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厳格な陰陽師の家系を継いだ俺、最強の式神を召喚したら「金髪ギャル」が出てきた上に、俺よりSNSのフォロワーが多い  作者: NN


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第7話 生徒会長は「鉄の女」すぎて、悪霊さえも論破する。(前編)

 翌日の昼休み。

 校内放送が、俺たちへの呼び出しを告げた。


『2年B組、土御門晴人くん。ならびに転入生のタマモさん。至急、生徒会室まで来なさい』


 スピーカーから流れる声は、氷のように冷徹で、有無を言わせない響きがあった。


「うわ、呼び出しくらった。パン買う時間なくなるやん」

「文句を言うな。生徒会からの呼び出しだぞ。……嫌な予感がする」


 俺は眉をひそめた。

 ただの呼び出しではない。放送の声に乗っていた微かな「圧」。あれは、霊的な強制力に近い。

 俺たちは、校舎の最上階にある生徒会室へと向かった。


 重厚な扉を開けると、そこは法廷のような張り詰めた空気に包まれていた。

 巨大なマホガニーの机。その向こうに、長い黒髪を一つに結い、銀縁メガネをかけた女子生徒が鎮座している。


 生徒会長、西園寺さいおんじ麗華。

 この学園の規律を支配する「鉄の女」だ。


「……遅い」


 麗華が書類から顔を上げた。メガネの奥の瞳が、俺たちを射抜く。


「呼び出しから5分32秒の遅刻です」

「ち、違うんです会長! 廊下が混んでいて……」

「言い訳は不要」


 麗華が分厚いファイルを机に叩きつけた。

 バンッ! という音が室内に響く。

 それと同時に、部屋の空気がズシリと重くなった。


(……なんだ? 今の重圧は)


 俺は肌にピリつく感覚を覚えた。霊圧だ。

 だが、この部屋に妖怪の気配はない。あるのは――彼女だけだ。


「制服の不正改造、授業中の飲食、校内での不審な儀式行為――よって、貴方たちに『退学』を勧告します」


「た、退学ぅぅぅっ!?」


「は? 意味わかんないんだけど」


 タマモは動じず、勝手にソファに座り込んで足を組んだ。


「ウチら、何も悪いことしてへんくない? 個性やん、個性」

「……校則は絶対です。貴方のような『異物』を、私は断じて認めない」


 麗華の声が低くなる。


「校則第1条。生徒は規律を守り、秩序ある学園生活を送ること。――秩序を乱す者は、排除されなければならない」


 『排除』。

 彼女がそう口にした瞬間、部屋の気温が急激に下がった。

 窓ガラスがガタガタと震え、蛍光灯が明滅する。


(間違いない……! こいつ、無自覚の『言霊ことだま使い』か!?)


 俺は戦慄した。

 彼女の言葉には、物理法則を歪めるほどの強力な魔力が乗っている。

 「排除しろ」という強烈な意志が、周囲の霊的エネルギーを強制的に収束させているのだ。


 その時。

 部屋の隅にあった「人体模型」が、ガタリと揺れた。


「……ア、アァ……」


 プラスチックのこすれる音が響く。

 模型が首を回し、虚ろな眼窩でこちらを見た。


「……なんやあれ。キモっ」

 タマモが顔をしかめる。


「……何ですか、そのふざけた動きは」


 麗華は怪異を目の当たりにしても動じなかった。

 むしろ、不快そうに睨みつけた。


「備品が勝手に動くなど、管理規定違反です。直ちに元の位置に戻りなさい」


 彼女の命令。

 すると――。


 バキィッ!!


 人体模型の足が、不可視の力でへし折られた。

 いや、折られたのではない。

 「直立不動の姿勢」を強要され、関節の可動域を無視して矯正されたのだ。


「ギギ……ガガガ……」


 模型が苦悶のような音を立てる。


(まずい。会長の言葉が、霊を刺激している……いや、生み出しているのか?)


 俺は気づいた。

 この人体模型に憑いているのは、浮遊霊じゃない。

 麗華が日々発し続ける「完璧であれ」「ルールに従え」という強迫的な言霊が、おりのように積もり、物に宿って妖怪化した「付喪神つくもがみ」だ。


「排除……サレ……ル……」


 人体模型が、軋む口を開いた。


「ボクハ……ルールヲ……マモッタ……ナノニ……壊レタカラ……排除……サレタ……」


 理科準備室の片隅で、古くなって廃棄される恐怖に怯えていた模型。

 それが、麗華の「排除」という言葉に過剰反応したのだ。


「ルール……絶対……ルール……絶対……!!」


 ゴゴゴゴゴ……!

 模型の身体から、赤黒い瘴気が噴き出した。

 歪んだ秩序の化身。


「会長! 下がってください! そいつはアンタの言葉に反応してる!」


 俺は叫びながら、防御の印を結んで前に出た。


「土御門くん? 何を訳のわからないことを――」

「いいから下がれッ!!」


 俺の警告を無視し、麗華は模型を一喝した。


「口答えは許可しません! 校則第37条、教室内での騒音行為は禁止――」


 ブチィッ!!


 模型の筋肉繊維が弾け飛んだ。

 麗華の「禁止」という言葉が、逆に怪異のリミッターを外してしまったのだ。


「ウルサイ……! オ前ガ……一番……ウルサイッ!!」


 人体模型が、人間にはありえない速度で跳躍した。

 狙いは――秩序の発生源である、麗華だ。


「え……?」


 麗華が目を見開く。

 迫りくる内臓剥き出しの怪物。その手が、彼女の喉元に迫る。


(間に合わない……!)


 俺の防御結界では、展開が遅れる。

 その時。


「あーもう、やかましいわ!」


 ドゴォォォォォッ!!


 横合いから放たれたタマモの回し蹴りが、人体模型の頭部を粉砕した。

 模型はボールのように吹き飛び、壁に激突して崩れ落ちる。


「……へ?」

 麗華が腰を抜かしてへたり込む。


「タマモ! 追撃はやめろ! そいつはまだ――」


「わかっとるわ! 硬いわコイツ!」


 タマモが舌打ちする。

 粉砕されたはずの模型が、ギチギチと音を立てて再生を始めていた。

 

「ルール……修復……ルール……再生……」


 模型はゾンビのように立ち上がる。

 その視線は、憎悪と共に麗華に固定されていた。


「オ前ヲ……排除スル……。ソレガ……コノ部屋ノ……ルールダァァァッ!!」


 俺は冷や汗を拭った。

 これは物理的な戦いじゃない。

 この怪異を祓うには、その根源である「ルール(呪い)」そのものを解かなければならない。


 だが、その鍵を握る生徒会長は、恐怖と混乱で固まっている。


(やるしかない。……陰陽師として、この場の『ルール』を書き換える!)


「タマモ、時間稼ぎを頼む! 俺が術式を組む!」

了解りょ! さっさと頼むで!」


 俺たちは戦闘態勢に入った。

 生徒会室という密室で、秩序と混沌の戦いが幕を開ける。

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