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1話 ぶいちゅーばー ~レジェンド☆になるもんっ!~

 VTuberとは、元々たった一人のことを示す言葉だった。


 2016年に最初のVTuberが誕生してから、今年で37年。初めは一部のオタクにしか見向きもされていなかったVTuberだが、現在はネットの中はもちろん電車や歯磨き粉に至るまで様々な場所で見ることが出来る。特に、壮絶なフォロワー争奪戦を潜り抜けたトレンドVTuberは大手会社に所属し、数時間に数億もの経済効果をもたらしている。それほどまでに、VTuberは大きく、身近なものとなったのだ・・・・・・。


「夢は、レジェンドVTuberですっ!」


 小学校の教室、授業参観。一人の少女が声高らかに宣言した。


 しかし、周りの視線はとても冷ややかなものだった。それは彼女が言ったVTuberになるという夢が陳腐に聞こえたからだろうか。


 だが周りの生徒はみな口をそろえてVTuberになりたいと言っている、もちろんそれは男子も例外ではない。男性VTuber、バ美肉だって、今や普通に受け入れられている時代だ。それは今の時代、口にすることは何らおかしくない。ではなぜ彼女が冷たい視線を集めているのだろうか。


「レジェンドって・・・・・・。あまりにヒゲンジツテキね・・・・・・」


「なるもんっ! ぜったい!」


「律帆の言う通りだ、ずっと愛されるVTuberなんて、あるわけないだろ」


 VTuberとは、まるで花火だ。パッと咲き、パッと消えていく。


 続けることは容易い、また莫大な人気を集めるVTuberになることも宝くじに比べればはるかに現実的だ。問題はその両方、人気を保持し続けるという事。


「考えてみろよ、そんなずっと愛されなくたって、1年も活動できれば一生遊んで暮らせるだけの金は稼げるだろ? それが一番だ」


「はるとくん違うのっ! 私はお金なんていらなくって・・・・・・。ただみんなに愛されて、みんなに勇気を与えられるような・・・・・・」


「は、はーいっ! すっごくステキな夢を教えてくれた藍ちゃんに拍手―!」


 先生が無理やり締めくくった。仕方ない、保護者の視線も痛くなってきたころだった。


「・・・・・・・・・・・・っ!」


 悔しかった、だけど仕方なかった。


 夢を否定された少女、藍が家に帰ると、父が帰ってきていた。


「あれ? お父さん早いね?」


「あぁ、そろそろいいだろうと思ってな」


「え?」


 父が階段を上がる。藍もそれについていく。


「ねぇねぇ、なんなの? 教えてよー!」


「8年、我慢したんだがな・・・・・・。お前の発表を聞いて居てもたってもいられなくなったんだよ」


 連れていかれたのは、今まで絶対に入ってはいけないと言われていた部屋。鍵がかかっていて入ろうにも入れなかった部屋。


「えっ!? 入っていいの!?」


「そうだ、驚くなよ?」


 そしてようやく、8年間開くことのなかった世界が広がった。


「こ、これってーっ!?!?」


 それは、ずっと欲しいとねだっていたVTuberの専用機器達。


 ゲーミングモニター、ライブカメラ。モーションキャプチャの機具も勢ぞろい。


「わーっ!? わーっ!? 夢じゃないんだよねこれって!!」


「驚くのはまだ早い、これを見てくれ」


 デスクのパソコンを起動して、一つのソフトを開く。


「そしてこれがお前の3Dモデル、アイカだ」


 父がカメラを藍に向ける。藍は興奮しながら手を挙げたり、にっこりと笑って見せる。


 すると、画面の中のアイカも同じように手を挙げ、にっこりと笑う。


挿絵(By みてみん)


 「前に、お前の名前の由来を教えたよな」


 「うん、確か最初のVTuberの名前からとったって」


 藍はアイカに夢中で生返事だったが、父は続けていった。


 「そうだ、父さんはずっと夢に見ていた。一時のトレンドなんかじゃなく、ずっと愛され、名前の残るVTuberを。藍、お前がなるんだ。レジェンドVTuberに!」


 レジェンドVTuber、その言葉を聞いた途端に藍はまじめな顔をして父の目を見た。


 「うん! なってみせるよ! レジェンドVTuberにっ!」


 「よくいった! 藍! お前の為ならたとえ父さんの会社が倒産したとしても! 永遠に応援し続けてやるからなっ!!」


 2人で盛り上がっているのを部屋の外からのぞき込む母。


「全く、親が親なら子も子よね」


 世界が藍を否定しても、2人だけは藍の味方だった。


 「って、あれ! 私が昔使ってたモーションキャプチャーじゃない! イマドキあんな型落ちじゃダメでしょ! はぁ、あんなに寒いギャグ言ってかっこつけておいて、ダサすぎる・・・・・・」


 そこまで裕福ではないけど、明るい家族。だからこそ藍は心から思っていたのだった、この幸せな空間を、もっとたくさんの人と!


