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6 天ぷらうどん(1)

プリンセスはシャトーでのゆったりした生活も学校での生活も楽しんでいた。シャトーはとても快適な場所であった。湖底にあるのでいつも水中の魚や湖面を泳ぐ白鳥たちの群れを下から見たり、出かけるときには上から見て楽しんだ。


フクロウの爺は研究室に閉じこもったままで、地球にきた初日に会ったきりであったが、アンドロイドのコパンたちがいつもプリンセスのために働いてくれていた。


普段プリンセスと接しているのはモンちゃんのような動物型コパンたちだが、料理、洗濯や掃除をしてくれるのは人間型アンドロイドのアネモネだった。


アネモネの料理は栄養のバランスがよく考えられていて美味しかったが、プリンセスも週に2、3回は夕食を自炊した。シャトーにいる時はヴァイオリンを弾いたり、地球での日々の記録を日記風につけたり、音楽を聴いたり読書をしたりして過ごした。


コパンたちとは最低限の必要なことしか話さないし、また彼らはそのように作られていたので、プリンセスは基本的に一人で孤独な生活を送っていたが、それはとてもお気楽であり、彼女はそれに満足していた。


学校では授業や部活動で充実した日々を送っていたが、特に親しい友達というものはなかった。周りの様子を見ると、女子は大抵どこかの仲良しグループに属しているようであり、スポーツ大会や体育館での球技大会などの時は、必ずと言っていいほど何人かで一緒におしゃべりしている様子が見られたが、プリンセスはいつも一人でいたし、それでいいと思っていた。


それはあまり日常的なおしゃべりに没頭すると自分が彼女たちとは全く違う生活をしていることが露見してしまう恐れがあったからでもあった。その意味では孤独ではあったが、彼女はそんな生活を楽しんでいた。


 プリンセスには特に親友というものはいないが、席が隣なので最近よく話をするのが京子だ。京子は調理部に所属していて、秋の文化祭に向けて張り切って活動している。彼女が言うには、この学校で100年前から代々調理部に伝わる天ぷらうどんのレシピというものがあるそうだ。


当時の調理部の生徒、つまり彼女からしたら大先輩に天ぷらうどんが大好きな人がいて、鰹節や昆布など様々な具材を分量を変えて混ぜ合わせて究極のお汁を追求していたという。


それが信じられないほど美味しい天ぷらうどんであり、どんなうどん屋のものより美味しいと評判になっており、中にはお金をある程度払うからレシピを売って欲しいという者まで現れたが、代々門外不出となっていて部室の金庫に厳重にしまってあるのだ。京子は近々このレシピを使って天ぷらうどんを作り、さらに天ぷらにもごぼうを加えるなどの工夫をして、文化祭でお客さんを唸らせるつもりだと楽しそうに語っていた。


 ところがある日の昼休みに京子とお弁当を食べながら話そうとしたら、彼女は顔色が冴えないしうつむいていて元気がない。


「京子ちゃん、いつも元気いっぱいなのに今日は変ね。」

「私、とんでもない失態をしてしまったの。どうしよう。部活を辞めるしかないかな。」


「えっ、急に何を言ってるの?もう直ぐ文化祭じゃない。冗談もいい加減にしてちょうだい。私、京子ちゃんの天ぷらうどんをとっても楽しみにしてるんだから。一体どうしたっていうの?」

「誰にも言わないって約束してくれる?」

「ええ、約束するわ。」

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