4 合宿所のお化け(2)カマキリ型のアンドロイド登場
それからほぼ一週間が経過したが、管弦楽部は相変わらず練習ができないままであり、連日ミーティングを開いて次の演奏会の曲目を相談していた。
一年生はまだ意見を言う立場にはないので黙って聞いていた。お化けについては教頭先生たちが警察に連絡することも検討したが、先生たちが行ってみるとバケモノは現れず、かといって女生徒が楽器を取りに行くと必ずバケモノが登場するという膠着状態が続いていたのだ。
その頃シャトーではプリンセスがモンちゃんの録画した画像をコンピュータで解析していた。しかしそこからはバケモノの存在以外には何もわからなかった。
するとモンちゃんが、
「バケモノは女生徒たちに危害を与えたりはしていませんので、単に彼女たちを近づけないようにしているのではないでしょうか。だとしたら、あそこで何かが秘密裏に行われているのでは?」
プリンセスは
「そうするとあの部屋で気づかれないように24時間監視する必要がありそうね。でも体が小さいモンちゃんやリスくんでも気づかれてしまう恐れがあるわ。どうしたらいいかしら。」
するとリスくんが、
「でしたら我々の仲間、コパンの中で最も小さいカマくんはどうでしょう?カマキリ型のアンドロイドなので奴らは気にもとめないでしょう。
それにカマくんは小さいとはいっても映像録画もできる高性能アンドロイドですから。私が彼に頼んでおきますが、それでよろしいでしょうか、プリンセス?」
「分かったわ。彼に任せましょう。それにしても早くこの問題を解決しないと、生徒たちは不安になる一方だしいつになっても練習ができないわ。」
「わかりました、急がせます。」
カマくんは依頼を受けると羽根を羽ばたかせて飛んでいき、部屋のドア近くでドアが開くのを辛抱強く待ち続けた。中では何かを削るような音がひっきりなしに聞こえていた。
すると午後3時ごろ、つまり学校では授業が終わって放課後になる頃、二人の人物が顔を隠して現れ、ドアを開けて部屋に入ろうとした。
カマくんはその隙に部屋に忍び込み、後ろの方の楽器の影に隠れてビデオ録画を始めた。動画は電波でシャトーに送られているので、生中継をしているような感じになった。
シャトーではプリンセスとモンちゃんとリスくんがモニターに見入っていた。何かを削っているような音が絶え間なく聞こえ、特に何もない状態が続いたが、その時入り口で女生徒たちの声が聞こえた。
楽器を取りにきたのだろう。ドアを開けた途端、天井からぶらさがっているコウモリのお化けが恐ろしい唸り声を出し、のっぺらぼうが何かをつぶやいた。女生徒たちは悲鳴を上げて逃げて行った。