この物語は、普通の女の子、藍がレジェンドVTuberになるまでを描いた、青春活劇だ。


 ・・・・・・。


 ・・・・・・・・・・・・。


 時は経ち、7年後の2060年


 『みんなおはよう! 今日もたくさんハッピーになっていってね!』


 藍は見事トレンドVTuberの仲間入りを果たした。


 大手VTuber企業、ネクステの契約VTuber、今最もアツいと言われている大人気のVTuberだ。


 『わたし、ようやくトレンドVTuberになれました! これも全部応援してくれたみんなの、いや、もっとたくさんの人のおかげ! ほんっとうにありがとう!!』


 アイカちゃんがんばれ!!

            応援してました!!

       いつもハッピーもらってます! ほんとにありがとう!

   癒しの時間

           おめでとう!!!


 『はみゅ、もっとフォロワーに媚びたほうがいいのに・・・・・・。ほんっとまじめちゃんみゅ』


 ハルハルちゃんフルスロットルwww

いいぞもっとやれ

          ありがとうございます!

      俺らは豚だ!

  ハルハルフルスロットルいただきました!


 『うふっ、ついにここまで来れたのねぇ。そ、れ、じゃ、あ・・・・・・。眷属ちゃんたちとのお約束通り、ASMR? をだしちゃうわっ!!』


             ネクステこわれる

      建前)ネクステは気が狂ったのか 本音)いいぞもっとやれ

        アイカちゃんとの絡みに期待

 おお、メインアタッカーきた、これで勝つる

ふとももと聞いて

  


 18期生はこの3人。アイカ、晴宮ハルハル、闇雲ホリィ。


 みんなに好かれるタイプのアイカとは対照的に、かなりターゲットを絞ったハルハルとホリィの選出には世間が大きくざわついた。


『わたしたち、すっごくなかよしだからっ。本当にこれ以上ないくらい嬉しいです!』


 『はみゅ、むず痒い・・・・・・』


 『そうねぇ、今以上に仲良くなれたら嬉しいわねぇっ』


 『それじゃあみんな行こうっ!!』


 『はぁい』


 『みゅん』


 VRライブ会場が姿を変える。目の前の景色が次々書き換えられていく。


 広がった景色は令和時代のデパート。観客は会場から退出して、観戦モードになる。


 『というわけで始まります、VTuberバトル! 実況はわたし! くろねこと!』


 『しろねこっす!』


 『今回のネクステ18期生、なかなかクレイジーですよ?』


 『そうっすね、ヒーラーのアイカ、アタッカーのホリィに加えてまさかのハルハルを選出するなんて思ってもいなかったっす』


 『非公式のVTuberバトルならアタッカー2枚はたまに見ますけど、まさかトレンド戦で採用する日が来ようとは!』


 『お相手はぷちジャン8期生、オーソドックスな3点構成っすね』


 『相手は新人とはいえ、10世代違いはかなりのプレッシャーですねー・・・・・・』


 デパート1階、インフォメーションセンターの前で試合前の挨拶が行われる。


 『わたし初めてだから、キルはやめてもらえると嬉しいわぁ・・・・・・?』


 『ええ、当然です。初試合でのキルはご法度ですからね』


 『そんなに硬くならないでいいのよぉ?』


 『わたし、ウォンバットですから、お尻は固いですよ』


 『あははっ! 変なせんぱいっ! 退屈しないわぁ』


 一見とんでもなく無礼に見えるこの会話も、VTuber同士のなれ合いとして視聴者からはとても好評だ。


『んじゃっ、そろそろやるかみゅ』


『やるからには勝つデス!』


『おお、おねがいしまっしゅ・・・・・・! か、噛んだっ!』


 アイカは口がロボットのようにカチカチ動いていた。


『ふみゃ、ほぐせ』


『はぁ~いっ!』


 ホリィがアイカをくすぐる。


『あひゃひゃ! くすぐったいよぉ!』


『さーて、それでは始めますよーっ!』


『カウントダウンっす!』


『3!』


『2!』


『1!』


『『VTuberバトル、開始っ!!』』


数ある作品の中からこの作品を選んで、その上ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!

もっと沢山の人に読んでもらいたいので、評価、ブックマークしていただけるととても嬉しいです!

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