントがどんどん流れていく。


 『そうだね、ごめん! みんながいてくれてるんだよね!』


 そろそろ、なにかしないとスパチャもらえないよね・・・・・・。


 前は晴人くんがみんなが好きそうなことを企画してくれたけど、わたし、あんまりトレンドとかわからないし・・・・・・。


 でも、やっぱりアピールしてスパチャをもらうのって、みんなの大切なお金をせびっているような感じがして、なんだか悪い気がするんだよぉ・・・・・・。


 うーん。


 ん? あの変なのはなんだろ?


 なんだか、高いタワーみたいなのがあって、その根本あたりに乗るところがある。わかんないけど、あれに乗ってみよう! きっと楽しいよね!


 『よーし! 今からあれに乗りまーす!』


 やめとけやめとけ           あー、乗ったことある気がする

      アイカ終了のお知らせ       ↑平成生まれおっすおっす

                   あ……(察し)

     」」」」」」」」」さよなら       なにこれ? 


 『フリーフォール・・・・・・。自由な壁? なんか楽しそう!!』


 ※それはFreeWall、Wallではなく正しくはFall(落ちる)です。


 110cm以下は乗れません? 私は148cm、でも今の体は165cm、どっち基準なんだろう・・・・・・。あ、でもどっちにしろ乗れるのかっ!


 「安全バーが下がります・・・・・・」


 早速フリーフォールに乗ってみると、上から変なのが降りてきた。それのお陰で体がガッチリと動かないようになった。


 『ワクワクだねー! どんな感じなんだろー?』


 『あ! アイカじゃない! フリーフォールなんてまたチャレンジャーねー!』


 アイカの体が徐々に昇っていくさなか、地上にはホリィがいた。


 『ホリィちゃん! ちょっと待っててねー! これが終わったら一緒に戦おー!』


 『分かったわー! でも、絶叫系大丈夫なのー!?』


 『絶叫系ってなにー!?』


 『・・・・・・あ、もしかしてアイカ、フリーフォールが知らずに乗ったのかしら』


 『うわー! どんどん高くなってくるよー!?』


 う、うわぁ・・・・・・。ほんとに高いよぉー、ちょっと怖くなってきた・・・・・・。


 全然止まらない、そろそろ終わるかと思ったけどそれでもぐんぐん上昇していく。上を向いても終点は見えない。足元を見ていると怖いから、空を見ることにした。そしたら、少しは怖いのが紛れたけど、急にドンッと揺れた。


 『あわわわわ、てっぺんに着いただけかぁ』


 ほっとしたのもつかの間。


 急転直下(物理)


 突然体がふわりと浮いたかと思うと、そのまま自然落下した。


 『きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああーーーーーーーーーー!?!?!?!?!?!?!?!?!?!!?』


 え!? 嘘!?!?!? タワーが折れちゃった!?!? 落ちてる! 落ちてる!!


 『ぴいゃやややあああああああああああーーーーーーーーーー!!!!!!!!』


 わずか4秒ほどの落下だったけれど、アイカにはとてつもなく長く感じられた。


 ゆっくり機械が止まると、アイカはほっと胸を撫で下ろす・・・・・・。


 『よ、良かったぁ・・・・・・。故障じゃなかったんだ・・・・・・』


 すっごく怖かったけど、なんとか生きて帰れてよかった・・・・・・。もう二度とやらない! 早く終わってー!!


 しかし、現実とは非情なものである。再びレーンが動き出し、アイカは再び空へと昇っていく。


 『やめてー!!!! お願いお願い!!! 止めてーー!!!! もう嫌ぁ―――!!!!!!』


 そんなアイカの必死の叫びも届くことはなく。


 急転直下(笑)


 『ふわぁぁぁああああぁあっぁあああああああああああああ!!!!!!!!!!!』


 二度目の落下を体験したあと、アイカは久遠の空中旅行から帰還した。ふらふらとした足取りで、ホリィの元まで歩く。


 『アイカったら、フリーフォールがなんなのかも知らずに乗ったの・・・・・・?』


 『ね、ねぇ、ホリィちゃん・・・・・・』


 誰にも聞かれないように、視聴者にも聞こえないように小さな蚊の鳴くような声でホリィに耳打ちした。


挿絵(By みてみん)


 『この世界で・・・・・・その、お、おもらししちゃったら・・・・・・。現実でもおもらししちゃってるのかな・・・・・・』


 『確認するのが怖いわね』


 『うわーーん!!!』


 アイカは膝から崩れ落ち、二度と何があってもフリーフォールだけには乗らないことを決意したのであった。


 『あ・・・・・・っ! アイカとホリィを見つけましたぁ・・・・・・!』


 絶望に明け暮れる2人の前に現れたのは白野だった。


 『まずいわねっ! ここは逃げるわよ!』


 『腰が抜けて動けないよぉー!!』


 『なんですってぇー!!』


 『うん・・・・・・? そちらの人、なんでそんなに怯えてるんですかぁ・・・・・・?』


 『そ、そこのフリーフォールに乗って・・・・・・』


 アイカが指を指す。ホリィはアイカの指差す方を見て、何か思いついたのかにやりと笑みを浮かべる。


 『そうっ! あんまりに怖いからこうなっちゃったの! あれは絶対乗りたくないわぁ! どんな罰ゲームだとしても絶対嫌ねっ!』


 やたらオーバーなリアクションでホリィが付け足す。


 『ば、罰ゲーム!! ぞっ、ぞくぞくするぅ!! はひーん!!』


 白野は、まるで餌を見つけた野犬のようにフリーフォールに向かって走っていく。


 『計算通りねっ! おぶってあげるから、行くわよ!』


 『あ、ありがとぉー・・・・・・!』


 いつもより強くホリィを抱きしめて、そのまま2人は避難した。


 ・・・・・・。


 ・・・・・・・・・・・・。


 「安全バーが下がります・・・・・・」


 『えぇっ!? 安全? いやぁ、そんなの罰ゲームじゃないぃ・・・・・・』


 そう言うと、ワールはなんと馬鹿力で安全バーを上げた。


 『やっぱり、首絞めが好き・・・・・・。えへへぇ・・・・・・』


 そして、上がった安全バーにリードをなるべくきつめに括り付け、腕に嵌った手錠を台にも嵌めて固定。遊園地の遊具から一気に拷問専用の椅子へと様変わりした。


 『息・・・・・・しにくい・・・・・・っ! い、良い! こんな高いところで、みんなに見られながら首を絞められてぇ。あぁ、最高に生きてる・・・・・・幸せ』


 そして、


 急転直下


 今度は両腕に負担がかかる。2つの手錠だけが彼女を固定している状態だが、骨が折れてもおかしくない。


 落下が止まると、白野は椅子から落ちて、宙ぶらりんな状態になってしまった。


 もちろん首のリードは外れていないので、首は完全に締まっている。


 『ふ・・・・・・く、くぁあっ・・・・・・』


 再び頂点に着くまでかなり時間がかかる。それまでこの首がしまっている状態だと、死ぬ。


 『あ、嫌ぁ。死にたぐ、、ないっ』


 その時、どこからともなく銃弾が放たれた。それは白野のリードを見事に打ち抜き、なんとか首絞めの状態を解除できた。


 『バカワールのせいでラスト1発使っちゃったよー! でも、味方が死んじゃったらまずいから、ここは仕方ない・・・・・・。この成果をカペルさんに伝えて褒めてもらって、それでチャラですねっ!』


 『ぷはぁ! 息・・・・・・息ができるって幸せぇ・・・・・・』


 ほっと安心した白野


 急転直下(急)


 『ぐひぃぃーーーーー!!!!』


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